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“お金が怖い”子どもだった僕が大人になって気づいた、ほんとうの豊かさとは

小学生のころだった。

ある日突然、家の中の空気が変わった。
夜、チャイムが鳴るたびに、母の肩がピクリと動く。

その小さな動きが、子どもだった僕の胸に、
何か冷たい針のように刺さった。

何も知らずに、ただその背中を見つめていた。

後から聞いた話だ。
父が知人の借金の保証人になっていたらしい。

その取り立てがいつ来るかわからず、
僕たち兄弟はしばらくの間、親戚の家で過ごすことになった。

その頃の僕にとって「お金」という存在は、
まるで人の心を変えてしまう“光を奪う影”のようだった。

お金が絡むと、人が怒る。泣く。嘘をつく。
幼いながらに、僕は静かにこう思った。

「お金って、怖いな」

チャイムの音は、いま思い出しても胸の奥で鳴る気がする。
あの夜の空気は、たぶん一生、僕の中で消えないことだろう。


普通のサラリーマンになりたかった

そんな経験をしたからだろうか。
僕はずっと「普通のサラリーマン」に憧れていた。

決まった給料が入り、ボーナスが出て、家族と穏やかに暮らす。
毎月ちゃんとお金が振り込まれることが、一番の安心に思えた。

人に頼まれて保証人になることは、絶対にしない。
安全な道を行こう。

そう心に決めていた。

けれど、人生というのは不思議なものである。
気づけば僕自身も、「人に教える」「発信する」という、
自分で稼ぐ世界に足を踏み入れていた。


「お金は怖い」から「お金と向き合う」に変わるまで

講師として活動を始めたころも、
心のどこかにお金への怖さが残っていた。

投資やビジネスの話を聞くと、
理屈では理解できるのに、どうしても心が動かなかった。

複利でお金がお金を生むという理論も、頭ではわかっていた。
でも、どうしても“やりたい”と思えなかった。

たぶん僕の中には、あの夜のチャイムの音が、
まだどこかで鳴り続けていたのだと思う。

「もう二度と、あの怖さを誰にも味わわせたくない」

そんな願いが、ずっと心の底に沈んでいた。


お金は「増やす」より「生み出す」もの

そして、ある日気づいた。

僕にとっての安心は、「お金が増えること」ではなかった。
自分の力で、お金を生み出せることだった。

たとえば、
・誰かに感謝される講座をつくれること
・読者に価値を届ける文章を書けること
・困っている人の悩みを聞き、助けになれること

そうした自分の中の能力が、
小さな金額であっても誰かの役に立ち、
お金という形で返ってくる。

そのプロセスこそが、僕には何よりも心の安心につながる。

投資で資産を増やすのも素晴らしい。
けれど、僕は「自分という資本」を育てるほうを選びたい。

だって、本当に信じられる資本は、
銀行口座じゃなく、自分の中にしかないから。


信頼とは、「自分を信じられる状態」

もちろん、お金を増やすために何かに頼ることが悪いわけじゃない。
でも僕にとってそれは、「また誰かの保証人になるような感覚」に近い怖さがある。

本当の信頼は、他人に依存することではなく、自分を信じられることだ。

信頼とは、夜明け前の静けさのように、
自分の中の光を感じられる状態である。


自信は「大成功」からは生まれない

多くの人が「自信をつけたい」と言うけれど、
自分を信じる力は、大きな成功からは生まれない。

心理学の研究でも、
「自分にはできる」という感覚(自己効力感)を高めるには、
大きな成功よりも、小さな達成体験の積み重ねが最も効果的だとわかっている。

たとえば、
・毎朝5分、ノートを開く
・書いたメモを1つだけ行動に移す
・できたら、自分に「よくやった」と声をかける

この繰り返しで、人は少しずつ“自分を信じられる人”になっていく。

「1回の大成功」より、「100回の小さな“できた”」。

そのほうが、はるかに心の支えになる。


信頼って、積み木みたいなもの

信頼できるのは、努力の証拠ではなく、繰り返した証拠だ。

積み木を積むたび、
子どものころ、父が黙って僕の横に座り、見守ってくれた姿を思い出す。

その手のぬくもりは、今でも僕の中に残っている。
あの背中には、「誠実さ」と「続ける力」があった。

信頼とは、きっとあの背中のように、
静かに積み重ねていくものなのだと思う。


そして今、「やりたいことで生きる」へ

気づけば、あれほど憧れていた「安定した会社員生活」と平行して、
今は副業で、自分が仕事をつくる側に立っている。

昔の僕が見たら、きっと言うだろう。
「そんな危ない道を選ぶな」と。

けれど、今の僕は少しだけ誇らしい。
あの頃、怖かった“お金”と、ようやく正面から向き合えるようになったからだ。

あの夜のチャイムが告げた“影”の音は、
いまはもう僕の中で、静かな“光”に変わった。

それは、恐れを越えた先にある感謝の響きだと思う。


お金とは「感謝の鏡」

お金とは、感謝の形であり、光を映す鏡だと、いまは心から思う。

ありがとうが増えれば、お金も増える。
感謝が減れば、お金も冷たくなる。

子どものころの僕は、お金が人を変えると思っていた。
でも今は違う。

お金は人を変えるんじゃない。
お金が、その人の本性を映す鏡になる。

その鏡は、光も影も、ありのままに映し出す。
人がどんな想いで働き、どんな愛を込めて生きているかを、
静かに、しかし確かに照らしてくれる。


いま、社会では「お金に働かせる」という言葉が流行っている。
でも、僕はこう思う。

お金に働かせる前に、
「自分が何のために働くのか」
を見つめること。

それこそが、いちばんの人生投資なんじゃないかと。

焦らなくていい。
比べなくていい。

お金を追うより、自分を磨こう。
小さな「できた」を積み重ねよう。

その回数が、やがて揺るがない信頼と豊かさを育てていく。


あなたの小さな「できた」は、
いつか、誰かの“生きる勇気”になる。

お金というテーマは、
生き方そのものを映す鏡だ。

「増やす」より「生み出す」
「怖れる」より「信じる」
「奪う」より「与える」

その選択を積み重ねていくたび、
人は少しずつ、自分を信じられる人間になっていく。

そして、その姿を見た誰かが、
また自分を信じ始める。

そうして世界は、静かに、光を増していくのだと思う。


近藤 芯(こんどう しん)




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