【小説】8月某日の夢 第13話
8月1日。
ザワザワとした雰囲気が、夢で見たあの夏祭りを思い出させた。
紬貴くんが通う高校にきている。今日は、文化祭だ。
歩きなれない校舎の中で、道に迷いながらも、私は『美術部』と書かれた看板を見つけた。
「失礼します」
入ってみると、思った以上に多くの絵が教室に飾られていた。
もはや、教室全体がアート作品だ。
私は、教室全体を見渡した。
グッズ売り場があった。美術部で描かれた絵がグッズになっていて、販売をしているようだった。
『会計』と書かれた札の隣に座り、スケッチブックに絵を描いているのは…………
「紬貴くん……!」
紛れもない、紬貴くんだ。
夢で見た時より、当然大人っぽくなっている紬貴くん。私に気がつくと、手を振って駆け寄ってきてくれた。
私が紬貴くんと話し合ったのは、夢の中の出来事。現実世界では、まだ中学生の時の距離感のままのはず。
だけど、紬貴くんは変わらない。ずっと優しいままだ。
「お久しぶりです。来てくれてありがとうございます」
「お久しぶり!」
お互いに挨拶を交わした。
紬貴くんと少し話すと、紬貴くんは『新しい絵を描いたんですけど、見ますか?』と訊いてくれた。
もちろん! 紬貴くんの絵を見るのが、ずっと楽しみだったんだ。
教室中がアートの世界の中で、なんと大半が紬貴くんの描いた絵だった。
その中には、夢で見たはずの花火の絵も……。
美術部員さんからも人気があるようだ。
やっぱり、紬貴くんはすごい……!
紬貴くんに1枚1枚絵の解説をしてもらって、私は心ゆくまで楽しんだ。
「ねぇ、紬貴くん」
「なんですか?」
私は、紬貴くんに言いたいことがあった。
カバンから、来週の夏祭りのチラシを取り出す。
「もしよければ、夏祭り一緒に行かない?」
今度は現実世界で。また、紬貴くんと花火を見たいと思った。
「あ〜、この日は夏期講習があるかもしれないですが……」
紬貴くんはそう言った。
だけど顔を上げて、どこか明るい表情を見せた。
「行きます。必ず」
(了)
