【論文紹介】シマウマのような縞模様をペイントされた牛は吸血バエの攻撃を避けることができる
今日の論文は、牛にシマウマのような白黒の縞模様を塗ることで、吸血バエの被害を減らせるかを検証した、非常に興味深い研究です。畜産における害虫対策の新しい可能性を示すかもしれません。
概要
シマウマの縞模様が吸血バエを避ける効果があるという仮説に基づき、黒毛和牛に白黒の縞模様をペイントする実験を行った。
対象は「白黒の縞模様(B&W)」「黒い縞模様(B)」「縞模様なし(CONT)」の3つのグループに分けられた。
結果、B&Wの牛は他のグループに比べて、体に付着する吸血バエの数が大幅に少なく、ハエを追い払う行動も減少した。
この方法は、殺虫剤を使わずに家畜を吸血バエから守るための有効な代替手段になる可能性があり、殺虫剤耐性の問題解決にも貢献しうることが示唆された。
はじめに
シマウマの縞模様には、捕食者から身を隠す「カモフラージュ説」や仲間との「コミュニケーション説」など多くの仮説があったが、近年「吸血バエを避けるため」という説が有力になっている。
吸血バエは家畜にとって深刻な害虫であり、ストレスによる体重増加の抑制や乳量の減少など、経済的な損失を引き起こしている。
そこで本研究では、牛の体にシマウマのような模様を描くことで、吸血バエの付着数や、ハエを追い払う行動が減少するかどうかを世界で初めて検証した。
材料と方法
実験動物: 6頭の妊娠中の黒毛和牛を使用した。
実験デザイン: 以下の3つの処置を牛に施す「3×3ラテン方格法」を用いた。
B&W: 白黒の縞模様(市販の水性ラッカースプレー(白)でペイント)
B: 黒い縞模様(同上(黒)でペイント)
CONT: 縞模様なし(対照群)
観察: 1回30分間、各牛のハエを追い払う行動(頭振り、耳ばたき、足踏み、皮膚のけいれん、尾振り)を記録した。
データ収集: 観察終了後に牛の右側面の写真を撮影し、写真から体に付着している吸血バエの数を数えた。
結果
B&Wの牛に付着した吸血バエの総数は、CONT(縞なし)およびB(黒縞)の牛の約半分であり、統計的に有意に少なかった。
一方で、CONTとBの牛の間では、ハエの付着数に有意な差は見られなかった。
B&Wの牛がハエを追い払う行動の総頻度も、他の2グループに比べて約20%少なく、有意な減少が見られた。
ただし、行動の内訳を見ると、「皮膚のけいれん」だけはB&Wの牛で頻度が高くなるという興味深い結果も得られた。
考察
本研究の結果から、牛に白黒の縞模様を描くことは、吸血バエからの被害を減らすのに有効な手段であることが示された。
CONT(縞なし)とB(黒縞)で差がなかったことから、塗料の匂いがハエの行動に影響を与えたわけではないと考えられる。
B&Wの牛で「皮膚のけいれん」が多かったのは、ハエの数が少ない状況では、エネルギー消費の少ないこの行動が選択されやすかったためではないかと推察される。
この方法は、殺虫剤の使用を減らし、薬剤耐性問題の解決にもつながる環境に優しく実用的な害虫対策となる可能性がある。
今後の課題として、ペイントの効果が数日しかもたないため、より長期間(3〜4ヶ月)効果が持続する方法の開発が挙げられる。
英語タイトル: Cows painted with zebra-like striping can avoid biting fly attack
