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決戦への切符 〜予想通りの一騎打ちと、次なる一手〜 [第12回]


プロフェッショナルの友人と数ヶ月にわたり練り上げ、幾度となくリハーサルを繰り返したプレゼンテーション。いよいよ、その真価が問われる第1次選考の日がやってきました。

相手は、私の未来の運命を握る選考委員の教授陣です。私に与えられた持ち時間は、25分のプレゼンテーションと、20分の質疑応答でした。

本番の空気は独特の緊張感に包まれていましたが、反復練習の成果もあり、私は比較的冷静でした。用意してきたメッセージを、しっかりと伝えきることができたのです。

想定問答が活きた、20分の質疑応答

続く20分の質疑応答も、基本的には和やかな雰囲気の中で進みました。私の「臨床力」やマネジメントの実績については、非常にポジティブな評価を得られている手応えがありました。

しかし、予想通り、基礎医学系の教授から鋭い矢が飛んできました。

「あなたの臨床やマネジメントの実績は素晴らしい。しかし、医局全体の研究を牽引していくには、力が足りないのではないか?」

この「想定の範囲内」の質問に対し、私は慌てることなく、準備していた通りの返答をしました。

「ご指摘の通りかもしれません。しかし、組織のすべてを私一人が完璧にこなす必要はないと考えています。私自身も当然研究に関与しますが、医局全体の研究の牽引については、私よりも研究に秀でた優秀な人材を『研究責任者』として別に配置します。適材適所で強固な組織を作るのが、私のマネジメントです」

自分は万能ではないが、組織として機能していれば心配は不要である、というスタンスを示しました。
発表を終えた瞬間、「やれることはすべて出し切った」という深い満足感がありました。

確信と感動、そして予想通りの「一騎打ち」

結果は、約3週間後に郵送で届きました。封筒を開けると、そこには**「最終候補者に残った」**という事実が記されていました。この通知をもって、私は複数の候補者の中から、最終決戦となる最後の2人に残ったという事を理解しました。

もう1人の名前は書かれていませんでしたが、それが誰であるかはわかっていました。教授になることを目指し、長きにわたり研究業績を重ねてきた「本命候補者」です。

私は初めから、この教授選は「彼と私の戦い」だと捉え、彼に勝つためには何をすべきかという戦略を練ってきました。自分と彼の違いを考え抜き、「教授を目指さなかった」強みを最大限にアピールして投票に繋げる事を目指してきました。そして、この結果を知った瞬間、これまで信じて進めてきた方向性が完全に正しかったのだと確信しました。

何ヶ月もかけて作り上げたプレゼンテーションが、選考委員の教授陣の心に届き、響いたのだと実感できた時、胸の奥から熱いものがこみ上げ、本当に感動しました。

作戦が完全に花開き、見事に「従来の実績主義(本命)」vs「未来の組織変革(私)」という、思惑通りの一騎打ちに持ち込むことができたのです。

最終決戦へ向けた「次なる一手」

最終プレゼンテーションは、約1ヶ月後。今度は、すべての教授の前で行う25分のプレゼンです。そして、質疑応答はありません。

この1ヶ月をどう過ごすか。作りあげたプレゼンテーションにさらに磨きをかけるか。また、内容を変更する、という選択肢もありました。

私には、大きなヒントがありました。第1次選考を終えた後、周囲の空気感や選考委員からの断片的なフィードバックを総合すると、どうやら教授陣は「現場のリアルな問題と、その解決策」に対して、並々ならぬ関心と危機感を持っているようだと察知したのです。

これを受けて、私は聞き手の興味をいっそう掻き立てるために、これらの内容を追加する事にしました。

さらに、ダークホースである私が本命に勝つために、最後の勝負に出る覚悟を固めました。「現状の課題点」にメスを入れることは、これまでの体制を否定することにも繋がりかねない、非常に勇気のいる行為です。お世話になった恩師も見ている前でそれを行うのは多大なプレッシャーでしたが、未来の組織を良くするためには、そして本命候補との明確な差別化を打ち出すためには、そこから目を背けるわけにはいきませんでした。

その一方で、質疑応答がない事は、自分に味方をしているとも感じました。

大幅に内容を増やしながら、前回と同じ時間内に収めるため、私は前回をさらに上回る熱量で、新しいシナリオの反復練習へと没入していきました。

(第13回へ続く)



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