『今日はコンビニ弁当でございます』 2004年、記憶に無い日常の宝物
■記憶に無い『ありふれた日常』
20年以上前の、ある日の夜、
何を食べていたか。
普通なら、
そんなものは誰も覚えていません。
でも私は、知っています。
例えば、今日(投稿日)は
『2026年5月17日』です。
そして今からちょうど22年前、
『2004年5月17日』19時53分。
この瞬間、19歳の私はこう言いました。
『今日はコンビニ弁当でございます』

今回は
そんな『ありふれた日常』について、
『1分単位の記録』で少しだけ覗いてみます。
何の変哲もない、
でも確かに存在した一日の話です。
【補足】
私は2004年1月11日からライフログを分単位で記録し続けています。
その量は、1550万文字、小説155冊分。
(スコア化、AI試作、学術論文の公開なども行なっています)

■恋愛ゲームについて語りあう大学生
2004年5月17日 深夜0時00分の生ログ(当時19歳)。
▼【生ログその1】
--------2004/05/17 00:00:00 ログを開始
00:00 チャンネルに入りました.
00:00 *●●_ join #●●●● (~username@●●●-●●●-●●●-●●.home.ne.jp)
00:00 友人A SUGEEEEEEE
00:01 友人A Fateやりたくなってきたわ
00:02 友人A サクラとリンって、どっちが人気なの?
00:02 友人B リンが圧倒的
00:03 友人B てか、サクラは人気ない・・・(ノД`)
00:03 友人A 工エエェェ(´д`)ェェエエ工工
00:03 私 みずいろ、日和クリア
00:03 友人A リョウセ、次は雪希をやりたまえ
00:04 私 ああ。雪希クリアしたら、次は裏日和ルートか
00:05 私 楽しみだ
00:06 友人B 『朝倉音夢vs片瀬雪希【腹黒】』スレを見るがいい
00:06 友人A 笑えるww
00:08 友人B 少なくとも『国崎サイコーで35000を目指す』スレよりは面白い
00:10 私 もう12時過ぎてるじゃねーか
~略~
23:59 *●●●●_ part (Leaving..)
23:59 チャンネルから出ました.
--------2004/05/18 00:00:00 ログを終了
※匿名加工済
※この日のログ量:28533文字
※この週の感情偏差値:65.7
※この週の友人偏差値:54.0この瞬間の私は、
深夜0時に友人と恋愛ゲームの話をしていました。
もちろん、
そんなことはもう覚えていません。
でもログには『この瞬間の私』が残っています。
この日のログ量は28533文字。
400字の原稿用紙で約71枚分。
大学生の『どうでもいい1日の雑談』だけで、
短編小説1冊分くらいあります。
この日の会話は深夜に及びます。

■24時間・365日 常時保存されるログ
先ほどの生ログの続きです。
ほとんどがゲームの話だったので、
その辺りは省略します。
▼【生ログその2】
--------2004/05/17 00:00:00 ログを開始
00:00 チャンネルに入りました.
00:00 *●●_ join #●●●● (~username@●●●-●●●-●●●-●●.home.ne.jp)
00:58 私 さてと、さすがに寝ます
00:59 友人A おや
01:40 友人A 俺も寝ますよ
01:40 友人B ああ、おや
~略~
12:31 友人B *topic : ひきこもり生活って最高
15:35 友人A よ
17:20 友人B よー
19:51 私 よー、ひきこもり達
19:52 友人B yo-
19:52 友人A 飯食ってきます
19:52 友人B ミーもおなかが減りましたわ
19:53 友人B リョーセ様の晩御飯は何でございますの?
19:53 私 今日はコンビニ弁当でございます
19:54 友人B 愛がない
19:54 私 俺、コンビニ弁当好きなんだけど・・・
19:55 友人B あ、そいや
19:55 友人B PCの音は出たのでございますか?
19:55 私 いや
19:55 私 もうあきらめた
~略~
23:52 友人B 寝ます
23:52 私 ああ、おや
23:58 友人A 私も眠いので寝ます
23:59 私 おや
23:59 *●●●●_ part (Leaving..)
23:59 チャンネルから出ました.
--------2004/05/18 00:00:00 ログを終了
※匿名加工済
どうやら私はこの日、
『コンビニ弁当』を食べたようです。
そして、
その後も他愛の無い会話が続き、
この翌日も、翌月も、一年後も、
緩い会話が続いていきます。
この頃の私は、
PCを24時間・365日つけっぱなしにし、
常時、チャットログを自動保存しながら、
いつでも、友人たちとだらだら会話していました。

■コンビニ弁当の記憶はもう存在しない
私はこの日の『コンビニ弁当』を覚えていません。
何を食べたのか。
どこのコンビニだったのか。
温めたのか。
飲み物は何だったのか。
そもそもこんなログが残っていたことすらも、
何一つ覚えていません。
けれど、
『今日はコンビニ弁当でございます』
このログだけは残っています。
私は、その日の記憶をもう失いました。
でも『存在した事実』だけは
ログとして持ち続けています。
おそらく、
この日食べた弁当は
とっくに製造終了しているでしょう。
でも、その弁当を食べながら、
深夜まで友人とゲームの話をしていた19歳は、
ログの中で、まだ生きています。
不思議な感覚です。

■2004年のインターネットは『たまり場』だった
今のSNSは、いわば
『演出する場所』です。
でも、
2004年頃のインターネット、
特にチャットは違いました。
あれは、
ほぼ『たまり場』でした。
誰かが来る。
誰かが寝る。
また誰かが来る。
会話が止まっても、誰も気にしない。
テレビみたいに、チャットルームは
ずっとつきっぱなし。
だからこそ、
『今日はコンビニ弁当でございます』も
『もう12時過ぎてるじゃねーか』も
『俺も寝ます』も。
今読むと、
異様なほど生活感が漂っています。
SNSの投稿ではなく、
『人間がその場に居た痕跡』だからです。

■人間は『特別な日』より『どうでもいい日』で出来ている
人生を変えた瞬間は覚えていても、
『何を食べたか』
『誰と雑談したか』
『深夜0時に何を考えていたか』
そういうものは、
普通、消えていきます。
でも、本当は――
人間を形作っているのは、
そういう『どうでもいい日』の方なのかもしれません。
これは心理学でいう『エピソード記憶』の話で、
日常の断片的な経験の積み重ねが自己認識を形成する、
とされています(Tulving, 1972)。
2004年5月17日。
私はその日、
友人と恋愛ゲームの話をして、
PCの音が出なくて困っていて、
コンビニ弁当を食べていました。
ただ、それだけです。
あの日は、ただの1日でした。
でも22年後の今、
その『ただそれだけ』が、
キラキラした宝物に見えます。
41歳になった私は、
あの時の自分を少しだけ羨ましく思っています。

▼本シリーズの起点【第1話】
・第1話URL:
https://note.com/lifelog_lab/n/n2f55c09c19bb
▼日本ライフログ研究所 │ 公式サイト
・公式サイトURL:
https://wide-spirit-498.notion.site/346b4484a04880e8b4b7dbd94f9e602a
