ナイロン・ガール
今朝から眩暈があって、洗面所の鏡を見たら随分と窶れた自分の表情と寝癖髪……の上に、小さな雲が居た。仔猫の様にもこもことして、何処かを膨らませたり凹ませたりと最小限の行動を見せる。食糧を求めている気がしたが手元の口に出来そうな物というと歯磨き粉しかなく、少し絞って与えてみると忽ちなくなって、雲はというと嬉しげに二、三跳ねるみたいにして、すうと姿を消してしまった。
妙な体験をし、晴れない夢だとして冷水で洗顔をしたが、変わりはなさそうだ。眩暈が軽くなったような気はしないでもない。だが、部屋に戻ると、寝具の上では、布団圧縮用に似た大きな透明の袋に双眸を閉ざした裸の少女が詰まっていた。精巧な人形か、違うのだか、判りはしなかったが、美しいだとか感受性の働きよりも不調が主張していたので、一先ずベッドから転がし落とし、床にお眠り頂くことにした。
倦怠感のまんま横になり、目を瞑って動かずにいて何時間が過ぎたろう。秒単位で数えた方が早いのだろうか。不意に、カサ、と背側から鳴り、寝返りを打ってみると下ろした筈の少女は袋ごと忽然と消えていた。ただ、代わりに、紙切れが居た。目を凝らしてみる。汚い文字で、ただ、〝うそつき〟と、書き残されていた。
