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【18話】一人暮らしに吹く新しい風。共通の趣味と、1通のリプライ。

彼との別れから少しずつ時間が経ち、私は一人での生活にもようやく慣れ始めていました。
あの息が詰まるような絶望感は、いつの間にか日常という波に飲み込まれ、穏やかな凪(なぎ)へと変わっていきました。
そんな私の心を救ってくれたのは、大好きな音楽と、SNSを通じて増えていった新しい仲間たちでした。
好きなバンドを通じて繋がった仲間たちは、18歳の女の子や6歳下の男の子たち。年齢も、住んでいる場所も、普段の生活もバラバラ。それでも、
「次のライブ、みんなでチケット協力して当てよう!」
そんな一言で、日本各地に散らばる仲間たちと心が一つになる。
これまでの私の世界は、夫や彼といった「特定の誰か」に執着することで成り立っていました。でも、「共通の『好き』という気持ちだけで、こんなにも深く、純粋に繋がれる」。
その事実は、当時の私にとって震えるほどの感動でした。
住んでいる場所が遠く離れていても、同じ音に胸を熱くする仲間がいる。それは、孤独を恐れていた私に「独りじゃない」という新しい安心感をくれました。SNSという場所が、ただの暇つぶしではなく、温かな居場所に変わった瞬間でした。
そんなある日のこと。
SNSを眺めていると、相互フォローしていた7歳年下の男の子が投稿した、一羽の「桜文鳥」の写真に目が止まりました。
小鳥が大好きな私は、吸い寄せられるように「可愛いですね。昔、実家で飼っていたんです」とリプライを送りました。
するとすぐに彼から返信があり、そこから小鳥の話で一気に意気投合。私たちはDMからLINEへと場所を移し、会話を深めていきました。
彼は7歳年下でしたが、驚くほど聞き上手でした。
誰にも言えずに抱え込んでいた、あの10歳下の彼との苦い恋の記憶。そして、どうしようもなく傷ついたあの夜のこと。
彼になら話せる気がして、私は少しずつ、心の奥底に溜まって誰にも言えなかった想いを吐き出していきました。
「色んな会場のライブに行ってるんだ。次、同じ場所に応募してるし、会えたら会おうよ」
彼との会話は軽やかで、傷ついた心を優しく包んでくれるようでした。
住んでいる場所は違っても、また新しい仲間が増えたことが、純粋に嬉しかったのを覚えています。
そして迎えた、ライブの当落発表。
倍率が高く諦めかけていましたが、見事に2日間とも当選!
各地の仲間たちや、最近知り合った彼もそれぞれ当選していました。彼はファンクラブに何名義も入っているほどの熱烈なファンで、余裕で当てたそうです。
私は職場の友人を誘い、久しぶりの「本気で楽しむ予定」をカレンダーに書き込みました。
一人での生活には、もう何の不自由も感じなくなっていました。
自分の好きな時に起き、好きな音楽を聴き、好きな人たちと繋がる。
夫に気を遣うことも、前の彼の通知に一喜一憂することもない、穏やかな自由。
けれど、楽しい予定が埋まっていく一方で、心のどこかにずっと残っている「気がかり」がありました。
(……夫との今後、どうしようかな)
久しぶりに再会した夫から突きつけられた、あまりに情けない現実。
結局、離れていても私はまだ彼に振り回され、甘い顔を見せてしまっている。
新しい風が吹き始めたからこそ、向き合わなければならない「夫婦の現実」の重さが、じわりと胸を締め付けていました。

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