【俳句ショート#67】北村仁子 夕焼を使ひはたして帆を降ろす(412字)
「賑わっている・・・」
僕が住む街のイオンには10円クレーンゲームがある。
台によって10・20・30・40円とあるが、どちらにしろ安いので、小さな子どもを連れた親子に人気の遊び場だ。
特にこれといった趣味のない僕も休日はここで遊ぶことが多い。
でも、これだけ人が多いと少し見栄を張りたくなってしまう。
ちょっと大きめの人形や箱とかを持って歩き回り、周りから「あいつ、すげえ・・・」的な目で見られたい。
でも、それは10円のクレーンゲームではダメだ。
取れてもちっちゃなスタンプやよくわからない人形ばかり。
普段満たされない承認欲求を満たすために、僕は別の台に繰り出した。
すると、隅の方の台で、全体重を片足で支え、棒に捕まるヨッシーを見つけた。
「こんなの楽勝じゃん!」
多分みんな隅にあるから気づかないんだ。
僕はその台に100円を投入した。
あまりにも弱々しい動きしかしないアームに、気づけば3000円が溶けていた。
夕焼を使ひはたして帆を降ろす

こんにちは、三太です。
note3周年を機に2025年の3月から「俳句」と「ショートショート」をかけ合わせた「俳句ショート」という創作を始めました。
書くときの自分の中の条件としては次のような形でやっています。
① これまで作った俳句または歳時記の中から1句ピックアップする
② そこから400字程度の文章を書いてみる。(できれば、その中に何か文学作品や映画を入れてみる)
③ 毎週、金曜日に投稿する。
今回の引用俳句は北村仁子さんの「夕焼を使ひはたして帆を降ろす」(第五版 角川書店編 『合本 俳句歳時記』)です。
クレーンゲームは冷静さが試されています。
それでは、読んでいただき、ありがとうございました。
