6時間話したのに、何を話したか覚えていない日
大人になると、新しい友達ってできにくくなった気がします。
学生の頃みたいに、毎日同じ場所にいるわけでもない。
仕事で仲良くなることはあっても、
私はどこか一歩引いてしまうタイプでした。
そんな私に、最近、少しだけ不思議な出来事がありました。
ある日の退勤時間、職場で12歳年上の彼女から、急に改まって声をかけられました。そこにはちょうど、私より10歳年下の同僚も一緒にいて。
「私、今月で仕事を辞めることになったんだ」
突然の報告に驚き、寂しさが押し寄せました。
「どうしてですか?」「何かあったんですか?」と、そこで私たちは、初めてお互いの個人的な話をゆっくりと交わしたのです。
寂しさを惜しむように話しているうちに、流れは自然と「今度、みんなで集まろう」という話になり、数日後に彼女の家へお邪魔することになりました。
「家に遊びにおいでよ」
そう言われたとき、
嬉しいはずなのに、私の心は少しだけ緊張していました。
何を話したらいいんだろう。
お土産は何を持っていけば喜んでくれるかな。
久しぶりに、学生の頃のような前日のそわそわを味わっていました。
そして、当日。
気づけば、12歳上の彼女とも、10歳下の彼女とも、
私たちはひとつのテーブルを囲んで6時間ずーーっと話し続けていました。
不思議なくらい、
年齢のことなんて、途中から気にならなくなっていました。
生きてきた時代も、経験してきたことも、全然違う三人。
自分の知らない世界の話を聞いて、知らなかった考え方に出会う。
それなのに、一緒に顔を見合わせて笑っている時間は、信じられないくらい自然でした。
帰り道、気がつけば少し声が枯れていました。
6時間も話し込んだのに、実は「何を話したのか」の細かい内容は、あまり覚えていません。
でも、「とにかく温かくて楽しかった」ということだけは、胸の奥にちゃんと残っています。
あの日帰る頃には、
「12歳上だから」
「10歳下だから」
そんなことを考えていた自分は、どこにもいませんでした。
気になっていたのは年齢じゃなくて、
「この人とまた会いたいな」
その気持ちだけでした。
思い返してみると、
私が心地よかったのは、年齢なんかじゃありませんでした。
誰かが話しているときは、みんなでその話に耳を傾けること。
一緒に笑ってくれること。
相手を急かさず、その人の言葉をちゃんと待ってくれること。
ただ、それだけのことでした。
大人になったら、新しい友達なんてできないと思っていました。
でも、違ったみたいです。
「また遊びに行こう。」
帰り道、
そんな約束が自然と頭に浮かぶくらい、
あの日は心地いい一日でした。
大人になってからできた友達は、12歳上と10歳下でした。
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