幻聴の天使・キコエル
仔山羊のスケッチをするべく買った高級な絵筆を野菜たっぷりのポトフに詰め、花鳥庭園への寄贈物としたい。人参と玉葱を人肌温度に調整したミルク瓶に詰め、はたと気付く。壁掛時計の盤がすっかり高校課程の数式に囲まれている。解答が元あるべき文字に結びついているようだ。サルバドール・ダリ作〝記憶の固執〟の様になれば実に素敵だなと、此れもポトフ鍋に放り込んだ。ぐつぐつ、ことこと、おいしくうつくしくできるかな。
手足を投げ出した磁石は、悲喜交交に翳して善意を集める為に作られた。虫眼鏡の溝に沢山溜めたら、街の郵便局で買った記念切手の裏に散らして、四年前に事故死したらしいと云う噂しか聞かない幼馴染へ手紙を書こう。勿論、赤黒いフェットチーネを愛の証しに忍ばせて。
昨晩ぺろりと抱き込んだギターの刻み方は具合がよろしくなかったらしく、今朝から派手に腹を下している。昼食後には処方薬達と、不安時頓服のお薬と、整腸剤と鎮痛剤と、軟膏と絆創膏と、後は何だったろうな、兎角、今の自分は薬局に一番近い存在だと胸を張れる。序でだから歯や肌にも気を遣い、お菓子も沢山抱えて、大通りを左に曲った所に在る常常世話になっているドラッグ・ストアに求婚に行ってやるとしようか。
