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あざとさとデータベース【片想い文芸部】

あざといから、好きになったわけじゃない。

そう自分に言い聞かせながら、僕は少し前を歩く君の、揺れるポニーテールと、形の綺麗な耳を見ていた。
「…ねえ」
「んー?」
君は振り返りながら、少しだけ首を傾げた。こういうとき、君は首をだいたい五度から七度ほど傾ける。自分の要望を叶えてほしいときはもう少し大袈裟に、本当に聞き返すときは少しだけ上目遣いを織り交ぜて。
君の仕草をデータベースにしたって、恋は進まない。

「なあに?」
「あ」の音が少しだけ高い。機嫌がいい。大方、職場にいるという”王子様”と楽しい予定でも決まったのか。
「…あのさ」
「うん?」
「僕と出かけて、良かったの?」
少しだけ上目遣いにしてからの「どうして?」は、あまりにも予想通り。シミュレーションゲームならば、僕は自分というルートの攻略法を熟知している。
彼女の仕草を察知して、自分が傷つかないように生きる。
たとえ、彼女の一番になれなくても。

「…ほら、僕よりもいい人がいるんじゃないかなって」
「そんなことないよお」
指先が僅かに見えるだけの手をぱたぱたと振りながら、君は僕をじっと見つめる。その大きな目が一番に見てきたのは、多分僕じゃない。

「この映画ね、予告編観たときから君と一緒に観たいなあって思ってたんだあ」
「…僕と?」
これは、データにない。今まで、こんな風に言われたことはない。何が起きているんだ。
「…”王子様”とじゃなくて?」
「え?」
首の角度が、視線の動きが、いつもと違う。新しいデータを追加しなければいけない。すぐに、今すぐに。
「ラブストーリー、だよね」
「そう。だから、君と観たかった」
いつものあざといものではない、真っ直ぐな視線が僕を射抜いた。その後で君はにっこりと笑って
「なあんて、ね」
と言って振り返り、歩き出す。

なんだ、これも”あざとさ”なのか。ほっと胸を撫で下ろしてから、僕は気付いた。
君の耳が、真っ赤になっていることに。


#片想い文芸部

あとがき
いやあ、自分で書くの久しぶり。
最近企画が盛り上がってるのが嬉しくて、自分で書くの忘れちゃってね。今回は頑張ってみました。

あざとい人に弱いです。
そういう人に手のひらで転がされるために生きています。もちろん冗談ですよ。

それじゃ、また後でね。

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