花売りのおばあさんのお話 【音読つき】
曾祖母が生前に語っていたという話ですから、戦後間もない昭和20年代あたりのお話でしょうか。一人の花売りのおばあさんがおりました。
あるとき、その日の商いを終えて、日が暮れた田んぼの中の一本道を歩いて帰宅していました。途中、十字路になっている箇所があるのですが、その交差した道路の右側の奥で、何やらチラチラ光るものがうごめいているのに気づきました。まだ、かなり距離があるのですが、目をこらしてみると、それは少しずつ大きくなっている。どうやら、こちらのほうに近づいてきている様子。
「?」
当時、まだ珍しかった自動車でしょうか。それにしてはエンジンの音がしないのは妙です。しかもライトがひとつしかない。自転車にしてはスピードが速すぎます。仮にバイクだったとしても、光の大きさが尋常じゃないのは遠目でもわかりました。だんだんと近づいてくるにつれて、それが直径1メートルぐらいの巨大な火の玉だということがわかりました。
このままだと前方の十字路で鉢合わせになってしまう。なんとも言えない恐怖にかられたおばあさんは「火の玉よりも先にあそこを通り抜けてしまおう」なぜかそう思って足を速めました。その間にも火の玉は勢いよく近づいてきます。
なんとか辿り着いたとき、ちょうどタイミング悪く火の玉も十字路に差しかかり、おばあさんの目の前をものすごい勢いで横切って行きました。あまりのショックに、おばあさんは大急ぎで帰宅すると、すぐさま床に入り、そのまま七日七晩もの間、熱にうなされながら寝込んでしましました。ようやく布団から這い出ることができたときには、どういうわけか両方の目が見えなくなってしまっていました。
火の玉の正体はいまだにわかっていないとのことです。
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