【Audible】奇人か、天才か?南方熊楠の生涯に触れる旅『われは熊楠』岩井圭也
🎧南方熊楠の生き方に圧倒された
第171回直木賞候補作『われは熊楠』。
あの「知の巨人」、南方熊楠の生涯を描いた作品です。
英語で論文を書き、科学雑誌『Nature』に掲載された。
大英博物館にこもり、あらゆる文献を筆写した。
そんな「天才」あるいは「奇人」と呼ばれる熊楠ですが、この作品では一人の人間としての葛藤や、学問への執念が深く描かれていて、私はすっかり惹き込まれてしまいました。
🌱少年の頃から、世界を知りたかった
熊楠は幼い頃から「知ること」に異様なまでの興味を持っていたようです。
野山を駆けまわって生き物や植物を採集したり、書店で百科事典を立ち読みして、丸ごと記憶して帰宅後にノートに再現したり。
「本が欲しい」と言っても買ってもらえなかった時代。
ならば頭に入れて持ち帰ろう――。
この知的エネルギーにはただただ圧倒されます。
🌲学校の勉強より、自然の中に学ぶものがあった
「学校で習うことより、自然にこそ学ぶべきものがある」
少年の頃からそう考えていた熊楠は、東京に出て学んだものの体調を崩して帰郷。そこから、アメリカ、イギリスへと旅立ちます。
特にロンドン時代、大英博物館で過ごした日々は、彼にとって至福だったのではないでしょうか。
膨大な資料に囲まれて、自らの知的欲求にひたすら没頭する。
想像するだけでワクワクしてきます。
👂「 鬨 (とき)の声」が聞こえる
この作品で特に印象的だったのは、「 鬨 (とき)の声」という熊楠の幻聴描写です。
ただの風変わりな学者ではなく、心の奥に不安定さを抱えながらも、知の世界へ踏み込んでいく彼の姿が、リアルに感じられました。
死者が語りかけてくる場面や、この世のものとは思えない風景の描写も登場します。
熊楠は精神的にかなりギリギリなところで生きていた―それでも、学問をやめることはありませんでした。
🔬支える人がいたから、学問を続けられた
熊楠がここまで自由に学問を追求できたのは、まぎれもなく実家の支援があったからです。
父や弟からの資金援助。
そして、何かと面倒を見てくれる人々。
彼は「一人で突き進む天才」ではなく、「支えられながら走り続けた人」だったのです。
🌿学問とは、生きることだった
日本に帰国してからも、熊楠はひたすらに知を追い求めました。
昭和天皇に講義をするという名誉も手にしましたが、本人の関心はただ一つ。
森羅万象を知ること。
生命の本質に近づくこと。
そして「自分とは何者か」を考え続けること。
「知りたい」「わかりたい」その一心で突き進んだ南方熊楠という人物。
とても真似はできないけれど、その姿勢には学ぶところが多いと感じました。
✏️学ぶことは、孤独で自由で、でも楽しい
熊楠は、ただ「知りたい」という思いだけで、自分の道を突き進んだ人でした。
理解されなくても問いを持ち続ける姿に、学ぶことの本質を見た気がします。
知ることは、誰かに見せるためじゃなくて、自分の中に広がる世界のためにある――
そんなふうに感じさせてくれる一冊でした。
🎧Happy Listening!
