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【22話】高鳴る予感。鏡の中の自分と、拭えない小さな「疑問」。

7歳下の彼と初めて会ったあの日から、彼から電話がかかってくることが増えました。
以前の恋のように、四六時中スマホに縛られて自分を見失うような、あの独特の重苦しさはそこにはありません。日々の隙間にふと差し込まれる彼の声は、今の私の日常に心地よいリズムを作っていました。
ただ、会話の中でふと頭をよぎる小さな疑問がありました。
「仕事をしている」とは言っているけれど、彼からはあまりその忙しさや生活感が伝わってこないのです。「よく仕事で東京に行く」とは口にしていたけれど、その実態はどこか掴みどころがありません。
(あまり深く追求して、今のこの楽しい関係を壊す必要もないかな……)
そう自分に言い聞かせ、私はあえてその違和感の正体を探ることはしませんでした。
今はただ、近づいてくる「ライブ当日」のことだけを考えていたかったのです。
■自分への「気合」と、整える心
ライブを数日後に控えた仕事帰り、私は美容院へと向かいました。
前の恋でボロボロになり、自分を蔑ろにしていたあの頃。そんな自分を脱ぎ捨てるように、丁寧にカットとカラーをお願いしました。
鏡の中に映る髪が整っていくたびに、自分の中の「軸」がカチッと戻ってくるような感覚。
前日の夜には、自分で新しいネイルを施し、参戦服や持ち物を一つひとつ確認しました。
この準備の時間こそが、ライブという非日常へ向かうための大切な儀式。
「よし、準備は完璧」
明日、ようやくあの大好きなバンドの音楽に、全身で浸ることができる。
■非日常への「着替え」
ライブ当日は平日でした。
一緒に行く職場の友達と合わせて半休を取り、午前中の業務を猛スピードで片付けます。
「じゃあ、お先に失礼します!」
職場を後にする前、私はトイレの鏡の前で着替えを済ませました。
地味なオフィスカジュアルから、大好きなバンドのTシャツ、そして一番自分らしく、ライブを全力で楽しめる服へ。
日常という重荷を脱ぎ捨てて、私は「一人のファン」へと戻っていく。
会場へ向かう前に立ち寄ったカフェ。
コーヒーを飲みながら、時計の針が進むのを待つ時間は、音楽への期待と、静かな高揚感で満ちていました。
あの日、恋に落ち、そして深く傷ついた「ライブ」という場所。
会場こそ違えど、私はまたあの熱狂の中へ戻ろうとしていました。
でも、今の私はあの頃とは違う。
最高に仕上がった自分を携えて、私は再び、その一歩を踏み出そうとしていました。

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