サナちゃんは甘くない 『だぁれかさんとアソぼ?』 2026年公開 【映画感想】
映画『だぁれかさんとアソぼ?』を観てきた。
「高谷さな」ちゃんシリーズ3作目
『だぁれかさんとアソぼ?』は『ミンナのウタ』から数えてシリーズ3作目。
監督は今回も清水崇。
高谷サナちゃんは、周りの者の最期の音(断末魔)をテープに録音し、締めくくりに自らの最期の音を入れたテープを作り、それをみんなに聴かせて自分の世界へ連れ去りたい、という危ない欲望を抱いて死んでいった女の子である。
彼女の思いはテープレコーダーとテープに宿り、関わった者を次々と自分の世界に引き込んだり死なせたりする。
2作目『あのコはだぁれ?』では、サナちゃんのかつての同級生たちが中学生の子どもを持つ親となっており、学校の夏の補講にサナちゃんが混ざり込んできて大騒ぎとなる。
かつての同級生、その子どもたち、そして新任教師がサナちゃんの欲望と格闘するさまが描かれる。
この2作目で明かされたのは、サナちゃんに「音」を収集されそうになっていた弟トシオくんが、実は無事に産まれており、施設で育っていたこと。成長したトシオくんを演じるのは染谷将太。
前置きが長くなったが、そういう「サナちゃん」シリーズの3作目が『だぁれかさんとアソぼ?』である。
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「タカヤサマ」として都市伝説に
『だぁれかさんとアソぼ?』では、高谷サナちゃんは「タカヤサマ」という都市伝説に変化している。
テープレコーダーを使って、学校の階段の13段目でテープに日付と名前を吹き込まれると、吹き込まれた人を「タカヤサマ」が迎えに来る、という。
その内容から「現代版コックリさん」と呼ばれていた。
通常のテープレコーダーでそれをやっても何も起きないのだが(冒頭でカウンセリングにかかっていた高校生は怯えていたが命は無事だったらしい)、ナナミ(星乃あんな)の学校にはホンモノのサナちゃんのテープレコーダーがあったために、惨劇となる。
ナナミの姉で心理カウンセラーのコハル(鎮西寿々歌)は、ナナミとその友人たちを救うために奮闘する。
今回は片道切符
前の2作では、サナちゃんの欲望によってサナちゃんの世界へ「連れ去られ」た人は、いったんサナちゃんの欲望が解除されると現世に戻ってきたのだが、今回は人間たちが自らテープレコーダーを使って他人を呪っているためか、「連れ去られる」パターンはなく、基本、名前を吹き込まれた人は死んでしまう。
それは本当の死なので、物語が終わっても帰ってこない。
しかも、テープレコーダーに名前を吹き込まれた人が死ぬのは、サナちゃんが直接に何かするわけではない。
サナちゃんは、憎む相手の名前を吹き込んだその人の心身を操って、憎む相手を殺させるのだ。だから、他人の名前をテープに吹き込まなかったナナミを除いて、同級生たちは互いに殺し合ったり、殺そうとして道連れにされたり、罪悪感から自分も病んでしまったりする。
装置に乗ったが最後。問答無用、言いわけ無用
高校生たちは、ストレス発散のような気持ちで「タカヤサマ」をする。
しかし、誰かの名前を吹き込んだが最後、そんなつもりじゃなかったなんて言いわけはサナちゃんに通用しない。
高校生たちは「タカヤサマ」が自分の呪いを代行してくれると思い込んで実行するのだが、そんなウマい話はなく、自分の呪いを自分で実行させられる。
テープレコーダーに吹き込むことで、人の心の外側へ出て形を得てしまった呪いは、呪った本人によって実現され、人間の最期の音を録り続けるサナちゃんのテープレコーダーに収集されていく。
初めのほうで「現代版コックリさん」というワードが出てきて、レトロな響きにわたしは苦笑いしたのだが、それも途中で凍りつく。
良かれ悪しかれ、誰かの心が形になって装置に乗ったら取り消せないのは、コックリさんの文字盤もサナちゃんのテープレコーダーも同じなのだ。
呪いは解けるか?
人を呪わば穴二つという状態へ自ら落ち込んでいく人間の姿を描きつつ、2作目に続いてテープレコーダーがまるでサナちゃんの分身のように勝手に誰かの「最期の音」を録りに行こうとし、そこから、ところでサナちゃんはどうしてるのだろうか?という謎へつなげていく。
恐ろしい欲望を抱いたサナちゃんは両親によって殺された(そうなるようにサナちゃんも計画した)と思われていた。
1作目では、過去の世界(幻)へ飛ばされた主人公たちがサナちゃんの自殺を阻止して彼女の魂を救おうと試みた。2作目ではサナちゃんの魂を母親の霊が迎えに来て、現世からサナちゃんは消えた。
しかし、サナちゃんは再び現れた。
前の2作では呪いの根本的な解除に至っていない、という意味なのだろう。
(まさか1作目でサナちゃんを救ってしまったゆえの3作目の悲劇なのか?とも考えたが、あれはあくまでサナちゃんが見せた幻の中での出来事なので、さすがにそこまで意地悪な展開ではないだろう。)
3作目では、数十年前に死んだはずのサナちゃんの、お墓がないってどういうこと?? という話から、サナちゃんは自分の「最期の音」を録音するというミッションを達成できないまま死んでいた、という展開になる。
テープは完成していない。だから未完成のテープは最期の音を集め続けている。それならばサナちゃんの音を入れてテープを完成させようというのが今回の着地らしい。
…ややっ!? では『ミンナのウタ』でラジオ局の倉庫にあったテープは、いつ、誰が送ったのかしら…。
父親のホラー味と、気の毒な同級生
2作目『あのコはだぁれ?』の感想で、母親の苦悩に少し触れたが、そこに隠れて地味だった父親も、1作目から続けて観ると、そうとう曲者である。
1作目でも掃除機のコードを力いっぱい引く表情からして全てを分かっていたに違いないのに、娘を死なせても他に犠牲者が出ても、3作目でシレっと「さなはまだ、あの家に居る」と言えてしまう父親がいちばんのホラーかもしれない。彼がこのまま逃げ切れるのだとしたら、そうとう怖い。
(ちなみに、トシオくんが施設にいる父親を訪ねるシーンで、父親の車椅子を押してきた女性が、トシオくんが急に誰も居ないところを向いて母親の霊と会話しはじめたのに気づき、ドン引きする芝居がめちゃくちゃ上手だった。)
一方で気の毒なのは、ナナミの同級生でバスケ部の丈太郎(大西利空)。
部活の顧問の先生を死なせたのがサナちゃんに操られたゆえなのか、それともそういう幻を見せられたのかは不明だが、学校に復帰してもなかなかに針の筵のように思えてならない。
「タカヤサマ」に頼るんじゃなく、違うレコーダーで体罰の証拠を集めれば良かったかもね…。
よく知らない人や物とはアソばないほうが良さそうです。

