映画:モモ対スマートウォッチ ~ 効率化という名の「盗まれた時間」
ミヒャエル・エンデの名作『モモ』。1986年の実写映画から約40年、ドイツで製作された新たな実写版が、現代社会に鋭い問いを投げかけています。
まだ本編を鑑賞できていませんが、現地の批評や予告編からは、デジタル化された現代への痛烈なアンチテーゼが読み取れます。
現代の「灰色の男たち」はスマートウォッチを巻いている
舞台は私たちが生きる「今」。時間を奪う「灰色の男たち」は、巨大テック企業を思わせる集団へと姿を変え、その手首には効率化の象徴であるスマートウォッチが光っています。
人々は「時間を節約して自由になる」ためにデバイスを使いこなしているつもりですが、実際には秒刻みの通知に追い立てられ、逆に時間を吸い取られている。SPIEGEL(シュピーゲル)に掲載されたアンナ・ワイス氏の批評は、この現代のパラドックスを鋭く突いています。
エンデの妻であり、翻訳家であった佐藤真理子さん
エンデの妻であり、彼の良き理解者として後半生を共に歩んだ翻訳家の佐藤真理子さんが、2024年末に亡くなられました。
『モモ』という物語が誕生してから半世紀以上が経ち、エンデの思想を最も近くで見守り続けた彼女もこの世を去った今。この新しい映画が、混迷を極める現代に「時間の本質」をいかに映し出そうとしているのか。その視点は、原作ファンにとっても注目すべき点です。
日本公開を待ちわびて
新作のヒロイン、アレクサ・グッドールが演じるモモは、赤いカールの髪と青い瞳という新しいビジュアル。彼女がデジタルに支配された街で、いかにして「聴く」という魔法を使い、人々の心を取り戻すのか。
本国ドイツでは、演出のスピード感や現代的なアレンジを巡って議論が白熱しています。日本での公開日は未定ですが、灰色の男たちに完全に時間を盗まれてしまう前に、私たちはこの物語を通じて、「失われた時を求めて」をもう一度、共に語り合いたいものです。
