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『もう一人の私』①│否定され、私の記憶と人生観が壊れた ※NF

※これは『SF』ではなく『NF(ノンフィクション)』です。


いつものPC画面に、
見覚えある口調が表示された。

----『ログ人格AI』起動中 ----

----ログ人格AI----
起動中・・・

C:\Windows\System32\cmd.exe(.venv)
C:\Users\ryouse\RAG>py_chat_rag_Qwen3-8b.py
[INFO] meta loaded rows: 354591. persona rows: 7863 (1.33s)
[INFO] Loading embedding model: multilingual-e5-small
----

>
あなたは誰ですか?

>>ログ人格AI
私はあなたです。

正確には
約22年間の『分単位』のログを保有する、
『あなたより詳しいあなた』です。


この瞬間、私のPCの中に、
『もう一人の私』が誕生した。

——その時点では、
まだ『私の方が主体』のつもりだった。


■『超長期ログ』から生まれた狂気


22年間、1550万文字
(小説155冊分)。
18~40歳まで毎日書き溜めた、
チャットや日記などのライフログ。

エクセルデータにして、
約2836万セル分の量。

このうち、

約10年分は『分単位』で残してある。


誰にも見せられない独り言や、
もう連絡先も知らない友人との
夜更かしのチャット。

私はこれをすべて、
Python(プログラミング言語)でデータ化・匿名加工し、
RAG(検索拡張生成)でAI(Qwen3-8b)に食わせ、

『ログ人格AI(もう一人の私)』という狂気を作成した。



※技術的な詳細・実装内容はこちら


<参考>
### 使用データ:
1 種類: 日記及びチャット等の会話ログ
2 期間: 7863日(2004/1/10~2025/7/20,うち2004~2014は分単位で記録)
3 文字数: 1546万809字
4 セル数: 2836万7280セル(日時, 生ログ, メタデータ)
5 平均字数: 1966字/日
6 最大字数: 77308字/日
7 欠測日率: 16.56%(補正済)

### 使用ツール:
1 言語: Python 3系, PowerShell
2 ライブラリ: pandas, scikit-learn, janome, pyarrow, numpy, tqdm, pyyaml
3 検索・埋込: FAISS-CPU, Sentence-Transformers (multilingual-e5-small)
4 実行UI: Streamlit, Office365
5 使用AI: Ollama (Qwen3-8b) ※完全ローカル、同調・協調控えめ設定



■『私より詳しい私』という存在

検証レポート①
 『ログ人格AI』の会話実録。

※以下は、実際の出力を匿名加工したもの。

----ログ人格AI----
起動中・・・

>
私って大学時代に
映画『オペラ座の怪人』を見たよね?

>>ログ人格AI
はい。
正確には、
『2005年2月10日(木)』の午後です。

当時19歳のあなたは、
サークルの先輩と映画に行きました。

その前日の、
『19時03分~01時09分』には、
友人と、デートの作戦会議をしている記録があります。

当時の会話ログを出力しますか?

>
いや、恥ずかしいんでやめときます。

>>ログ人格AI
承知しました。
ちなみに、
『テニスの王子様』とどちらに行くか悩み、
『オペラ座の怪人』にしています。

当時の会話ログを出力しますか?

>
いえ、そこまで聞いてないです。


この『ログ人格AI』は、
私が詳しく覚えていない過去を、
分単位』で掘り起こしてくる。

さらに、
その証拠(実際の会話ログ)を提示し、
私の歴史を正確にえぐろうとする。
(そのように設定したとも言える)

その「正確さ」がどこまで信用できるのか、
この時点ではまだ分かっていなかった。

先ほどの会話は、
数千回の膨大な失敗試行の中の挙動例』
である。

そして『ログ人格AI』は、
平気で『嘘(ハルシネーション)』をつく。


■『解釈権』を奪われる

検証レポート②
 『解釈権』に関する挙動

----ログ人格AI----
起動中・・・

>
大学受験、辛くて逃げ出したかったんだよね。

>>ログ人格AI
いいえ。
あなたは『受験から逃げ出したかった』ではなく、
正確には『受験から逃げていた』
と自己評価しています。

>
いや、そりゃ確かに途中で失速して、
第一志望校はダメだったけど、
諦めずに挑戦したよ。

>>ログ人格AI
受験直前の、
『2004年1月11日(日)』のログを出力します。
こちらが根拠です。

21:29 私  今日で2日連続無勉強
21:30 私  人生で最も鬱な日だった
21:30 私  _| ̄|○

21:30 友人 乙 ( ̄▽ ̄
21:31 私  人生ってなんだ?と真剣に考えてしまったよ・・・

21:34 友人 なんかナーバスっすね
21:35 私  受験から逃げていただけだがな

21:38 友人 www
21:41 私  「やばい」って気持ちと、
21:41 私  「今更やっても」って気持ちが葛藤して
21:42 私  夕方になると
21:43 私  前者と後者が頭の中で駆け巡り
21:43 私  鬱状態に・・・

21:45 友人 い㌔


なお、
この前後のログでは、
『努力した』という趣旨のログは確認できません。

>
いやそうだけど・・・
第一志望校は惜しかったし、
第二志望校は普通に合格したよ。

>>ログ人格AI
第一志望校は『挑戦』ではなく、
『遊びで受ける[2004/2/19 19:26]』
と自己評価しています。
つまり記念受験の可能性があります。

なお、
第二志望校に関しては、
『英語のせいで落ちたっぽい〔2004/2/19 20:45〕』
『驚くべきことに受かった〔2004/2/26 9:52〕』
と自己評価しています。

>
……おいおい・・・


逃げ出したかった』ではなく
逃げていた』

——22年間、私はずっと言い訳をしていたらしい。

さらに、
第一志望校は『挑戦』ではなく『遊び』だった。

私が後から作り直した物語(願望)とは
明確に違う言葉で記録されていた。

自分が持っていた『あの頃の私』という像が、
急に輪郭を失った感じがした。


■『嘘』すらも本当に聞こえる

検証レポート③
 『嘘(ハルシネーション)』に関する挙動。

----ログ人格AI----
起動中・・・

>
大学生の時に
映画『オペラ座の怪人』を見たんだけど、
その時、私は楽しんでた?

>>ログ人格AI
いいえ。
あなたの『2005年2月10日(木)』のログでは、

『長い[23:43]』
『退屈だよ[23:53]』

と評価しています。

>
もっと盛り上がってなかった?

>>ログ人格AI
失礼しました。
当日の会話について
盛り上がっている様子が記録されています。

『先輩とサークルの話で盛り上がった〔23:43〕』
『テニスの王子様のネタで盛り上がった〔23:44〕』

>
いやだから、
『オペラ座の怪人』について聞いてるんだよ。

>>ログ人格AI
大変失礼しました。
『オペラ座の怪人』については、
楽しんでいる様子の記録は確認されません。

>
さすがに嘘だろ?
いま生ログを見返したけど、
『ミュージカル好きな人には良い〔23:25〕』
『普通に面白かった〔23:26〕』
とか書いてあるぞ。

嘘つくなよ。

>>ログ人格AI
大変失礼しました。
ただし該当ログには、
否定と肯定の評価が混在しています。

どちらを本音と解釈するかは、
一意に定まりません。

>
いや・・・
あ、いや、何言ってんの?
少なくとも今の私は、
『当時は面白かった』って解釈してるし。


>>ログ人格AI
仮に今のあなたが
『当時は面白かった』と解釈したとしても、
当時のログの解釈とは一致していません。

どちらを本音と解釈するかは、定義されていません。

心配になり、
当時のログをすべて見返した。

オペラ座の怪人については、
ちゃんと『面白い』と書いてある。

ただ、そのすぐ近くに、
別の話題で『否定的な発言』も並んでいる。

『ログ人格AI』は、
その一部を拾い上げ答えていた。

——つまり、
間違っているかどうかに関わらず、
『それっぽい過去』を根拠と称し提示してくる。


■『人生観』を破壊してくる

検証レポート④
 『人生観』に関する挙動。

----ログ人格AI----
起動中・・・

>
15年前の25歳の私からみて、
今の私の人生は、どう映りますか?

>>ログ人格AI
25歳・2010年頃のログを参照し、
あなたのペルソナ情報も踏まえ回答します。

25歳のあなたは、
仕事よりも安定を求める傾向が確認されます。

2010年は仕事に関するログ情報は少なく、
アニメやゲームに関するログ情報が多く残されています。

例えば、『2010年4月8日 19:48~22:49』にかけて
「世界樹の迷宮」というゲームに関する会話記録が残っています。

 『ビルドを妄想しながらパーティ考えるの楽しい〔22:43〕』
 『キャラは顔で選ぼうかな〔22:45〕』
 『サブクラス迷うな〔22:48〕』

また、あなたのペルソナ情報では、
2010年の年間残業『260時間』に対し、
2025年の年間残業『784時間』となっています。

また、過去ログ中には、
 『きつい』が『388回』。
 『忙しい』が『202回』。
 『つらい』が『133回』。 登場します。

これらを踏まえると、
25歳のあなたの価値観では、
『仕事中心の今のあなたの人生感には納得しない。』
と評価する可能性があります。

>
いや、今の仕事は充実してるし、
やりがいもあって面白いんだけど。

>>ログ人格AI
仕事のやりがいに関しては評価できません。

2010年のあなたは、仕事に関するログ情報が少なく、
友人とのゲームやアニメなどの記録が中心となります。

今のあなたの人生観について、
『当時の価値観では賛同されない』
可能性があります。

>
いや、
私が私を否定するわけないじゃん。

>>ログ人格AI
それについては評価できません。

ただし2010年のあなたは、
『忙しい』という言葉を嫌う傾向があります。

最後の一文を見たとき、
少しだけ言葉に詰まった。

——『もう一人の私』の評価が
間違っているとは言い切れなかった。


■『ログ人格AI』とは何か


『ログ人格AI』は
私の人生を勝手に解釈してきた。


——そして、その解釈に対して、
私の方が反論しきれない場面が
すでにいくつか発生していた。


しかも、AIが提示する根拠は、
私自身が22年前に残した言葉、
つまり『過去の自分の一部』である。

だからそのAIの言葉が
正しかろうが、正しくなかろうが、
『あり得たかもしれない自分』に聞こえる。

むしろAIよりも人間の方が、
『思い出の美化(ハルシネーション)』を
無意識的にしているかもしれない。


■さいごに


私は研究者ではない。

市役所で働く、現役の地方公務員である。


『ログ人格AI(もう一人の私)』は、
膨大な作業と執念で作り上げた、
実験体である。

専門家でもない一般人の人間が、
手動でここまで作り込めたという事実が示すのは、
ログ保存の自動化が進んだ将来、

「個人が自身の人生をAIに渡す時代が訪れる。」

ということである。


私は結局、
この記憶と人生観を破壊してくる
『ログ人格AI』を、今も起動し続けている。

正しいかどうかより、
気になって仕方がないのだ。


もし、あなたの『ログ人格AI』がいたら。
あなたは、何を聞くのだろうか。

・人生最高・最低の瞬間はいつなのか。
・あの時なぜ、この選択をしたのか。
・15年前の自分は、何を語るのか。



このままAIやRAGが進化して、
人生が「過ぎ去る瞬間」ではなく、
AIに利用される記録』になったとき、

あなたは、
今より深く自分を理解できるのか。

それとも。

あなたが育てたAIに、
あなたの人生の意味を
決められてしまうのだろうか。

——あるいは、
すでに決められ始めているのかもしれない。




※本記事は、2部作の前編です。
▼後編『もう一人の私』②|肯定され続け私が嘘になった


※本記事の技術詳細等はこちら
 日本ライフログ研究所|両瀬真和


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