二人で先輩に耐える
八年前の夏に会って食事をして以来の、寺内公男さんという友人にお土産を送る為に、私は土日でも開いている郵便局へと足を向ける。
何年も渡って没交渉であり、今どうしているだろうか、まだ草加市に住んでいるだろうかと気になり、様子確認の為に便りを出すのだ。
寺内さんとは九年前に、北海道や北陸へ向かう新幹線が走る直ぐそばの職場で出会った。そこでは、ネチネチした先輩巣山からのイジメを一緒に受け続けていたのである。
ここで、私達三人が登場するエピソードを一つ紹介させてもらう。
ある晩、帰る時間になり仕事場から事務所兼更衣室に戻る途中、不満げな表情の寺内さんが私に話を振って来た。
「ねー。遠藤ちゃん。巣山の奴現場でトラブルが発生して、俺等がてんてこ舞いしてんのに、姿すら現さなかったじゃねーかよ! こればかりは、流石に頭に来た、我慢出来ないぜ!」
私と対照して寺内さんは、冷静に周りを見渡せる人だから、巣山のサボリもしっかり確かめられるのだ。私も、寺内さんの話で、身体の内部に熱が生まれたのが感じられる。そして、今日までされた理不尽なマウントの数々が、蘇って了った!
事務所に入ると、大阪の本社の経営陣も一目置く、この営業所のエース藤野さんが食事をしていた。私は、藤野さんを目に入れるや否や、大声で巣山のサボっていた事を話した。
「ねー! 寺内さん! 貴方も見ましたよね⁈」
「いやいやいや! 俺は、んなの知んねー!何の事⁈」
私は、隣の寺内さんに尋ねた。寺内さんは、巣山が先に事務所に来て帰り支度をしているのを知っていたから、この様に返答をしたのである。藤野さんも「良く本人がいるのに話せるよな」と思ったという。
私は、話終わると作業着から普段着に着替える為に更衣室に行くと、矢張り、巣山は着替えている最中だった…!
明日私は、巣山から報復を喰らうのだろうと怯えたが、やつは打って変わり、キビキビやる様になったのである。
「遠藤は意外にもちゃんと見てるわ。俺は、あの藤野さんから性格に問題が有って、見込みなんぞ無しと見做されて、アイツは期待されているからちゃんとやらないとな…。」
この様に思った故かもしれない。
今振り返れば「本人の前でまずいより」も、憎しみを抑え切れなかったのだろう。実は、寺内さんに話を振り、何で彼が「いや、俺はそんなの知らない」と返したのか、その時は解らなかったのだ。
それから直ぐに、寺内さんも私もこの職場を辞めて、別々の所で働き始めた。
郵便局に至るまで、私は、郊外の長閑な雰囲気を味わいながら、歩みを進める。少々暑さを感じられた。大丈夫かな、転居して了いお土産を返されないだろうかと思った。出来れば、八年ぶりの再会が出来たらなと願う。 完
