まものだもの
秘密のノートに掛けておいた鍵が削れてしまうから、本日も株価は低迷する。先日に地域の催しで配られた綺麗な包みをほどくと、中には手のひらに隠せる大きさであるレプリカの太陽が入っていた。何の目的があるでもなしに窓からの光に透かしてみれば、そいつの内部では細い血管が脈脈と蠢いているのが分かった。呼んでもいないのにテレビの枠を跨いだ猿が白衣を引き摺りやってきて、贋作の此れだと生態がどうのと唸り始めるので、目覚まし時計にそうするよう、拳を頭に振り下ろして黙らせた。アコーディオンみたいに畳まれたら其れ以上に何が歌えようか。
ロー・ファイ・ミュージックの泉で顔を洗うと翼の生えた靴が宿るのだけれど、いつまでも操作が覚えられないので間も無く頭から空に向かっては地面に叩きつけられる有様だった。ヤイ、其処のお兄さん、と間抜けな反復に声を掛けて来たのは鴉の郵便局員だった。七〇年代のあの制服を着ていたからそうと見做しただけではあるが、彼にはばつの悪いまま交わした嘗ての古い約束を和封筒に分厚く詰めたものを渡しておいた。宛先不明で手元に舞い戻るのは承知の上。満足そうに羽搏いていった姿の尾羽を目で追う頃には、本物の夕陽が遠くでにやついていた。
