トランクに家鴨

机の奥でたいせつに飼っていた画用紙に少女の手で幾重にも連ねられた蛍光色をしたハートマークは、今に将棋倒し騒ぎを起し、嗅ぎ付けた魔女が紙を濡らす滴を集めに来るだろう。恋文の相手だなんて二十と一年ぶりだよと笑う紙袋は底が抜けて、空騒ぎをする草花たちの恰好の餌食だ。

店終いの看板を昼夜立て続けていたなら、少しは引込み思案な靴も笑えただろう。キーボードの上でサーファーの真似をする蜘蛛は本当は何になりたかったのだろうかと、虫眼鏡を慎重に通して首を捻ったって学校指定のノートの表紙写真にゃ敵わない。升目に沿って、ケ・セラ・セラ。寄り目になって、見・てよ・ほら。

航空機が空を切る音なのだと決め付けて疑いもしないのはどうして。きな臭さが火の元にあるのだと疑わないのはどうして。夏の暑さが人類の失敗ゆえだと疑わないのはどうして。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
所謂ところの〝壊れたレコード、又は蓄音機〟を猿真似したくって謝意を重ねるにも予測変換はちゃあんと烟をタシナめているらしい。

白い花の生首をクリームに沈めて愛玩動物の餌に混ぜた。そういえば、エーデルワイスがどんな花なのか、知ろうともしないまんまだ。