プールの監視員
今から20年以上前、ワンシーズン、プールの監視員のアルバイトをやったことがある。
就職氷河期の私は高校卒業後はアルバイトを転々としていた。
その中の一つである。
私は泳げない。
求人には泳げることが必須とは載ってなかった。
結果受かったので、シフト制で出勤することになった。
白いTシャツ2枚と紺色の短パン、ホイッスルが支給された。
室内の温水プール、中々の高音多湿であった。
立ってるだけで汗がでてくる。
Tシャツは毎日洗っていた。
その日も、洗いたてのTシャツをバッグに放り込みアルバイトへ向かった。
自宅から車で20分程走らせた、市内でも古い温水プールだ。
冬季の営業はスケートリンクになる。
勤め先につき、更衣室ですぐさま仕事着に着替える。
白いTシャツに紺色の短パンにホイッスルを首からさげる
はずだった。
ん?Tシャツがいつもより生地が薄い。
あれ?なんだか裾がフレア。
おや?首元ずいぶんあいてるな。
父の肌着であった。
U首の。
しかも年季入って伸び切ったやつ。
首元も裾もヨレヨレしてるやつである。
あれ、本人は長年の着心地で安心&落ち着く肌着である。
床に倒れ込んだ。
私はまだ20歳前の乙女だった。
こんなもの着て1日過ごせないという気持ちと、確認せず干してた洗濯ものを白いTシャツという認識だけでバッグに放り込んだ自分への後悔。
そして、なんでこんなにヨレヨレしてても大事に着てるんだという怒りと、訳がわからない笑いと色んな感情が流れ込んでいた。
時間は刻々と流れてくる。
ここは、事務所で相談しよう。
なにか代わりのTシャツがあるんじゃないかと期待したのだ。
「白ければなんでもいいよ」
事務所でその言葉が返ってきた。
もうやるしかない。
私は父のヨレヨレの白い肌着を身につけて現場に出て行った。
来るのは、年配の方や子供がほとんどだった。
少しくらい下着が透けてても誰も気にしないだろう。大丈夫、大丈夫。
みんな泳ぐ、歩く、遊ぶに一生懸命でましてや監視員なんて目に入らないだろう。
とても静かなプールでした。
どこかの大学の合宿で男子大学生のみの貸し切りだった。
逆三角形の美しい体が目の前を通り過ぎる。
眩しくて見れなかった。
ヨレヨレの父の下着姿の私の前を。
