【14話】13年目の独り立ち。1LDKを「私の居場所」に変えていく、静かな決意。
夫がいなくなった1LDKは、驚くほど静かでした。
でもその静けさは、かつて感じていた「冷たい沈黙」ではなく、どこか穏やかで優しいものでした。
私はまず、空いた収納スペースを埋めるように大掃除を始めました。
これまでは、夫の趣味ではないからと仕舞い込んでいたバンドのグッズ、飾りたくても飾れなかったお気に入り。
それらを思うがまま、自分の好きな場所に並べていく。
部屋が少しずつ自分の色に染まっていくのを見ていると、気が紛れるだけでなく、心が整っていくのが分かりました。
夫がいた頃は、どれだけ片付けても部屋が散らかっていました。
脱ぎっぱなしの服、使いっぱなしのコップ……。
でも今は、私がきれいにした場所は、そのままの姿で私を待っていてくれます。
「あぁ、自由なんだ」
そう実感するのは、何気ない瞬間の積み重ねです。
好きな時間にお風呂に入り、深夜でもドライヤーの音を気にせず髪を乾かせる。
自分のためだけに1人分の料理を作り、もし作りすぎてしまっても「明日も同じものを楽しもう」と思える気楽さ。
職場の友達とご飯に行く時だって、「夫の夕食を用意しなきゃ」という強迫観念に追いかけられることはもうありません。
13年間、当たり前にあった「息苦しさ」が、時間とともに少しずつ消えていく。
一人暮らしのわくわくを、今の私は純粋に楽しめるようになっていました。
何者でもない、ただの私に戻っていく時間。
この部屋は今、世界で一番、私が呼吸しやすい場所になっています。
そして、来週。
新しくなった私で、彼に会いに行く約束をしました。
ようやく手にした自分だけの時間と、この大切な空間。
それらをゆっくりと噛み締めながら、今の自分が一番好きだと思える服をクローゼットから選んでいます。
誰の目も気にせず、誰の夕飯も気にせず、ただ自分の心に従って「会いに行く」と言える。
そんな当たり前の幸せに向かって、私は一歩を踏み出そうとしています。
