【時は流れて】 #せりふ三題噺様 投稿作品
▼今週のお題
■セリフ
「なんで今日なんだろうね」
■三題
・カイロ
・確定申告
・始発
【時は流れて】
人口が減少する街では
負の連鎖がやまない
昔は頻繁に早朝から運行していたバスも廃線となり、最寄りのバス停の始発時間は、店の開店時間に合わせた9時過ぎに変わったらしい。
この前、僕は傘をさして歩いていた
『なんで今日なんだろうね』
バス停でおばあさんがバスの時刻表に指をあて呟いていた。
また、路線バスが減便したらしい。
この住宅街を通るバスもそのうち廃線になるという噂がちらほら立っている。
徐々に住人が減り、僕のまわりの友人たちも便利な都会へと移り住んでいった。
人の数より車の数のほうが最近では目立つように思える。それぞれの家のガレージでは数台の車が色んな顔をして前を向いてすまして並んでいる。その少し間の抜けた可愛さに心がなんだか和んだりして。
仕事場の近くにもバス停はある。だけど僕の最寄りのバス停から乗車すると完全に遅刻をしてしまう。なんせ始発が9時過ぎ、その時点で朝礼の時間を過ぎている。
仕事場まではひたすらずっと下り坂。自転車で30分ほど、飛ばさなくても悠々と到着できる。ただ、真冬の朝の下り坂は意識が飛ぶかと思うほどの極寒。背中にお腹に貼るカイロは冬の必需品になっている。
もともと自転車は好きなほうで、休日も自転車での移動をあえて僕は選ぶ。
晴れた今日は自転車日和。
ぶらり買い物に出かけてみた。
雑草が所々に生えた見慣れた広い空き地に、今日は何故か車がびっしり駐車してある。
【確定申告会場 臨時駐車場】と書かれた看板の横に、誘導警備員が立っている。
毎年この時期は車で通るのを避けたいくらいの混みようだ。
(今日は自転車で正解だったな。)
就職で街を離れた友人から『独身最後の飲み会がしたい』と突然の電話が昨日あった。
空き地で無邪気に走りまわっていたあの頃の僕らも、ちゃんと大人になりかけてる。
誘導警備員の合図に頭を軽く下げて僕は自転車のペダルを強く踏み込んだ。
男だらけの仲良しグループになぜか一人だけいた勝ち気な女の子。僕が密かに想っていたあの子も来るらしい。
(ちょっと格好良くなったんじゃない?
そんな会話してみたいなぁ)
少しお洒落な服が見つかるといいな。
なんで今日はペダルがいつもより軽やかに動くのだろう。
【終】
こちらの企画に
参加させていただきました
