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一人暮らしの部屋、姉つき

ピンポーン

静かな東京の部屋にやけに元気なインターホンの音が響いた

○○はソファでスマホをいじりながら眉をひそめる


○○:...誰だよ、日曜の昼に

モニターを見る

そこに映っていたのは__

見覚えしかない顔だった

茶色の髪、ぱっちりした目、満面の笑み



唯衣:○○~、来たで~開けて~

○○:...は?

モニター越しでもわかるくらいテンションの高さ

○○はゆっくり歩き、玄関を開けた

ガチャ

唯衣:邪魔すんで~!

○○:邪魔すんなら帰って~

唯衣:おっけー、ほなまたな~

くるっと本当に踵を返す

○○は無表情でドアを閉め、鍵をかける


カチャン



__ピンポーン


○○:......

モニターを見る

唯衣がじーっとカメラを覗き込んでいる

唯衣:ホンマに閉めるやつおるか?

○○:なんの用ですか?

唯衣:冷たぁ!お姉ちゃんやで!?

○○:知ってる

唯衣:せっかく来たんやで!?

○○:だから何だよ

唯衣:照れんでもええって!

○○:警察呼ぶぞ

唯衣はぷくっと頬を膨らませる

唯衣:はよ開けて。寒いねん

○○はため息をつき、もう一度ドアを開けた

○○:...五分だけな

唯衣:やったぁ!

そう言って勢いよく飛びついてくる

○○:ちょ、抱きつくな!

唯衣:ええやん~!弟やろ~!

○○:関係ねーだろ

唯衣:好きやもん~!

○○:はいはい



とことん塩


それでも姉である唯衣は満面の笑みだった

部屋に入ると唯衣はくるくると見渡す

唯衣:うわー!東京の男の一人暮らしや~!

○○:滋賀にいても同じだろ

唯衣:狭っ

○○:帰れ

唯衣:冗談やって!



スタスタとキッチンに行き、冷蔵庫を開ける

○○:勝手に開けるな

唯衣:うわっ、ちゃんと自炊してるやん!

唯衣:偉い!さすがうちの弟!

○○:別に普通だろ

唯衣:誰に教わったん?

○○:ネットだけど

唯衣:お姉ちゃんの愛情のこもったレシピちゃうん?

○○:そんなの知らん

唯衣は後ろからぎゅと抱きつく

唯衣:冷たいなぁ~

唯衣:○○、小さい頃は「お姉ちゃん~」って泣きながらついてきたのに~

○○:その話やめろ

唯衣:公園で迷子になってな~

○○:やめろって

唯衣:「お姉ちゃんどこぉ」って大号泣やったもんな

○○:...帰れ

唯衣:照れてる~

○○は耳が赤い

唯衣はそれを見逃さない

唯衣:可愛いなぁ、ほんま

○○:うるさい


少しの沈黙



○○:...で、何しに来たの

唯衣:ん?○○に会いに来た

○○は眉をひそめる

○○:それだけ?

唯衣:それだけで十分やろ

○○:....

唯衣:寂しかったんやもん

ふっと声のトーンが落ちる

唯衣:滋賀の実家、静かすぎて

唯衣:あんたがおらんくなってから、つまらん

○○は視線を逸らす

○○:...俺は静かで快適だけど

唯衣:うわ最低

○○:本当のことだし

唯衣:でもな、電話も出てくれへんし

○○:忙しいし

唯衣:既読スルーやし

○○:寝てた

唯衣:三日間も?

○○:...

唯衣はじっと○○を見る

唯衣:お姉ちゃんのこと、嫌い?

○○:嫌いなら入れてないよ

唯衣:...!

唯衣の顔がぱあっと明るくなる

唯衣:好きやん!

○○:うるせーなぁ

唯衣は満足そうに笑う





その後、二人でスーパーに行き、帰ってきて、なぜか唯衣がキッチンに立つ

唯衣:今日はお姉ちゃんが作ったるわ!

○○:いらない

唯衣:遠慮せんでええって!

○○:遠慮じゃないって

唯衣:お姉ちゃんの愛情入りやで?

○○:それが一番怖い



それでも出来上がったのは意外にもちゃんとした肉じゃがと味噌汁だった

唯衣:どうや!

○○:...うまい

唯衣:せやろ~!

ガッツポーズ

唯衣:もっと褒めて?

○○:普通

唯衣:もっと!

○○:...実家いた頃よりは上達してる

唯衣:それ褒めてる!?

二人で笑う




夜になり、唯衣はソファに寝転がる

唯衣:東京の夜景もええなぁ

○○:ベランダからちょっと見えるだけだろ

唯衣:でも○○の家から見えるってだけで特別や

○○:...

唯衣:なぁ

○○:何

唯衣:○○、彼女おるん?

○○:いないよ

唯衣:よかったぁ

○○:何が

唯衣:取られたら困るやん

○○:...姉だろ

唯衣:姉だけどぉ!

むくっと起き上がる

唯衣:一番はお姉ちゃんやろ?

○○:違う

唯衣:即答!?

○○:一番は将来の彼女

唯衣:ショックや~!

わざとらしく胸を押さえる

唯衣:ほな今は?

○○:...今は別に

唯衣:別にって何!

○○:...家族は家族

唯衣は少しだけ優しく笑う

唯衣:それでええわ




時間が過ぎていく

時計は深夜

唯衣は急に立ち上がった

唯衣:よし、決めた!

○○:何を

唯衣:ここに住むから

○○:は?

唯衣:向こうでの仕事辞めてきたし

○○:...は?

唯衣:荷物、もうすぐ届くし

○○:はぁ!?

インターホンが鳴る

ピンポーン

唯衣:ほら来た

○○:嘘だろ

唯衣:お姉ちゃん、○○と住む♡

○○:勝手に決めるな!

唯衣:ええやん!家賃半分出す!

○○:狭いって!

唯衣:くっつけばええやん!

○○:そういう問題じゃないって!

唯衣はにっこり笑う

唯衣:○○、寂しかったやろ?

○○:....

唯衣:ほんまは嬉しいんやろ?

○○:...うるさい

唯衣:顔赤いで?

○○:気のせい

唯衣は○○の腕にぎゅっと抱きつく

唯衣:これから毎日会えるな

○○:...もう勝手にしろ

唯衣:それ許可やんな?

○○:違う

唯衣:よっしゃ!


玄関のチャイムがもう一度鳴る

二人は顔を見合わせる

唯衣:同居初日やな

○○:...最悪だ

唯衣:最高やろ?

○○は小さくため息をつく

でもその口元は、ほんの少しだけ緩んでいた

○○:...本当に邪魔するなら帰れよ

唯衣:帰らへんでぇ~!

騒がしい東京の夜

静かだったはずの部屋は、もう静かじゃない

でも__

それも悪くないと○○は思ってしまっていた


おわり

※作品の全てはフィクションであり実在する名前、団体等現実には一切関係ありません


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