天売島、焼尻島--北海道秘境の旅
北海道に住む友人から、「今年はウトウが舞う秘境においでよ」と書かれた年賀状が届いた。6月20日以降がシーズンだという「海鳥の楽園」天売島、「サフォーク羊の放牧」焼尻島はどんな所なのか?ウトウはどんな鳥なのか?何もわからないまま、誘われたら行ってみなきゃ!と、新年早々に半年後の旅行を決めたのだった。
羽田から新千歳空港まで飛び、電車で札幌へ行く。昼食に有名店で味噌ラーメンを味わってから高速沿岸バスに3時間乗る。着いた場所は、羽幌という北海道の北西部。日本海に面するこの町は年賀状の友人が生まれた故郷だ。海まで歩いて行ける静かな宿に宿泊。海鮮中心の夕食は上品でこの上なく美味しかった。何より採れたてのウニを口にしたのだから。町をぶらぶら歩くとキタキツネに出会った。

天売島
翌朝、天売島へ向かう船に乗った。島に降りると宿の車が迎えてくれた。荷物を預けて島内を歩いて一周することにする。地図を見ながら歩き始めると黒崎海岸に出た。海の上を無数のウミネコが飛び交う。ネコのような鳴き声が可愛く、かなり近くで舞う鳥たちをしばらく見ているとなんだか面白くて自然と笑みがこぼれるのだった。

さらに歩くと島の突端にある赤岩灯台が見えた。崖の上にある展望台で海を眺めていると、他の観光客から「ウミガラスが見える!」と声がする。肉眼では認識できなかったが双眼鏡を借りて見ると、水面に一列に並ぶウミガラスが見えた。10羽以上並んでいた。ウミガラスはオロロン鳥とも呼ばれ、海上で生活し海に潜って魚を食べる。近年魚が減って日本では天売島のみで繁殖する絶滅危惧種なのだ。さらに島を歩いて海鳥観察舎へ入る。宿で作ってもらったおにぎりを食べながら鳥を見る。鳥獣保護区に指定されている島なので、食料やゴミを狙われないようにしなければならないのだ。崖に掘られている鳥の巣が見える。少しでも鳥を増やすためにデコイと言われるそっくりさんが置かれていると書かれていたが全くわからなかった。
島の海沿いを一周して、島の内側にある森も歩いた。姿は見えないがウグイスの鳴き声が始終あちこちから聞こえた。島のトイレは環境保護のため水を使わない仕組みになっていた。トイレットペーパーも含めて全て肥料となるようだ。そんな天売島を一日中歩き回って宿に戻ると、採れたて殻つきウニがメインの夕食が待っていた。

海鮮料理を堪能した後、ウトウの帰巣を見るツアーに参加する。午前中ウミガラスを見た赤岩展望台へ車で向かう。ウトウは、全体的に薄い黒色で、オレンジ色の嘴が特徴なのだが、日没になるとヒナのために小魚をくわえた親鳥が断崖絶壁にある巣穴へ一斉に帰って来るという。辺りが暗くなったと思った途端に海の方から低空飛行でこちらに次々飛んで来る習性には驚いた。しばらく見ていたが、餌をくわえている姿を見ることができなかったのは少し残念だった。ウトウの数は年々減っているという。それでも、ツアーのために巣の周辺にLEDランプが置かれて、地面にいるヒナと親鳥が見えたのでホッとした。
焼尻島
翌朝再び船に乗って焼尻島へ向かう。島に着くとフェリー乗り場のおじちゃんが声をかけてくれた。荷物を預けて島の内側を歩くコースを教えてもらう。オンコという背が低く横に広がった木の群生を見た。森を抜けると牧場が見えた。顔と足が黒くて胴は白い羊たちは本当に愛らしかった。

「お店が開いていたら絶対食べるべき!」と言われていたので、牧場は一旦忘れてありがたくサフォークをいただくことにした。臭みなど全くなく焼き上がりに塩をふるだけで本当に美味しかった。

利尻富士とサロベツ湿原
羊を堪能した後は船で羽幌に戻り、ひたすら北へ向かってドライブした。左手に少しずつ雲の位置や形を変える利尻富士を見ながら海沿いをひたすら走った。夕日が美しい天塩の温泉ホテルに宿泊。海水由来のため、ほんのりアンモニア臭がして塩分もある珍しい温泉だ。身体に良いらしく近隣住民や自衛隊の方々も温泉のみの利用に来ていた。

サロベツ湿原
朝一番にサロベツ湿原へ行った。実は前日、天塩のホテルに到着する前に下見のため寄ったのだが、誰もいない木道を先に歩いていた友人が、「ガサガサと音がしたよ。間違いなく熊だ。」と慌てて戻ってきた。”危うきに近寄らず”と早々に退散したのだった。出直した朝は、熊の気配など全くなくゆっくり木道を散歩する。利尻富士はこの日も我々に美しい姿を見せてくれた。エゾカンゾウやカキツバタなどの花や鳥の鳴き声全てが美しく、晴れ渡る青い空は爽やかで本当に気持ちがよかった。

友人が計画してくれた4泊5日の秘境旅は、心も身体も浄化された旅だった。目にした大自然の景色は全てが美しく記憶に残った。天売、焼尻の島は、海、森、丘、鳥、木々、花々、それぞれ違った趣があって楽しかった。手つかずの美しい自然がいつまでも変わらないことを願う。
「北海道の道なら誰でも運転できるよ」と言われ、少しだけ運転を手伝った。信号も無い真っ直ぐな道のドライブは気分爽快だった。BTSのニューアルバムを1枚持参して2日間で20回以上はリピートしたからでもある。セイコーマートは何軒寄っても魅力的で沢山買い物した。友人宅で食べた山菜は美味しくてお土産に持ち帰った。なぜか帽子に残った微かなアンモニア臭も全てが良い思い出だ。
