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【HSPの行方】6

 去年の夏は暑かった。お盆の9連休、ひたすら横になっていた。眠りのトンネルを抜けると、そこは区切る国だった。

 あの人は出来る、あの人は出来ない、出来るようになる方法、出来ない時の処方箋…。他者に向けて放った言葉は結局どこかで自分に返って来る。自分を大切に出来ない人は他者を大切に出来ない。大切にするって事は大きく切ると書く。自分の知らない自分の方が大きいという事を、子供の頃は実感していた。歳をとって分かった気になった、大きな部分の存在を忘れていた。排除していた。

 僕はルート営業先のお客さんに、現状を吐露していた。そうせずには自分を保てそうになかった。社内の人間の事は言わずに、自分の状況を吐露していた。妙にしんどいんですよと…。ヤクドシという事なんですかねえ…と。まあ景気の不安な感じと合わせて話して、同情でもいいのであわよくば何か、何でも受注に結び付けば、という狙いもあった…。

 そういう狙いを意識するようになったというのは、ふてぶてしくなって来たなあと我ながら思う。同情から注文を貰うのは、嫌だと思っていた。いや卑怯やん!と。そんな事はどうでもよくなっていた。

 仕事したくないんですよね〜。と言ってみたり。親戚の前でも。相手が心配するかも…という配慮より、その瞬間の自分を救うために僕は声を出していた。皆話を聞いてくれた。有り難いなあと思う。申し訳ないとも思う。

 そうやって弱音を聞いてもらっていて、お客さんと話をしていて最初の頃は余計にしんどくなっていた。話しを聞くと、僕より年配でもスーパーマンみたいな人達ばかりに感じ出した。行動の幅、周りの人への奉仕、しっかり楽しみの時間もつくっている…。僕は何もしていない…。ゾッとした。

 そんなスーパーマン達との仕事はやりやすかった。畏敬の念を込め、定期的に会いに行った。舐めてもうた!と、飴ちゃんを舐めながら登場する等、お茶目な一面が見え、魅了もされていた。あのスーパーマンは元気に生きているかな、とその確認をしに会いに行っていた。段々と僕の体感はマシになって来た。

 年末、スーパーマンの一人に会いに行った。 まず近況確認。12月、海外旅行先のカジノ、バカラで20万を0にしたらしい。時々やるらしい。仕事の話が一段落し、感謝の気持ちを伝えた。今年の夏から本当にしんどい時期が続いた事。定期的に会ってお話しする事で、本当に助かった事。「いや何も」と言った後、その人は続けた。

「真っ当に生きてて、おかしい事なんかあるかい!」

 真面目に生きていて、おかしな方向に物事が進むはずがない、とその人は言った。

「沁みます…沁みますわ。」

 笑顔と涙がじんわり湧いて来た。

 真っ当に生きていて、おかしな方向に物事が進むはずがない、とその人は噛み砕くように3回は繰り返した。

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