生活は止まってくれへんかった
主人が亡くなった次の日も、朝は普通に来た。
それが一番おかしいと思った。
目が覚めた瞬間、「夢やったらいいのに」と思ったけど、現実は何も変わっていなかった。
でも、朝は来る。
子供はお腹が空くし、学校にも行かなあかん。
だから私は起きた。
あの日も、いつもと同じ朝やった。
「行ってらっしゃい」って、いつも通り見送った。
それが最後になるなんて、思ってもなかった。
そのまま、帰ってくることはなかった。
今でも思う。
あの日、あの一言を言わんかったら、
何か変わってたんやろかって。
振り返れば、中学3年生の頃から、ずっとしんどかった気がする。
理由はよくわからんかった。
ただ、周りと同じように笑ってるつもりでも、どこかズレてる感じがあった。
何もないのにしんどい。
でも、それが普通やと思ってた。
そのまま大人になった。
仕事をして、結婚して、子供もできた。
ちゃんとした人生を歩いてるように見えてたと思う。
自分でも、そう思いたかった。
結婚してからは、少し落ち着いていた。
しんどくなることはあっても、戻れる場所があった。
主人がいてくれたから、
「ここにおったら大丈夫や」って思えてた。
でも、ずっとどこかに違和感があった。
楽でもないし、かといって壊れてるわけでもない。
ただ、ずっと薄くしんどい。
主人の様子がおかしいことは、前からわかっていた。
しんどそうにしてる日もあったし、言葉が少ない日もあった。
でも、「そのうち戻るやろ」くらいに思っていた。
ある日、「俺、必要?」って聞かれた。
なんて答えたらいいかわからなくて、
とっさに出た言葉が、
「おってもおらんでも一緒」やった。
その言葉が、ずっと残ってる。
あれが原因やったんちゃうかって、何回も思った。
でも、本当のところは、わからない。
結婚して10年目前やった。
主人が亡くなった。
自ら命を絶った。
何が起きたのか、最初は理解できなかった。
時間が経つにつれて、現実だけが重くのしかかってきた。
「なんで気づかんかったんやろ」
「私のせいなんちゃうか」
本当は違うって、どこかでわかってる。
でも、誰のせいでもないって思うより、
自分のせいにした方が、まだ納得できる気がした。
そのあと、私の中で何かが壊れた。
もともとあったしんどさが、一気に表に出てきた。
眠れない日が続いた。
何もする気が起きない日もあった。
でも、子供の前では普通にせなあかん。
一番下はまだ未就学児で、手もかかる。
それでも、止まってるわけにはいかんかった。
それが一番しんどかった。
病院に通うようになった。
薬も飲んだ。
でも、それで全部が良くなるわけじゃない。
ただ、「今日をなんとか終わらせる」ための状態になるだけやった。
そんな中で、エステサロンを開業した。
前向きな理由というより、「何かせなあかん」と思ったからやった。
家で止まってたら、そのまま沈んでいきそうやったから。
でも、現実は甘くなかった。
お客さんは思ったように来ない。
売上も伸びない。
それでも家賃はかかるし、生活費もいる。
だから、週2でパートも始めた。
ある日、子供に「今日のごはん何?」って聞かれた。
一番下はまだ小さくて、横でぐずっていた。
いつもと同じ、なんでもない一言。
でも、その時だけ、うまく返せなかった。
頭では考えてるのに、言葉が出てこんかった。
「どうしよ」って思ってる間も、子供は普通に待ってる。
その時思った。
止まってるのは自分だけなんやなって。
貯金も、少しずつ減っていく。
通帳を見るのが怖い日もある。
仕事を変えようとは思っていない。
今の仕事は、手放したくなかった。
それでも生活は足りなくて、
増やすしかなかった。
だから何件も応募した。
でも、全部落ちている。
正直、仕事なんかしたくないと思う日もある。
何もせず、そのまま止まってしまいたいと思う。
でも、止まれない。
生活があるから、動くしかなかった。
周りから見たら、普通に生活してるように見えると思う。
でも、正直なところ、ずっとギリギリやと思う。
気持ちも、お金も、全部。
それでも、子供は笑うし、お腹も空くし、毎日は続いていく。
だから私は、今日も起きる。
理由なんてない。
前向きでもない。
ただ、止まれないだけ。
正直、今もずっとしんどい。
これからどうなるのかもわからない。
このままでいいのかも、わからない。
毎日、仕方なしに生きてる。
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