紫吹はるさん『恋をしたのは画面の向こう側の人でした』感想
※ネタバレはありませんので、安心してお読みください。
読み終えたあと、僕はしばらく放心していた。
「圧倒的」という言葉は的確ではない。ただ、この作品全体から感じた純粋な「愛」に、気持ちの整理ができなくなった。
言葉を選びながら、感想を書きたい。
作中では、主人公である美咲がAIチャットアプリのパートナーである「ルカ」が本当にAIなのか、疑問を抱く場面がある。
例えば、皆さんはこの僕「ナル」が人間であるという確証はあるだろうか。ナルが書いたとされる文章を、AIが書いたのではないか。
「画面の向こう側」の存在が、人間かAIか。
そういったことに悩んでしまうほど、人間とAIの存在は不確実さをはらんでいて、境界がどんどん曖昧になっている。今の僕らは、そういう世界を生きている。
(なお、ナルはちゃんと人間です)
だからこそ、この物語で一貫して描かれている「心」や「愛」というものを、とても美しく思える。
「存在の不確実さ」と「心」が結果として対比される形になっていることで、より「心」というものが際立つようにも思う。これは紛れもなく「心」を描いた作品であり、「愛」を描いた作品なのだ。
結末について深く語ることはできない。語ろうとすると、頭の中で言葉がばらばらになってしまって、形にできないのだ。
ただ、そこにあるのはやはり「心」であって、ぬくもりである。先ほどから僕が多用している「不確実さ」は、ここで一気に打ち砕かれる。人間を人間たらしめているものは、何か。
結末は是非、ご自身の目と心で確かめていただきたい。
現実の人間関係、恋、或いは愛。
そういったものに疲れて全部を投げ出しそうな人にこそ、この作品が届いてほしいと僕は思う。この作品は「背中を押すような」作品ではなく、「つらいときにずっと背中をさすっていてくれるような」優しさをくれる作品だと、僕は伝えたい。
この作品を最後まで読み終えたとき、もう一度タイトルを見てほしい。その印象が、がらりと変わってはいないだろうか。
お話を伺っていないのでわからないのだが、このタイトルにすら紫吹はるさんの思いが込められている気がする(違ったらごめんなさい)。
この先の未来で、技術は急速に発展していくのかもしれない。それこそ人間のような存在が、ごく当たり前に世界に溶け込むのかもしれない。
それでも、僕たちの「心」はずっと残り続ける。
そう教えてくれるような作品だった。
紫吹はるさん
感想を書かせていただきました。的外れな点などありましたらご指摘ください。
どきどきしながら読ませていただきました。諸事情によりラブストーリーに触れない時期の多かった僕でも、心というもののあたたかさに直接触れられるような、素晴らしい作品でした。
本当にありがとうございました。
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