日本が世界第2位のミリオネア大国だと知って考えたこと
先日、大学図書館でドイツの有力紙『フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)』をパラパラとみていた。
ドイツの新聞に日本が取り上げられることは、めっきりすくなくなってしまったと感じる。しかしこの日は、日本がクローズアップされている。
記事は、コンサル会社のキャップジェミニが公表した富裕層調査をもとに、「ドイツには約178万人のミリオネアが暮らしている」と報じていた。ドイツ経済がここ数年ほとんど成長していないにもかかわらず、富裕層の資産は増え続けているという。
背景には、株式市場の好調、不動産価格の回復、インフレの鈍化などがあるらしい。また、富裕層は市場が下落しても慌てて資産を売却せず、むしろ再投資しながら資産を増やしていることも紹介されていた。
経済が停滞していても、お金は働き続ける。
そんな記事だった。
驚いたのは日本の順位
記事には、世界のミリオネア人口ランキングも掲載されていた。
1位 アメリカ 約873万人
2位 日本 約443万人
3位 ドイツ 約178万人
4位 中国 約166万人
私は思わず順位を見直した。
日本が世界第2位?
多くの日本人に聞けば、「給料は上がらない」「将来が不安だ」という声が返ってくるだろう。実際、日本は長期間にわたって低成長が続いている。なのに、世界第2位のミリオネア人口を抱えているのである。
日本は貧しくなってしまったのか
もちろん、日本経済に課題がないと言いたいわけではない。
人口減少、地方の衰退、物価上昇への不安など、多くの問題を抱えている。しかし一方で、日本には戦後から積み上げられてきた膨大な資産がある。日本銀行の統計によれば、家計金融資産は2,000兆円を超えている。
つまり、日本は「貧しい国」になったというより、豊かな国でありながら、その豊かさを多くの人が実感できていない格差の国になってしまったのだろう。
このギャップが、いまの時代の特徴なのではないだろうか。
世界には8億人を超える極度の貧困層がいる
さらに視野を世界に広げてみる。世界銀行によれば、2025年時点で約8.3億人が1日3ドル未満で暮らしている。世界人口のおよそ10人に1人である。
キャップジェミニの報告書によれば、世界には約2,530万人のミリオネアがおり、その保有資産総額は約98兆ドルに達する。
この98兆ドルはキャッシュではない。株式や不動産、企業の持分なども含まれているため、そのまま再分配できるわけではない。それでも、この数字は私たちに一つの事実を示している。
世界には、社会課題の解決を考えるうえで莫大な富が偏在しているのである。
ピケティが投げかけた問い
フランスの経済学者トマ・ピケティは『21世紀の資本』の中で、
資本の収益率(r)が経済成長率(g)を上回るとき、格差は拡大する
と論じた。
ドイツの記事で紹介されていた現象は、まさにそれを思い出させた。
経済全体の成長は鈍い。しかし資産を持つ人の富は増えていく。日本もまた、その現実と無縁ではないだろう。
問われているのは「富の量」ではなく「富の使い方」
この記事を読んで考えたのは、「格差はけしからん」という単純な話ではない。
むしろ、社会に存在する富を、どう社会課題の解決へ結び付けるのかという問いである。
教育、地域活性化、環境問題、子どもの貧困。解決すべき課題は数多くある。
私たちが本当に向き合うべき課題は、「お金が足りないこと」ではなく、お金を社会のために活かす仕組みが十分に機能しているのかということなのかもしれない。
図書館で偶然見つけたドイツの記事は、そんなことを考えるきっかけを与えてくれた。
その問いは、世界第2位のミリオネア大国である日本に暮らす私たち自身の問題でもあるのである。
写真は、2026/6/5付けフランクフルター・アルゲマイネの記事より転載しました。
