#667 「鹿島建設事件」東京地裁
2026年7月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第667号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【鹿島建設(以下、K社)事件・東京地裁判決】(2024年10月22日)
▽ <主な争点>
上司や部下等への粗暴な言動を理由とする普通解雇の有効性など
1.事件の概要は?
本件は、K社との間で労働契約を締結して就労していたXが上司や部下等への粗暴な言動を理由としてされた2021年12月14日付の普通解雇の意思表示は無効であると主張して、同社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、民法536条(債務者の危険負担等)2項に基づき、2022年1月から本判決確定の日までに支払期日が到来する解雇後の月額59万5320円の賃金およびこれらに対する遅延損害金の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<K社およびXについて>
★ K社は、土木建築その他建設工事全般の請負等を事業とする会社であり、2022年3月末当時、従業員数は約8000名であった。また、同社は東京の本社以外に北海道から九州まで全国に12支店を有している。
★ Xは、1995年、K社との間で期間の定めのない労働契約(以下「本件労働契約」という)を締結し、同年4月から勤務していた者である。
<Xの異動歴、上司や部下等への粗暴な言動等について>
▼ Xは2017年7月、甲支店に管理部現業グループ課長として異動したが、同年8月から2018年3月にかけて、協力会社の従業員や上司等に対して粗暴な言動を繰り返したことから、2019年5月、乙支店の同グループ課長に異動となった。
▼ しかしながら、乙支店でも同年12月10日頃から14日にかけて、上司や部下等に対して粗暴な言動を繰り返したことから、同支店のA管理部長はXの当該言動が就業規則に反するとして、同月18日、同規則に基づいてXを訓告に処することとし、訓告書を交付して十分に反省をするとともに、職場の秩序の維持に努め、自身の言動に注意し、誠実に業務を行うことを求めた。
▼ その後、Xは上記言動を理由として、2020年5月、丙支店に管理部現業グループ課長として異動した。
▼ 丙支店(△△原発事務所)においても、Xは同年12月頃、派遣従業員に対し、他の職員がいる中で「馬鹿野郎」などと怒鳴った。そこで、丙支店のB管理部現業グループ長は同月22日、Xと面談し、いかなる理由があろうとも「馬鹿野郎」などと他の職員に怒声を浴びせることは論外であり、しかも他の職員がいる中でそうした言動は厳禁であるなどと述べて、Xの言動を注意した。
▼ これに対し、Xは感情的になって派遣従業員に怒声を浴びせてしまったが、当該派遣従業員には謝罪し、今は良好な関係にあるなどと述べた。
▼ Xは2021年8月2日、事務所内においてC所長に対し、同日午前に立替払いした経費の精算処理の進行状況について尋ねた。C所長はXに対し、他の業務があることを理由に、上記処理を直ちに行うことはできない旨を回答した。
▼ Xはその後もC所長に対し、上記処理をすぐに行うよう強い言葉で求めただけでなく、同日夕刻、事務所内の椅子を蹴飛ばし、語気鋭く申し向けた上で、同所長の顔面を左手で1回叩いたところ、所長の眼鏡が床に落ちた。
▼ また、XはC所長に対し、「お前頭おかしいな本当に」、「バカじゃねえか、お前」などと言い、その背後に回って頭を触り、肩をつかむなどした(以下「本件解雇事由1-2」という)。
▼ 同月6日、D管理部長はXに対し、C所長に対する上記暴言、暴行等が就業規則に反するとして、Xを訓告に処することとし、訓告書を交付して、十分に反省をするとともに、職場の秩序の維持に努め、自身の言動に注意し、誠実に業務を行うことを求めた。
▼ Xは同月17日付で、D管理部長宛てに顛末書を提出した。当該顛末書にはC所長に以前からお願いしていた事務を処理してもらえなかったことに立腹し、同所長に対し、いかなる理由があっても許されない暴言、行為をした旨の記載等があった。
<Xの自宅待機から本件解雇に至るまでの経緯等について>
▼ K社の人事部は同年9月1日付で、Xを人事部付として自宅待機を命じた。人事部のE人事グループ長らは同年8月26日から10月12日までの間、8回にわたってXと面談した。同人事グループ長らは9月の面談の際、Xに対し、再配属先の調整を行う旨を伝え、Xの異動が検討された。
▼ しかし、E人事グループ長らは同月29日の面談の際、Xに対し、新たな配属先が見付からず、自主退職または解雇以外ない旨を告げた。なお、K社がXの異動先として検討したのは一支店のみであった。
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