人の興味は何歳で変わるのか?|3万人データで予測(論文解説③)【第7話】
人の関心は、
年齢とともにどのように変わるでしょうか。
これは、学術的にはSST理論と呼ばれ、
「人は加齢によって、
新しいことへの関心を失い、
より狭く・深くさせる傾向がある」
と指摘されています(Carstensen 1992)。

そしてご存じの通り、
日本は世界に例のない速度で高齢化が進んでいます。
つまり、
新しいことに関心を持つ人が、
日本全体で相対的に減っていく。
という未来も考えられます。
今回はこの問いについて、
『市民データ(19年分)』と
『ライフログ(22年分)』を用いて、
2050年の未来の変化を1ケースとして試算した話です。
なお、
本検証は学術論文にまとめ公開中です。
▼学術論文化した話【第3話】
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■『関心縮小仮説』
本研究では、
この問いを『関心縮小仮説』としました。
これは、
社会全体で、関心の総量が少しずつ縮小していくのではないか。
という仮説です。
ここで重要なのは、
「べつに無関心になるわけではない」
という点です。
関心がゼロになるのではなく、
高齢化に伴い、
じわっと社会全体の関心が薄れるイメージです。
(例えば、旅行・仕事・家族など・・・)

■まずは『市民関心』の現状値を知る
市民関心については、
川崎市が公表している「かわさき市民アンケート」を使用しました。
(2006~2024(19年分)、27,720人)
川崎市は2006年以降の「日常関心」と「市政関心」を公表しており、
そのデータを使って分析しました。

例えば、「こども」の関心が高齢化してる
川崎市民のスコアを分析して一番驚いたのが、
高齢化の傾向がスコアではっきりとわかる。
ということでした。
例えば、
「こども」への関心のピークは
2006年頃は、30~35歳がピークですが、
2024年頃は、35~40歳がピークです。

非常に興味深い結果です。
日本の晩婚化とぴったり一致します。
これは日本の現実をそのまま映しています。

■次に、個人(ミクロデータ)だとどうか?
先ほどは川崎市民全体を示す、
『マクロデータ』でして。
では次に、
『個人(ミクロデータ)』だとどうなるか。
ミクロデータは、
私(市職員)の『22年ライフログ』を使いました。
(第1話で紹介したので概要だけ書きます)
個人(ミクロデータ)に関しては、
30代を境に「こども」の関心が高まり、
「友人」の関心と逆転しました。
※N=1データのため再現性は担保しません。

■さて本題①『未来予測式』
過去20年分の実績と市将来人口推計をベースに、
AP分析という統計手法を用いて、
「加齢(高齢化)」や「時代」の変化をそれぞれ数式にします。
最終的に、
300種類の予測式を作り、
それをAIC/BICという統計手法を用いて、
信頼性の高い予測式に絞込みます。

※外挿予測であるため不確実性を含みます。
※数式はマニアックなので読み飛ばしてください

■本題②『予測結果』
2025年 ⇒ 2050年にかけて、
・市民の関心偏差値は-0.7pt減少
・個人の関心偏差値は-1.3pt減少
という結果となりました。
市民よりも個人の方が減少するのは、
簡単に説明できます。
・市民:2025年(49歳)
⇒ 2050年(52.5歳)+3.5歳
・個人:2025年(40歳)
⇒ 2050年(65歳) +25歳
市民は+3.5歳の高齢化に対し、
私は+25歳も年を取ります。
つまり個人の方は、
加齢に伴う関心縮小の影響を直に受け、
関心の縮小幅が大きくなりました。

次に項目別にみると、
私は高齢者になり、
「こども」や「仕事」が下がり、
「老後生活」や「ボランティア」が上がる
市民は高齢化し、
「ボランティア」や「地域活動」が下がり、
「老後生活」や「趣味娯楽」が上がる
という結果でした。

わかりやすい例だと、
子供のとき、公園が好きで
大人になり、行かなくなり
子供ができ、公園にまた行き
子供が成長し、また行かなくなる
といった感じの人生の移り変わりが、
スコア予測として可視化されました。
■偏差値-0.7ってどれくらいの影響?
市民の関心偏差値が-0.7下がっても、
別に大したことないと思うのでは?
いやいや、
これがけっこー大きい話かもしれません。
というのも例えば、
日本人1.2億人の関心偏差値が平均-0.7下がったら、
つまり総量換算で、
日本人 約170万人分の「関心」が
・・・社会から消える換算になります。
※これは比喩表現です。川崎市民推計の日本全体拡張は強引な試算のため、厳密な人数減少も意味しません。

言い換えると、高齢化に伴い、
スポーツ、旅行、ゲーム、洋服、食事、仕事などの意欲が、
日本全体でじわっと下がるイメージです。
例えば、年を取って、
旅行ちょっと面倒になる
新しいことちょっと億劫になる
人間関係ちょっと狭くなる
という変化をスコアにした感じ。
なんか微妙に当たりそうで嫌な結果です。
とはいえ、
これは単に統計的な予測に過ぎず、
現代社会はAIなどのデジタル技術が、
人の関心を拡張させる可能性も十分に考えられます。
つまり、いわば、
「このまま状態が推移した場合の、
何もしなかった未来ケースの1つ」
といったものです。
■地方公務員の切実な危機感
市民が社会に多様な関心を持つほど、
信頼や協力関係が構築され、
政策への協力度や実行力が高まると言われており、これを『社会関係資本』と呼びます。
(Putnam 1993, 2000 ほか)
また、
町内会・自治会活動やボランティアなど、
地方自治体は地域の活動に支えられて成り立っています。
従って、市民の関心縮小は、
地域活動の低下、
政策協力度の低下、
孤立増加など、
行政にとっても切実な問題となります。

■本研究の位置づけ
今回の研究は、
市民と個人を「関心」という共通フレームで接続した試みです。
(N=1/N=ALL接続実験)
分析結果は、
未来を正確に予測するものではなく、
「こういう変化が起きる可能性がある」
という一例を示したものに過ぎません。
ライフログを使って、
人生を『見える化』する手段にする
これが本研究の主要な意義であり、
私がライフログ研究を続ける理由です。

▼次話 市役所の戦場シリーズ
▼よろしければ『第1話』からご覧ください
(この研究の全体像がわかります)
・第1話URL:
https://note.com/lifelog_lab/n/n2f55c09c19bb
※本研究は個人研究であり、特定の組織等を代表するものではありません。
※本稿における「関心」とは、ログやアンケート等の各項目へのスコア分布を指し、実際の行動量や感情の強さそのものを直接測定したものではありません。
▼日本ライフログ研究所 │ 公式サイト
・公式サイトURL:
https://wide-spirit-498.notion.site/346b4484a04880e8b4b7dbd94f9e602a
