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宮廷賢者アルトリア 第18話「狂気の王弟カルマ」

第18話「狂気の王弟カルマ」

アルトリアの屋敷・書斎

机の上には書物と地図。
落ち着いた空気の中、講義のような時間。

アルトリアが椅子に座り、向かいにピーターとリオンが座る。

アルトリア
「宮殿には、“十省”と呼ばれる十の機関がある。これは教わったかい?」

ピーター・リオン
「はい、叔父上」

アルトリアは軽く頷く。

アルトリア
「では、改めて整理しよう」

アルトリアは机の上の紙に簡単な図を描く。

アルトリア
「まず――国政や王の勅命、そして国の歴史をつかさどる“国務省”。僕やイルハレムたちがいる場所だね」

ピーター
「一番重要なところですね」

アルトリア
「そうだね。いわば“国の中枢”だ」

アルトリアは続ける。

アルトリア
「次に、“法務省”。法を整え、国の秩序を守る」

リオン
「ルールを作るところですね」

アルトリア
「その通り」

アルトリアはテンポよく続ける。

アルトリア
「外交を担う“外務省”に……軍事と騎士団を管理する“国防省”。そして国家の財を扱う“財務省”」

ピーター
「財務省が見るのはお金の流れですね」

アルトリア
「うん、国を動かす血液のようなものだ」

アルトリアが続ける。

アルトリア
「さらに――治水や土木を担う“公共工務省”。農業を管理する“農務省”」

リオン
「食べ物に関わるところ……」

アルトリア
「国の土台だね」

アルトリアが続ける。

アルトリア
「そして、“民部省”。戸籍や人口を管理する」

ピーター
「人の数も大事なんですね」

アルトリア
「むしろ最も重要な資源だよ」

アルトリアが続ける。

アルトリア
「次に、“刑務省”。罪人の取り調べや刑罰を司る」

リオン
「怖いところですね……」

アルトリア
「だからこそ、慎重でなければならない」

アルトリアが続ける。

アルトリア
「最後に、“教育学省”。学校や教育を管理し、人材を育てる」

ピーター
「未来を作る場所ですね」

アルトリアは微笑む。

アルトリア
「いい視点だ」

沈黙の時間が少し流れる。

アルトリア
「ここまでの制度は――隣国のイルカン、アルゼリア、ロゴ、ベルナード諸国には存在しない」

リオン
「そんなに違うんですか?」

アルトリア
「大きく違う」

アルトリアは窓の外を見る。

アルトリア
「レグナスは、この大陸の大半を支配する大国だ。だが――領土が広いということは、それだけ統治が難しいということでもある」

ピーター
「……」

リオン
「……」

アルトリア
「だからこそ、分担し、管理し、連携する。それが“十省”の役割だ」

静かな空気。

ピーター
「叔父上は……その全部を理解しているんですか?」

アルトリア
「全部は無理だよ」

アルトリアが少し笑う。

アルトリア
「だからこそ、“仲間”が必要なんだ」

リオン
「イルハレム様たちのことですね」

アルトリア
「そう。1人で国は動かせない。だが――正しい人材を集めれば、国は変えられる」

ピーターとリオンの目が輝く。

ピーター
「僕も……」

リオン
「将来、国の役に立ちたいです!」

アルトリアは優しく頷く。

アルトリア
「その気持ちを忘れないことだ。それが何より大事だからね」

未来を担う者たちへ――静かに受け継がれていく“国家の知”。

レオニスの部屋

机の上には議会の報告書。レオニスが目を通している。

ロバート
「以上が、議会で出た主な内容です」

レオニス
「……なるほど」

レオニスは静かに書類を置く。

レオニス
「税制の見直し、地方への権限移譲……一見まともだが……裏があるな」

ロバート
「旧貴族派の動きと一致しております」

レオニス
「……やはりか」

レオニスはふと視線を上げる。

レオニス
「……ところで、ロバートよ」

ロバート
「はい、陛下」

レオニス
「カルマのほうはどうだ?また問題を起こしておらぬだろうな?」

ロバートの表情がわずかに曇る。

ロバート
「……報告によりますと……昨日、召使いを1名……拷問にかけたとのことです」

レオニス
「……何?」

ロバート
「理由は……“部屋に塵が残っていたため”と」

レオニスの表情が一気に険しくなる。

レオニス
「……たったそれだけで召使いを拷問にかけたのか!?あの愚弟は……!!」

ロバート
「止められる者は、領内にほとんどおりません」

レオニス
「……分かっている」

レオニスは拳を握る。

レオニス
「だからこそ、都から遠ざけたのだ……」

レオニス(心の声)
(あれは……王にしてはならぬ存在だ)

カルマ領・邸宅

薄暗い大広間には酒瓶が散乱し、荒れている。
カルマが椅子にだらしなく座り、酒を飲んでいる。

カルマ
「……おい」

召使い
「は……はい……」

召使いが震えながら言う。

カルマ
「酒がまずい。何なのだこれは?」

召使い
「も、申し訳ございません……しかし……」

次の瞬間――

カルマ
「ああぁぁ~~っっっ!!!???」

ガシャァァン!!

カルマが酒瓶を床に叩きつける。

召使い
「ひっ……!」

カルマ
「“しかし”だと……?言い訳をするな」

カルマはゆっくりと立ち上がる。

カルマ
「分からぬなら――教えてやろう」

カルマは別の酒瓶を掴む。

カルマ
「この味を、な」

召使い
「い、いえ……私は……!」

カルマ
「貴様は――主人の命令も、ろくに聞けぬのか!!??」

カルマが召使いの顔を掴む。

召使い
「やめ……やめてください……!」

カルマ
「飲め」

無理やり口を開かせる。

ゴクッ――

召使い
「ぐっ……!」

カルマ
「どうだ?美味いか?」

カルマの顔が歪む。

カルマ
「ハハ……ハハハハハ……!!そうだ……そうやって“知る”のだ……自分の無力を……なあ!!」

さらに酒を流し込む。

召使い
「……っ……!」

カルマ
「ハハハハハ!!ハハハハハハハハハハハハ!!!」

狂気の笑い声が響く。

セリアの部屋

アルトリアが椅子に座り、セリアと向かい合う。

アルトリア
「……カルマ様は陛下の弟君のはず。なぜ、辺境の地にいらっしゃるのですか?」

セリアは一瞬、言葉を選ぶように沈黙する。

セリア
「……ロウラル叔父上は、“最強の将軍”。六軍将の筆頭格で、誰もが認める存在。でも――」

セリアの声がわずかに低くなる。

セリア
「カルマ叔父上は違う」

アルトリア
「……」

セリア
「非常に残忍な性格の方なの……戦場でも、必要以上に殺す。降伏した者も、民も……関係なく」

アルトリア
「……!」

セリア
「征服された土地で――殺戮の限りを尽くした」

静かな部屋に、その言葉だけが重く響く。

セリア
「だから父上は――カルマ叔父上を都から遠く離れた辺境へ追いやったの」

アルトリア
「……なるほど」

アルトリアはセリアの様子に気づく。
セリアの手が、わずかに震えている。

アルトリア
「……姫様?」

セリアは目を伏せる。

セリア
「……私も、一度だけカルマ叔父上に会ったことがあるの」

回想のような静けさ。

セリア
「その時は……まだ子供で……」

セリアの声がかすかに震える。

セリア
「何も分かっていなかった」

ゆっくりと顔を上げる。

セリア
「でも――あの目だけは……忘れられない……」

沈黙。

セリアの瞳に、かすかな恐怖が宿る。

セリア
「まるで……人を、人として見ていないような……そんな目だった」

アルトリアは静かにセリアを見る。

アルトリア(心の声)
(……あのセリア姫様がここまで震えるなんて……どれほどの人物なんだ……?)

セリアは小さく息を吐く。

セリア
「……だからもしあの方が動いたら――ただの陰謀では済まないわ」

アルトリア
「……」

アルトリアはゆっくりと頷く。

アルトリア
「……ならば、尚更備えなければなりませんね」

セリアはアルトリアを見る。

セリア
「ええ。絶対に……止めなければ」

レオニスの部屋

レオニスが静かに口を開く。

レオニス
「……以上が、カルマの領地で起きている現状です」

部屋に重い沈黙が落ちる。

マルガレーテ
「……そう。また、カルマが召使いを……厳しい拷問にかけたのですね?」

レオニス
「……はい」

ロウラルの表情が険しくなる。

ロウラル
「……部屋の塵ひとつで、だと……?そんな、つまらん理由で……」

ロウラルの拳が震える。

ロウラル
「何を考えているのだ……あの馬鹿は!!」

ドンッ!!

ロウラルが机を叩く。

ロウラル
「兄上!!兵をお貸しください!!今すぐにでもカルマを捕らえます!!」

レオニスは黙ったままロウラルを見る。
その瞬間――

マルガレーテ
「落ち着きなさい、ロウラル」

静かだが、強い声。

ロウラル
「母上!!」

ロウラルはなおも怒りを抑えきれない。

ロウラル
「あいつを放置すれば、いずれ国に災いをもたらします!!」

マルガレーテはゆっくりと立ち上がる。

マルガレーテ
「分かっています。あなたの言うことは正しい」

ロウラル
「ならば――」

マルガレーテ
「しかし……」

その一言で空気が止まる。

マルガレーテ
「カルマはあれでも王族。軽々しく兵を動かせば――それは“内乱”と見なされかねません」

ロウラル
「……っ」

マルガレーテ
「そして今は――旧貴族派が動いている」

レオニスが静かに頷く。

レオニス
「ここで王家が内部分裂を見せれば……奴らの思う壺だ」

ロウラルは歯を食いしばる。

ロウラル
「……しかし……!」

マルガレーテ
「ロウラル」

ロウラル
「……!」

マルガレーテ
「怒りは理解します。ですが――」

マルガレーテの目が鋭くなる。

マルガレーテ
「王族である以上、感情で剣を振るってはなりません」

ロウラルの拳が震える。

ロウラル
「……」

長い沈黙。

ロウラルはゆっくりと拳を下ろす。

ロウラル
「……承知しました。ですが――いずれ必ず、奴は止めます」

マルガレーテは静かに頷く。

マルガレーテ
「ええ。その時は……王家としての決断を下しましょう」

レオニスが静かに呟く。

レオニス
「……その時が来ぬことを願うがな」

カーン邸・執務室

重厚で暗い空間。
外は夜。静寂。

アントニウスが椅子に座り、静かにワインを傾ける。
オリオンが尋ねる。

オリオン
「しょ……正気ですか!?父上!カルマ卿を王にするなどと!」

アントニウスは一切動じない。

アントニウス
「ああ。利用するだけ利用する」

オリオン
「しかし……!カルマ卿は、拷問と殺戮を楽しむ異常者です!」

オリオンが続ける。

オリオン
「王になれば、間違いなく暴君になります!父上も、その異常性を理解していたからこそ――これまで近づかなかったのではありませんか!?」

沈黙。

アントニウスはグラスを机に置く。

アントニウス
「……だからだ」

オリオン
「……!」

アントニウス
「“扱えぬ者”だからこそ、価値がある」

オリオン
「……どういう意味です?」

アントニウスはゆっくりと立ち上がる。

アントニウス
「同じレオニス王の弟でもロウラルは理性がある。ゆえに、こちらの思い通りには動かぬ。だがカルマは欲望と衝動で動く。だからこそ――」

アントニウスの目が鋭く光る。

アントニウス
「“方向”さえ与えればいい」

オリオン
「……!」

アントニウス
「剣は、意思を持たぬ。振るう者次第で、どうとでもなる」

オリオン
「ですが――その剣が暴走すれば!」

アントニウス
「その時は……折ればよい」

オリオン
「……っ」

アントニウス
「カルマは王になるための器ではない。“壊すための器”だ」

オリオンの表情が険しくなる。

オリオン
「……宮廷を壊すために、ですか?」

アントニウス
「そうだ。王家を内側から崩壊させる。そのための最適な駒だ」

オリオン
「……危険すぎます」

アントニウス
「分かっている」

オリオン
「制御できません」

アントニウス
「分かっている」

オリオン
「それでも使うと?」

アントニウスは微笑む。

アントニウス
「“勝つため”だ」

沈黙。

アントニウス
「この国は、誤った形で保たれている。それを正すには――一度、壊すしかない」

オリオン
「……そこまでしてでもですか?」

アントニウス
「当然だ。私は敗北したまま終わるつもりはない」

静かな狂気。
オリオンはしばらく黙り――

オリオン
「……分かりました。ですが……」

アントニウス
「?」

オリオン
「カルマ卿は“剣”ではありません。“災害”です」

アントニウスは一瞬だけ目を細める。

オリオン
「扱いを誤れば――我々ごと飲み込まれます」

沈黙。

アントニウスは静かに笑う。

アントニウス
「その時は……それもまた、運命よ」

国務省執務室

書類が積まれた机。
いつものメンバーが集まる。

アルトリアが書類をまとめながら口を開く。

アルトリア
「先日、うちの甥っ子達に十省の説明をした」

イルハレムが軽く笑う。

イルハレム
「彼らも、もうそろそろ宮殿に仕官する歳ですからね〜」

ジェームズとダイムが顔を見合わせる。

ジェームズ
「……甥っ子?」

ダイム
「そんな話、聞いたことありましたっけ?」

アルトリアは少しだけ考え――

アルトリア
「君達も、賢者学校の“幽霊騒ぎ”の時に会ったことがあるはずだよ」

ジェームズ・ダイム
「あ〜あの時の!」

ダイム
「確か……やたら礼儀正しい子達でしたよね!」

ジェームズ
「妙にしっかりしていた印象があります」

イルハレム
「うちの血筋でしょうね〜」

イルハレムがくすっと笑う。

ダイム
「でも確かに、あの年齢であの落ち着きはすごいですよ」

ジェームズ
「将来有望ですね」

アルトリアは少しだけ穏やかな表情になる。

アルトリア
「……ああ。彼らはきっと、この国を支える存在になる」

イルハレム
「その時は、我々はもう“先輩”ですね」

ダイム
「うわぁ……なんか実感湧きませんね……」

ジェームズ
「時代は確実に進んでいます」

アルトリア
「……だからこそ」

アルトリアの表情が少し引き締まる。

アルトリア
「今のうちに、基盤を整えておかないといけない」

イルハレム
「ええ。後の世代に、余計な火種を残さないためにも」

一瞬、空気が少し重くなる。

ダイム
「……火種、か」

ジェームズ
「最近の動きですね」

アルトリア
「……ああ」

アルトリアの目がわずかに鋭くなる。
イルハレムがふと思い出したように口を開く。

イルハレム
「……そういえば」

アルトリア
「?」

イルハレム
「最近、エリス姫様が妙に積極的な気がするんです」

アルトリア(心の声)
(……エリス姫様は、イルハレムを気に入っているからな)

アルトリア
「具体的には?」

イルハレム
「僕が侍女たちに見られていると――なぜか、すごく不機嫌になるんですよね……」

ダイム
「え?」

ジェームズ
「……ああ」

ジェームズは何か察した顔をする。

ジェームズ
「それ、分かるかもしれない」

イルハレム
「え?」

ジェームズ
「この前もさ、侍女に見られてたってだけで、リーナ隊長が急に機嫌悪くなって――」

ダイム
「あ、それ俺もある!アリサさんも同じ理由で不機嫌だった!」

イルハレム
「えっ……」

ジェームズ
「……偶然、ではなさそうだな」

ダイム
「ああ……」

アルトリアは小さくため息をつく。

アルトリア(心の声)
(……女難か。僕たちは、これからどうなるのか……)

アルトリアは遠い目をする。

カルマ領・邸宅 応接室

薄暗く、荒れた雰囲気。
重苦しい空気が漂う。

重厚な扉が開く。アントニウスが静かに入室する。
カルマは椅子に深く腰掛け、酒を手にしている。

カルマ
「……これはこれはアントニウス卿。お久しぶりです」

アントニウスは丁寧に一礼する。

アントニウス
「お久しぶりでございます、カルマ卿。辺境の地で、ご苦労がおありでしょう」

カルマは酒を一口飲む。

カルマ
「ええ。退屈です。都からは遠く……召使いどもは無能ばかり」

グラスを軽く揺らす。

カルマ
「刺激がありません」

アントニウスは表情を変えない。

アントニウス
「それは……さぞ、お辛いことでしょう」

カルマがアントニウスをじっと見つめる。

カルマ
「……ところで、なぜあなたのような“元重鎮”が――このような辺境まで来たのだ?」

空気が張り詰める。
アントニウスは一歩だけ前へ出る。

アントニウス
「恐れながら、このアントニウス。あなた様に――ご提案を申し上げたく、参りました」

カルマの口元がわずかに歪む。

カルマ
「……提案、か。面白い」

カルマはゆっくりと立ち上がる。

カルマ
「では――お聞かせいただこう」

カルマの目が妖しく光る。
アントニウスが静かに口を開く。

アントニウス
「あなた様を――レグナスの王にお立ていたします」

一瞬の沈黙。
カルマの目がわずかに見開かれ、次の瞬間――

カルマ
「ハハハハハハ!!面白いことをおっしゃる!この私が、レグナスの王ですと?」

アントニウスは一切動じない。

アントニウス
「そうでございます」

カルマの笑みが、ゆっくりと変わる。

カルマ
「……見返りは?」

鋭い視線。
アントニウスは即答する。

アントニウス
「この私めに、宰相の席を。そして――我が娘婿を、ベルナード連合の盟主に」

カルマはしばらく黙り込む。

カルマ
「……」

そしてカルマの口元が歪む。

カルマ
「……いいでしょう」

アントニウス
「……!」

カルマ
「その条件、受け入れます。そうなれば――」

カルマの目が狂気を帯びる。

カルマ
「レグナスも……ベルナードも……すべて、私のものになる」

アントニウスは静かに頭を下げる。

アントニウス
「御意に」

カルマはゆっくりと酒を口に運ぶ。

カルマ
「クク……退屈が終わりそうだな」

アントニウスは顔を上げる。

アントニウス
「ええ。これより――歴史が動きます」

カルマ領・邸宅前

カルマがゆっくりと歩き、アントニウスを見送る。

カルマ
「それでは――またのご訪問をお待ちしております」

口調は丁寧。だが、その目は笑っていない。
アントニウスは軽く一礼する。

アントニウス
「はい。失礼いたします」

アントニウスが馬車に乗り込む。
御者が手綱を引く。

ガタン……

馬車がゆっくりと動き出す。

カルマはその背を無言で見送る。
そしてカルマの表情が――一気に崩れる。

カルマ
「……チッ。あのタヌキジジイめ。貴様の思惑など……」

カルマの口元が歪む。

カルマ
「お見通しだ」

カルマの目が狂気を帯びる。

カルマ
「利用するつもりか?ならば――こちらも同じこと。先に喰らうまでだ」

馬車の中

暗い車内。
揺れるランタンの灯り。

アントニウスは静かに目を閉じている。
やがて、ゆっくりと目を開く。

アントニウス
「……ふっ」

口元に、わずかな笑み。

アントニウス
「やはりな。あやつが、大人しく私に従うはずがない……だが――」

アントニウスの目が冷たく光る。

アントニウス
「それでいい。暴れるほど、価値がある。存分に、壊してもらおう……この国をな」

翌朝 レオニスの部屋

レオニスが窓際に立ち、外を眺めている。
扉がノックされる。

ピエール
「失礼いたします」

レオニス
「入れ」

ピエールが静かに入室し、一礼する。

ピエール
「陛下、お呼びでしょうか?」

レオニスは振り向かずに口を開く。

レオニス
「昨夜――カルマとアントニウスが接触したという話は聞いたか?」

ピエール
「はい。兄も、その可能性を予想しておりました」

レオニス
「……やはりバーンズか」

レオニスがゆっくりと振り向く。

レオニス
「……ピエールよ」

ピエール
「はい、陛下」

レオニス
「バーンズは、この件をどう見ている?」

ピエールは静かに答える。

ピエール
「おそらくは――互いに利用し合い、用済みとなれば殺すつもりだと」

沈黙。

レオニスは目を細める。

レオニス
「……その通りだろうな。アントニウスは、カルマを“道具”と見ている。だが――カルマは道具で終わる男ではない」

ピエール
「はい。むしろ、制御不能の“災厄”かと」

レオニスは静かに頷く。

レオニス
「……最悪の組み合わせだ」

沈黙。

レオニス
「ピエール」

ピエール
「はい」

レオニス
「バーンズに伝えよ。この件、全面的に任せるとな」

ピエール
「……よろしいのですか?」

レオニス
「相手はアントニウスだ。対抗できるのは、あやつしかおらぬ」

ピエール
「……承知いたしました」

レオニスは静かに呟く。

レオニス
「カルマ……あの愚弟が、どこまで壊すつもりか……」

ピエール
「……」

レオニスの目が鋭く光る。

レオニス
「だが――壊させはせぬ」

王、策士、狂刃。3つの力が動き出す。
その衝突は――避けられない。

第18話 完

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