#636 「エスプリ事件」東京地裁
2025年4月23日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第636号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【エスプリ(以下、E社)事件・東京地裁判決】(2022年12月2日)
▽ <主な争点>
普通解雇に伴う退職金の大幅な減額など
1.事件の概要は?
本件は、E社から普通解雇されたXが退職金の支給額を本来の3分の1に減額され、同社に対し減額された退職金260万5218円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<E社、X、AおよびBについて>
★ E社は、鞄、袋物および履物の製造ならびに卸業等を営む会社であり、在日韓国人系のいわゆる同族会社であった。
★ X(1965年生)は、1991年1月にアルバイトとしてE社に入社した後、2000年1月から正社員として雇用された者である。
★ 2017年3月末日までE社の代表取締役であった前社長A(創業者)は、Xの叔父(母の弟)で、同日に代表取締役に就任した現社長Bは、Aの二男でXの従弟である。
<本件給与減額、本件配転命令、本件解雇に至った経緯等について>
★ Xは正社員として雇用されて以降、経理業務を担当しており、E社名義の預金通帳や銀行印、金庫や事務所内の経理金庫の鍵なども管理していた。
▼ Xは2007年3月頃、Aの指示に基づき、X個人名義の普通預金口座(以下「別口預金口座」という)を開設した。E社はAの三男およびAの妻に対して支給していた給与および賞与を別口預金口座に入金し、同社の取引上表に出しづらい経費等を支出するために利用していた。XはAの指示に基づき、別口預金口座への入出金を管理していた。
▼ E社は2016年1月頃、大口得意先から経費削減を目的とした仕入れ方針の変更について通告を受け、変更のため売上げが前年比で50%減少する見込みとなった。そこで、Aは同年3月頃、自身、B、C専務(Aの甥)およびXの4名の高額な給与を大幅に減額することを提案し、B・C・Xはこれを承諾した(以下「本件給与減額」という)。
★ なお、XはE社の役員ではないが、長年にわたり、BおよびCと同水準の高額な給与および賞与の支給を受けていた。
▼ Bは2018年8月下旬頃、設備投資に充てるため、Xに対し、別口預金口座の残高全額を出金するよう指示した。Xは同口座から合計720万円を引き出したが(ただし、残高全額の出金はせず、口座には5万円強の預金が残っていた)、その現金をBのもとにすぐに持参せずに、信用金庫のE社名義の貸金庫で保管していた。
▼ Xは同年9月頃から、Bに対し、前社長時代のE社の経理処理について不正があることをほのめかす発言をするようになり、Bは、Xが前社長時代の経理の不正等に言及して別口預金の分け前を欲しがっている、すなわち、Xから脅迫されているように感じた。
▼ そこで、Bは同年9月末頃から10月初め頃、Xとともに信用金庫に保管してあった現金720万円をE社の事務所に持ち帰った際、Xに対し、別口預金の口止め料として、上記720万円のうち300万円を渡そうとしたが、Xは300万円では足りない旨の発言をして受け取らなかった。
▼ その後、BはE社の過去の経理処理に問題があったのであれば、この機会に修正申告をすべきと考え直し、Xに対する口止め料の提示を撤回し、顧問会計事務所を通じて法人税の修正申告を行った。
▼ Bは2018年12月、Xに対し、デリバリーセンター内の検品業務への異動を命じ(以下「本件配転命令」という)、後任者への経理業務を含む包括的な引継ぎを指示した。
▼ しかし、Xは引継ぎを拒否し、速やかな引継ぎを行わなかったことから、E社および同社従業員の業務には大きな支障が生じた。E社は2019年4月4日、Xを同日付で解雇した(以下「本件解雇」という)。
<前訴提起に至る経緯、本件不支給等規定およびXの退職金支給額等について>
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