オンドバカ
「温度バカだよね」
周囲からよくそう言われる。
「暑い日に暑さを感じない」といった、自律神経のバグのような状態ではない。
ただ、普通の人なら「やりすぎ」と思うほどの極端な空調の温度設定が、なぜか私にはすこぶる快適なのだ。
夏、冷房がキンキンに効いた部屋にずっといても平気。
冬、暖房がガンガンにかかった部屋でも「暑苦しい」とは思わない。
私の皮膚の温度センサーは、どうやら人よりかなり大雑把に作られているらしい。
前職でのこと。
私の向かいに座っていた、自称「女子」のアラカン女性は、真夏だというのに「冷房が寒い」と言って足元にヒーターをつけていた。
エアコンの冷気とヒーターの熱気がぶつかり合い、私の足元はもわんとした熱が漂う、本物の「頭寒足熱」状態。
周りは同情してくれたが、私にしてみれば「足元だけが不満」という程度で、実は結構快適に過ごしていた。
「寒くないの?」
そう、聞かれても
「チルドくらいが私にはちょうどいいんです。何せ私、夏は鶏ひき肉のように『足が早い』もので・・・」
と決まり文句のように答えていた。
この「温度バカ」っぷりが、部屋という境界を越えて「車内」という密室になると、さらに顕著に現れる。
私の車は、夏は凍えるような極寒、冬はのぼせるような灼熱の空間と化す。
当然、友だちは私の車に乗りたがらない。
だが、これこそが私の狙い通りなのだ。
ぶっちゃけて言えば、私は基本的に自分の車に人を乗せたくない。
夏、私の車に我慢して乗った同乗者は、だいたい翌日に風邪気味になる。
冬、同じように乗った同乗者は、乾燥で喉をガラガラにする。
当の私はピンピンしているのだけれど。
特に遠出をする際、助手席から「暑い」「寒い」「トイレに行きたい」などと注文がつくと、それだけで私のテンションは急降下する。
私はただ、運転に全神経を集中させたいだけなのだ。
邪魔をされたくないから、好きなを音楽かけながら黙々とハンドルを握っていると、周囲からは「運転すると不機嫌になるよね」と怯えられる。
不機嫌なのではない。
元々の温度バカに凄まじい集中力が加わった結果、周囲への配慮が完全にシャットアウトされているだけなのだ。
そんな私なので、最近の遠出はもっぱら友だちの車に乗せてもらうことが多い。
今の車は優秀で、運転席と助手席で別々の温度設定ができる「デュアルエアコン」だ。
「他人の車でガタガタ言うな」という理性が頭の片隅で警報を鳴らしてはいるものの、私は気づけば、助手席側の温度調整スイッチを勝手に、そして大胆に動かしている。
助手席の特等席で、私だけの快適な風を浴びながら、心の中でつぶやくのだ。
やっぱり私は、筋金入りの温度バカかもな、と。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!