”いつか貯まるだろう” はムリ! 知識無くしてはお金は増えない [第3回] (noteマネー採用記事)
私はこれまで、医学の勉強に人生の多くの時間を捧げてきました。しかし、恥ずかしながら「お金」について学ぼうと思ったことは、一度もありませんでした。特に若い頃は、たくさん稼いで、後先の事を考えずに浪費することで、仕事のストレスを発散している面もあったかもしれません。今になって振り返ると、大したストレスでもなかった気がしますが、その頃はそれが格好良いと思っていました。
そんな習慣は簡単に治るものではなく、私は誘われるがままに飲みに行き、深夜にタクシーで帰宅するような生活を当たり前のように送っていました。子供の塾代など大きな出費が重なりそうな時は、当直の回数を増やすことでその場を凌ぐ。お金が底をつくことはないものの、貯金が増えることもない。そんな、綱渡りのような、それでいて危機感のない日々を過ごしていました。
「空白の時間」が突きつけた、家計の現実
転機となったのは、コロナ禍でした。 飲みに行くこともできず、仕事さえ制限される「空白の時間」が続くなかで、私は嫌でも自分の将来と向き合わざるを得なくなりました。そして、ずっと目を逸らし続けていた「家計の見直し」に、ついに着手することを決めたのです。
当時の私は、恥ずかしいことに「稼いだ分から、使った後に残った分を貯めておく」こと以外に、お金を増やす方法があることすら知りませんでした。
『金持ち父さん』とYouTubeでの学び
勉強といっても何から始めて良いかわからない私は、まず一冊の本を手に取りました。ベストセラーの『金持ち父さん 貧乏父さん』です。そこで初めて「投資」という概念を知り、お金に働いてもらう仕組みがあることに大きな衝撃を受けました。
そんな時、YouTubeで出会ったのが「リベラルアーツ大学」の両学長でした。 そこで説かれていたのは、まず固定費を見直し、浮いたお金を「インデックス投資」に回すという明快なステップでした。医学の世界ではエビデンスを重視しますが、インデックス投資の「長期・分散・低コスト」という考え方は、論理的で私にとって非常に納得感のあるものでした。
飲み代の6万円を、未来への投資に変える
そこからは地道な改善を積み重ねました。携帯電話やカードを楽天に集約し、当時はまだ「新NISA」が始まる前でしたので、まずは「つみたてNISA」の枠を利用することから始めました。
投資先は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と「S&P500」に半分ずつ決めました。最初は「どうせ今まで飲み代に消えていた分だ」と考え、毎月6万円からスタート。その後、8万、10万と段階的に増やしていきました。
ドルコスト平均法の本当の良さは、投資額が大きくなるにつれて増していく「値動きの幅」に対し、自分自身が耐えられるように「教育」されていくことにあるのだと気づきました。最初は5千円減るだけで不安でしたが、3年が経つ頃、私の資産には大きな変化が起きていました。
運用益100万円の感動と、臨床に通ずるエビデンス
積立を始めて3年、投資益は100万円を超えました。 自分の労働以外でこれだけの資産が増えた時の感動は今でも忘れられません。この頃には携帯電話代はポイントで賄われ、月の運用益は平均4万円ほどになっていました。「毎日の昼食代が実質タダになっている」という実感が、何よりの自信になりました。
また、YouTubeチャンネル「ナスビのマネー講座」で知ったポートフォリオ戦略を取り入れ、現金、株式、債券の比率を一定に保つ規律を身につけました。
さらに、過去のデータから「S&P500を15年以上保有すると、プラスの収益になる確率は95%である」という事実を知ったことは大きな支えになりました。
私たち医師は、日々、臨床試験の結果をもとに患者さんに治療の成功確率や生存率を伝え、納得していただいた上で治療に臨みます。しかし、一人の患者さんにとってその治療を試すチャンスは「たった1回」きりです。
その一方で、ドルコスト平均法による積立投資は、15年間で180回もリスクを分散し、たとえその間に暴落があっても元本割れしない確率が95%だと証明されている。
患者さんには「たった1回」きりの治療の可能性に懸けるよう説明しながら、自分自身がこの「180回に分散された95%のデータ」を信じないのは、あまりに不自然ではないか。
この考えに至ったとき、私の中で「医学」と「投資」が、エビデンスという一本の線で繋がったのです。50歳から始めた私でも、70歳までの20年間、240回もの分散があれば、資産がマイナスになることはほぼないだろうと、理屈で信じられるようになりました。
このように、お金についての知識を蓄積し、時間をかけて経験を重ねることで資産は順調に拡大し始めました。さらに、資産形成の過程で分かったことは、投資に対する考え方やリスクの受け止め方などは、そのまま人生に応用できる事が多い、という事でした。人生において大きなリターンを得るためには、リスクを負って時間を価値のある事に割り振らなければならないが、適切なリスクコントロールが重要だ、という学びを得る事ができました。
また、将来の生活に対しての不安が減ることで、より主体的な選択をできるようになりました。
積立投資を始めた人の多くが、人生が変わった、と言われている記事などを目にしますが、本当にそうだと思います。
忍び寄る「私立医学部」という巨大な壁
今の世の中では健康寿命が延びており、特に医師免許という特殊資格を持った医師は70歳を超えるまで働くのが当たり前になりつつあります。実際、医局を定年退職した大先輩方の中には、80歳を超えても働いている強者もいます。
「このまま70歳まで働き、少しずつでも積立を続ければ、老後の生活資金は確保できるのではないか」
そんな希望が見え始めた頃でした。しかし、時を同じくして、二人の息子のうち一人が医学部を目指して浪人することが決まりました。
もし、1年後の受験で私立の医学部に進学することになったら……?
その時の私には、まだ想像が及んでいませんでした。インデックス投資の順調な推移だけでは到底太刀打ちできない、私立医学部の学費という「巨大な壁」の本当の高さに、まだ気づいていなかったのです。

