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あるアーティストの還暦ライブであれこれ考えた|赤の功罪ー魔除けから「丙午(2026年度該当)」伝説まで


■メンバー5人全員が60代になったUNICORN■

先日、UNICORN(ユニコーン)というアーティストのライブに行ってきました。
メンバー「最年少」のABEDON(キーボード)の還暦祝いライブ。
ちなみにメンバー「最年長」は、ドラムの川西幸一さんの67歳。

1986年から1993年まで活動し、いったん解散しますが、2009年に再結成。
以来、サポートメンバーを入れないスタイルを通しています。
(オーケストラなどは入れることがある。)

で、いろいろ考えたわけですよ。
「還暦=60歳」って、昔は堂々たる「おじいさん」でした。
でも、今の60歳って若いですよね。
UNICORNもメンバー全員、年は重ねているけれど、おじいさん感ゼロです。

サッカーの三浦知良みうらかずよし選手は、来年の2月で還暦なのに現役です。
この人、やっぱりすごいな。

2024年(令和6年)の平均寿命は男性81.09歳、女性87.13歳で、女性は40年連続で世界1位。

寿命は人それぞれなので、ここから先は、平均寿命を基準に話を進めていきます。

60歳以降の人生が20年以上あります。
つまり大雑把にいうと、60歳って、「人生の3/4=75%」くらいなんですね。
人生まだ1/4残っています。女性はもっと残っています。

でも、今の日本じゃ、余生を安心してくらせるかどうか…。
人生終盤について考えると、ちょっと暗い気分になることもありますが、なにはともあれUNICORNのライブでは元気をもらいました。

そして、ついでに還暦についてまとめてみました。

■そもそも還暦って何?■

還暦は60年経って、干支えとが一周すること。
干支というと、十二支が思い出されますが、本来は十二支と十干じっかんの60種類の組み合わせのこと。

十二支(上)と十干(下)。
干支。十干と十二支が組み合わさっている。

■赤いちゃんちゃんこを着る60歳はもうあまりいない■

「60歳=還暦」を迎えた人は、赤いちゃんちゃんこを着て祝われるのが慣わしです。

それに、赤い「大黒頭巾だいこくずきん」を被って、手には扇子せんすを持ちます。
タイトル画像の左半分のような感じですね。

でも、最近ではこの格好で祝われる60歳はほとんどいません。
いかにも「年寄り」という感じだからでしょうか?

しかし、「赤」という色は60歳のシンボルカラーとして継承されています。
UNICORNのライブでも、ABEDONが青い衣装から途中で赤い衣装に着替えることで還暦感を出していました。

昔、大相撲で一時代を築いた大横綱・千代の富士も、引退後の還暦のお祝いのときには、赤いまわしをつけて土俵入りをしていました。

赤いちゃんちゃんこを着る60歳のお祝いは減っても、赤いものを身につける60歳のお祝いはまだ健在なのかもしれません。

そして、お笑い芸人のカズレーザーは毎日が還暦なのかもしれません。

■なぜ「赤」なのか?■

俗説でよく耳にするのが、
「60歳になって干支が一周して、あらためて人生をやり直す出発点、つまり赤ちゃんに戻る。」
というもの。
いつ、どこで言われ始めたのかはもう霧のはるか彼方。

また、「生命力を表す血と炎が赤いから」などという話も聞きます。

神道的な意味合いも。
日本では太陽は赤で表されます(白や黄色で表される国や地域もあります)。
そして、太陽といえばアマテラス。最高神。めでたいです。
さらに、神社の鳥居や本殿などは赤く塗られていることが多い。
言葉としても、「赤」は「あかるい」「あかつき」などと同じく「あか」が語源。この「あか」は「明るさ」や「光」を表します。

陰陽説に根拠を求めることもあります。
赤は陰陽の陽が極まった色。
陰の邪気を払う色とされ、中国の正月などでも赤い爆竹を鳴らしたりします。

陰陽説による五つの区分。赤は南の朱雀の担当。

こうやって、さまざまな思想が重なって「赤」は還暦のシンボルカラーとなりました。

■今年2026年は「丙午(ひのえうま)」という特異な年■

2026年は丙午ひのえうま
UNICORNのABEDONは、1966年の丙午の生まれ。
人口ピラミッドで見ると、ガクッと凹んでいる世代ですね。

日本の人口ピラミッド。ClaudeのSVGで生成。

昔は、丙午に子供を産むことは避けられる傾向がありました。
江戸時代の初め頃から広まっていった迷信が原因です。
ここでは「赤」が悪役となります。

江戸では火事が多発しました。
そして、丙午の「丙」はまさに「」。
強大な炎を表します。
さらにうまも「火」に配当されています。
「火+火」を表す。
火事が多かった江戸でこれは縁起が悪い。

ということで、丙午ってなんか縁起悪いよねぇ、ということになりました。

さらに、17世紀後半にとんでもない偏見が広がります。
「丙午の年に生まれた女は夫を殺す、または不幸にする」
という俗説です。

この俗説を広めた「犯人」の一人が、井原西鶴いはらさいかく
高校の日本史の教科書にも登場する人です。

この人の書いた『好色五人女こうしょくごにんおんな』という浮世草子うきよぞうし(小説の一種)が俗説のきっかけとなりました。

高校時代、このタイトルを見て、エロティックなイメージを抱いたことを今でも覚えています。男子高校生なんてそんなもんです。
実際は、男女5組の悲劇的な恋を描いたオムニバス形式の小説でした。

で、このうちの第4話に登場する「八百屋やおやしち」の物語が俗説につながるので、簡単にあらすじを記しておきます。

1.お七の家が火事になりました。
2.お七の一家は寺で避難生活を送ることになりました。
3.お七は、寺で働く若い寺男(僧侶とは別に雑務などをおこなう)と恋仲になりました。
4.お七の家が再建され、一家は寺から家に戻りました。
5.お七は、寺男となかなか会えなくなりました。
6.家が火事になれば寺に避難することになり、寺男と毎日会えると思いました。
7.家に放火したところ、目撃者がいたのでバレました。
8.当時の法に従って、お七は火あぶりの刑で死にました。享年18歳。
9.後にこのことを知った寺男は自害しようとしますが、お七の両親に止められ、出家して、お七の霊を供養し続けました。

で、お七が丙午生まれだったことから、
「丙午生まれの女は夫を殺す、不幸にする」
という俗説が生まれました。

ちょっと、待った!
寺男、殺されていません。
健気な気持ちはわかりますが、お七は放火という犯罪によって自ら身を滅ぼしています。

話が単純化されて、
「丙午に生まれた女は放火する」
  ↓
「丙午に生まれた女は夫を殺す、不幸にする」
と変化したのでしょう。ひどい女性差別です。

なぜか、そこから丙午には女子を産まないようにという動きが広まります。
統計が残っている1906年(明治39年)の丙午の年に生まれた女子は異常に少ないです。
それなのに男子はふつう。
そして、1905年生まれ、1907生まれの女子が、不自然に多い。
そう、1906年生まれの女子を、1905年または1907年生まれとして出生届を出して誤魔化したのです。

1905年といえば、日露戦争が終わった年。
世の中は混乱していますし、当時の役所もかなりアバウトです。
だからこそ、戸籍上は不自然な人口構成となったのですね。

驚くことに、20世紀半ばにもまだその俗説(偏見)は残っていました。
1966年に女子が生まれたらいやだなあ、と考えた夫婦はけっこういたのです。
しかし、当時は男女の産み分けも出生前診断もできません。
男が生まれるか、女が生まれるかわからない。
だったら、とにかく1966年に子供を産むこと自体を避けよう、という考え方となり、出生数が激減というわけです。

さて、21世紀、2026年、令和8年。
丙午です。
この時代に「丙午生まれは縁起が悪い」などと本気で信じている人がほとんどいないことを祈ります。
ABEDONを見ても、全然不幸じゃありません。むしろ幸せそう。
偏見でこれ以上出生率が下がりませんように。

■還暦式と大還暦■

成人式のように還暦を第二の人生の出発として祝う「還暦式」開催の動きがじわじわと広がっています。
2005年の壱岐市、2007年の佐世保市、2008年の市川市などがその始まりとされます。

この前のUNICORNのライブでは、ABEDONの紹介映像で「三回目の成人式」という文字が記されていました。
その考え方もまたいいですね。

そして長寿時代を象徴してか、「還暦×2=120歳」を「大還暦」と呼ぶこともあるようですが、世界中で大還暦を迎えた人は今のところいないようです。

え?
泉重千代いずみしげちよさん(男性です)は?
あの人、ギネス公認の120歳だったじゃないですか。

と、思ったら戸籍の不備が見つかり、2010年にギネス公認が取り消されていました。残念!

もう、誰がどこをどう調べても120歳で間違いなし!
という状況で大還暦を迎えれば、人類史上初です。

仕方ない。
何が仕方ないのかわからないけれど、私がめざすか…。

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