見出し画像

神社で見落としていたもの①【力石】ええっ! 本当にこれを持ち上げたの?

多くの神社に行っていても、見落としていたことに今さらながら気づくものがけっこうあります。

たとえば、昔は狛犬にも御神木にも関心がありませんでした。
まったくスルー。
視界に入っていても記憶に残っていない。まさに見落とし。

最近になって、見落としに気づいたのが力石(ちからいし)。
さまざまな由来はあるけれど、基本的には力自慢の男たちが競って持ち上げた重い石。

玉前神社たまさきじんじゃ白子神社しらこじんじゃを連続で参拝したときに、どちらにも力石があったので、ふと気づきました。

玉前神社(千葉県一宮町)の力石。

説明板にとんでもないことが書いてあります。
この石は85貫(約319kg)あり、明治39年(1906年)に、「若さくら」という幕内力士が軽々と持ち上げたとのこと。

いやいやいや、軽々って、あんた!
319kgだよ?
いくらなんでも、「軽々」は無いでしょ。
石の大きさから考えて、重さには誇張があると思います。
しかし、誇張を差し引いても、ふつうはこの石は持ち上がりそうにありません。

その証拠に、おそらく夫婦と思われる30歳前後の男女がやってきて、男性の方がこの石を持ち上げようとして、いきなり腰を痛めていました。

続いて参拝した白子神社の力石。
三つ並んでいます。

やはり、撫でることに特化しています。
説明板によると以下の通り。
写真右は52貫(195kg)で「縁結びの石」。
中央は25貫(93.75kg)で「俗に美人になる石」。
左は41貫(153.75kg)で「始終一貫心をこめて祈願する」。

中央の石の説明に「俗に」と書かれているあたりが控えめです。
いやあ、撫でることに特化していて良かったです。
もし、持ち上げることで願いが叶うのなら、約90kgの石をもちあげられる美人が誕生するわけで、そんな美人はなんか怖いです。

白子神社(千葉県白子町)の力石。

不思議なことに、玉前神社の319kgの石と、白子神社の195kgの石がだいたい同じくらいの大きさに見えます。なぜ?

そういえば、よく参拝する神社に茅ヶ崎市の神明大神宮がありますが、ここの力石には参拝のたびに触れています。

神明大神宮の力石(神奈川県茅ヶ崎市)。

なんかね、両手のひらを力石の上に置くと、じわっと手のひらの中に、熱量みたいなものが入ってくる感じなんですよ。

かつては、力自慢たちが持ち上げようと競っていたのでしょう。
試しに持ち上げようとしましたが、びくともしませんでした。
これで何kgくらいなんだろ?

たまに参拝する白旗神社でも、必ず力石に触れます。
拝殿の横の目立つところにあるので、流れで自然に触れることになりやすいです。多くの参拝者が撫でています。

白旗神社(神奈川県藤沢市)の力石。

説明板には石占(いしうら)のことが書かれています。
この石ではありませんが、昔は石を使って占いをしていたとのこと。

確かに、
「石を持って軽く感じれば願いが成就する」
という石を神社で見かけることもあります。
下の写真の「おもかる石」もそうです。

伏見稲荷大社(京都市)の「おもかる石」。

話は藤沢市の白旗神社の力石に戻ります。
白旗神社では、御祭神として源義経を祀っており、境内には義経・弁慶主従の像もあります。「弁慶の力石」と呼ばれるようになったのは、自然の流れだったのかもしれません。

源義経と武蔵坊弁慶の主従の像。白旗神社(神奈川県藤沢市)。

説明板には、
「茶屋で一服する近郊農家や町内の力自慢がこの石を持ち上げ力比べをした」
と書かれています。
なにも一服している時間に、こんな重い石を必死で持ち上げなくてもいいのでは?
なーんて思ってしまうのは、文明の進んだひ弱な現代に生きているからでしょうか?

娯楽の少ない時代には、顔を真っ赤にして重い石を持ち上げようとする人を、応援したり笑ったりして、やんややんやと盛り上がっていたのかもしれません。
よけいなことを考えずに、ただ肉体だけを必死で動かす。
それはそれで楽しかったのかな?

もしかして、力石の研究をしている人もいるのでは?
検索したら、いきなりいらっしゃいました。

元・大学教授で、最近の更新は二日前ではないですか。
うわ、本物だ! 本物の力石研究家です。

あらら、参拝したのに力石を見落としていた神社が続々と出てきます。

え、江島神社にもあるの?
昔から年がら年中行っていますけど。
全然気づかなかった…。

江島神社(神奈川県藤沢市)の力石。

こちらは、80貫なのに約320kgと換算されています。
玉前神社は85貫で約319kgなので、少し盛っています。
あるいは85貫を80貫と書き間違えたのかもしれません。
(正確には、80貫は約300kg。)

おっと、瀬戸神社にも立派な力石がありました。
これまた気づきませんでした。

瀬戸神社(横浜市金沢区)の力石。

公式ホームページによると、大きい力石の重さは85貫(約319kg)。
玉前神社の力石と同じ重さです。

こちらは「鬼熊」という四股名の力士が持ち上げた、と説明されています。
いくら力士とはいえ、319kgの石って持ち上がるのでしょうか?

ネットで調べたら、ストロングマンコンテストの記事が出てきました。
昔、ボディビル雑誌『マッスル・アンド・フィットネス』を愛読していたときに、読んだことがあるコンテストです。

丸い石を胸の高さまであげる競技の世界記録が286kgだそうで。

ちなみに、パワーリフティングという競技のデッドリフト部門の日本記録が男子83キロ級で323kg、男子120キロ級で330.5kg。
だいたい、85貫(約319kg)の石とおなじ重さ。

デッドリフト。chatGPT作。競技の雰囲気と、バーベルの留め具はこちらがリアル。
デッドリフト。Gemini作。服装と、二つ穴のベルトはこちらがリアル。

こうなると、319kgの石を持ち上げた日本人が昔はいたと信じたくなってきます。可能性はゼロじゃない。伝説は真実に違いない。
きっと神社の御神徳もいただき、持ち上がったのでしょう。

それにしても、時代が変わり、道具が変わっても、人間は力比べが好きなのかもしれません。
この記事を入力しながら、私も熱くなってしまいました。

身の回りの300kgくらいのものを調べたら、「大型の自動販売機」という回答が得られました。

よし、明日は力石の代わりに、どこかの自動販売機を持ち上げることに挑戦だ!(←犯罪です。)








いいなと思ったら応援しよう!