見出し画像

【卒業】東野圭吾|読了

加賀恭一郎シリーズ第1作。

まだ刑事になる前、大学生だった頃の加賀を描いた物語。

正直に言うと、今の東野圭吾作品と比べると、表現やテンポに時代を感じる部分はある。特に序盤は少し入り込みづらく、読みづらさを覚える場面もあった。

それでも面白かった。

何より大きかったのは、若き日の加賀恭一郎に出会えることだった。

今の加賀を知っているからこそ、まだ完成されていない彼の姿が印象に残る。

ここから、あの加賀恭一郎が始まっていく。
そう思いながら読む時間が、とても楽しかった。


大学生・加賀恭一郎


本作の加賀恭一郎は、まだ刑事ではない。

大学生で、剣道に打ち込み、友人たちと学生生活を送っている。

それでも、すでに後の加賀へつながるものが見える。

文武両道で、思慮深い。

物事をじっと見つめ、簡単に感情へ流されない。

事件の表面だけではなく、人の言葉や行動、その奥にあるものを見ようとする。

若い頃から、加賀恭一郎は加賀恭一郎だったのだと思わされる。

ただ、今の加賀とはやはり違う。

不器用さもある。

若さゆえのまっすぐさもある。

友人や恋愛をめぐる関係にも、学生らしい揺らぎがある。

すでに名探偵としての片鱗は見えるけれど、まだ刑事として完成された加賀ではない。

この青年が、やがて『悪意』『赤い指』『新参者』の加賀へつながっていく。

そう考えると、シリーズを追ってきたからこその面白さがあった。

今読むと感じる時代

一方で、読みやすい作品だったかと言われると、少し難しい。

会話や人間関係の描き方、物語のテンポには、今読むと時代を感じるところがある。

特に序盤は、物語の中へ入るまでに少し時間がかかった。

近年の東野圭吾作品に感じる、するするとページをめくらせるような読みやすさとは少し違う。

事件の見せ方にも、どこか昔の本格ミステリらしい重さがある。

ただ、それも含めてシリーズの原点なのだと思う。

今だから古さを感じる部分がある。

同時に、後の作品を知っている今だからこそ、東野圭吾や加賀恭一郎の「始まり」として見えてくるものもある。

読みづらさは少しあったけれど、それ以上に原点を読んでいる面白さが勝った。


「卒業」というタイトル

読み終えて印象に残ったのは、『卒業』というタイトルだった。

卒業といえば、まず学生生活の終わりを思い浮かべる。

けれど、本作にある「卒業」は、それだけではないように感じた。

友人との別れ。

学生時代の終わり。

死との向き合い。

そして、それぞれが別の人生へ進んでいくこと。

いくつもの終わりと始まりが、物語の中に重なっている。

事件は解かれる。

でも、謎が解けたからといって、以前の関係へ戻れるわけではない。

学生時代という限られた時間の中にあった友情や恋愛、迷い。それらが事件によって決定的に変わってしまう。

だから読後に残るのも、事件が解決した爽快感とは少し違った。

もう戻れない時間への寂しさ。

『卒業』というタイトルが、読み終えたあとに静かに効いてくる作品だった。

加賀恭一郎の原点

加賀恭一郎シリーズを読んできたからこそ、本作で一番惹かれたのはやはり加賀だった。

加賀は、ただ謎を解く人物ではない。

事件の向こう側にいる人を見る。

なぜその人はそうしたのか。

その人が何を抱えているのか。

真相を明らかにするだけでは終わらず、人の感情へ目を向ける。

後のシリーズで強く感じる加賀の魅力だけれど、その原型はすでに本作にもある。

もちろん、まだ若い。

今の加賀ほど完成されてはいない。

だからこそ面白い。

後の加賀を知っている自分には、何気ない言動からも「ここは変わっていないな」と感じられる。

完成された人物の過去を見るのではなく、これからあの加賀になっていく青年を見る。

シリーズ第1作を今読む面白さは、そこにあった。


読後に残ったもの

『卒業』は、今読むと時代を感じる部分もある作品だった。

表現やテンポには少し古さがあり、読みづらさを覚えるところもある。

それでも、しっかり面白かった。

大学生の加賀恭一郎。

友人たちとの関係。

学生生活の終わり。

事件によって失われ、変わっていくもの。

それらが『卒業』という言葉に静かに重なっていく。

そして何より、加賀恭一郎の始まりを読める。

まだ刑事ではない。

まだ完成されてもいない。

それでも、人を見つめる姿勢には、すでに後の加賀へつながるものがある。

ここから始まり、『悪意』『赤い指』『新参者』へと続いていく。

そう思うと、改めて加賀恭一郎シリーズを最初から追いたくなった。

若き日の加賀に出会えること。

そして、今の加賀へつながるものを見つけられること。

『卒業』は、シリーズの原点だからこその面白さがある一冊だった。

☃️ここまで読んでくださってありがとうございました。
ミステリ中心に読書の感想を書いています。
気が合いそうだと思ったら、フォローしてもらえたら嬉しいです。

🔽書影や詳細はこちら(Amazonアソシエイトリンク)

Amazonのアソシエイトとして、ゆきおの読了記録は適格販売により収入を得ています。

いいなと思ったら応援しよう!