日本の色
日本の色
雨上がり。見上げた空には、虹。
「ねぇ見て!七色の虹」
「本当だ。きれいだねぇ。」
おばあちゃんは優しく微笑んだ。
でも、その後、ちょっといたずらな表情でこんな話を聞かせてくれた。
「今、七色の虹って言ったけど、国によって虹は、六色や五色で、二色だという
国もあるんだよ。もちろん、どの国で見える虹も同じ。」
「へぇ、でも、国によって色の数が違って見えるなんて不思議だね。」
私は、素直にそう思った。
日本での虹は、外側から内側にむけて、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫に並ぶと言われる色。音読みにして「せき、とう、おう、りょく、せい、らん、し」と覚えることができる色。
でも、国によっては、そこまで細かくは色分けをしていないそうだ。
お茶の先生をしているおばあちゃんは着物を着ることが多く、その色についても
とても詳しい。だから、次のような話で虹についての不思議を、
私に説明してくれた。
「例えば、一口に青色と言っても、伝統的なものでも何十色もあるんだよ。
青や藍の他に、水色や紺はよく知られているけど、うす花色、み空色、
るり色、つゆ草色なんていうのもあるの。」
私は昔の人は、色のわずかな違いをとらえ、楽しんで名前を付けたのかなぁと思った。そして、こんなことを思い出した。
「日本にだけ四季がある」というのは、間違いだそうだ。
実は、四季がある国は他にもある。でも、四季、それぞれの時季を、
例えば、千年も昔、清少納言「枕草子」の「春はあけぼの」「夏は夜」「秋は夕暮れ」「冬はつとめて」のように、心にそえて、楽しもうとしてきたことを
私はすてきだなと思う。
色の名前もそれと似ているなと私は思った。自然の色、また、日々の生活にある色をそう名付けた感性を、とても嬉しく思えてきた。
同時に、私はそうした細やかなことに気付き、それを楽しめているのかなぁ、と自信がなくなった。
季節や自然は、自分の感性を磨かないかぎり、その素晴らしさや深みを見せてはくれないとおばあちゃんに聞いたことがある。
お茶の教室でも使われる「わび」「さび」といった言葉とも関係するのかな。
私は日本に生まれ育ってきたのに、その魅力について気付きはじめたばかりだ。
できれば、私もその魅力を主体的に楽しむことができる大人になりたいと思う。
「ねえ、おばあちゃん。今度、お茶について教えてほしいな。」
