苦しい時の紙だのみ(秋ピリカ応募作品)
「苦しい時の神頼み」って言うじゃない?私は「神さま」じゃなくて「紙さま」にお願いしていたんだ。
六年間の修行ののち、自分の理想の和紙を追求したいと紙漉き職人として独立して工房を構えたのだけれど、想像通りとても厳しくて。注文が来なくてね、、、。自分で売り込みに行ったり、自分のサイトも作ったりしたんだけれど。
そんな状態の時、外を散歩している時に拾った小枝に自分で漉いた、花びらを使った和紙をくるませて、棚に飾っていたの。なんだかとても可愛くて、「紙さま」なんて言って話しかけたりしていたんだ。一人で孤独だし、心が折れそうになることも多かったから、「紙さま」が支えだった。和紙の原材料の楮の木の皮を煮ている時、庭に生えている草花を使ったデザインを考えている時などにふと「紙さま」を見てほっこりしていたの。優しく見守ってくれているような気がしている。
まわりの人に反対されて和紙職人になりたいという夢を諦めて、違和感を感じながら好きじゃない仕事をやり続けていたら心が壊れていただろうな、とわかる。一日中パソコンの前にいる仕事は私には合わなかった。
今、やりたいことをやれて、自由に生きることが出来てとても幸せ。
ここは田舎だから、自然が豊かで空気、水が綺麗。和紙作りに欠かせない豊富な井戸水もある。家庭菜園もしているよ。自然と自分が一体となって生きている。そういう生活がしたかった。体の隅々まですーっときれいなもので満たされていく感じ。純度が増した私の頭の中に次々とアイデアが浮かんでくる。
でも、現実は今のままでは生活は苦しく、貯金を崩しての生活だし、どうしよう、「紙さま」助けて、、、なんてお願いしていたの。
そうしたら、ある日、海外の方が私の和紙を素晴らしいと言ってとても気に入って下さってね。その方の影響かな、海外のお客様がたくさん増えたの。それに続き、国内のお客様も増えたの。本当に嬉しい。私の和紙を使って絵画や立体作品をつくっている方もいらっしゃる。和紙は本当に丈夫なの。植物のちから、たくましさそのもの。
生活が安定してきたのは「紙さま」のおかげかな?なんて思っている。今日も自然と対話しながら、「紙さま」に見守られながら、風に吹かれながら、私は木の皮を剥いで、煮て、漉いて、干して、私たちの誇りでもある和紙作りに励んでいる。
1000文字
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