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心理カウンセラー、手術室で完全敗北する。〜28年の知識より看護師さんの「手」が勝った話〜

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

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私は、28年、心理カウンセラーとして人の心に寄り添う仕事をしています。クライアントさんには「深く息を吐いて、リラックスしてくださいね」なんて、心身をリラックスさせる方法をアドバイスすることもある私ですが、
実は今から20数年ほど前、自分の身体の暴走を前に、私のカウンセリング知識が少しも役に立たずに完全敗北した、忘れられない経験があります。

人間の理性やコントロールがいかに無力か、そして「身体」がいかに正直で精巧か。それを思い知らされた、ある手術室での格闘の記録です。

「大丈夫」と言われながら、暴れる前提で縛られる恐怖

当時、私は部分麻酔で鼻の手術を受けることになりました。 手術室に入り、手術台の上に横たわると、ベテラン医師と看護師さんはとても優しい声でこう言いました。 「怖くないですよ。大丈夫ですからね〜」
そう言いながら、彼らは私の身体に極太の皮ベルトを回し、手術用のベッドにガチガチに縛り付けていくのです。目的はただ一つ、私が手術の途中で、痛みで暴れ出さないようにするためです。

「いや、『大丈夫』って言いながら、完全に痛いの前提、暴れ出す前提の拘束じゃないか!」という心の中での恐怖のツッコミも虚しく、身動きが一切とれない状態にされました。そして、さらに、視界を完全に遮る目隠しを装着されました。

私は、これから始まるだろう壮絶な痛みを想像し、恐怖に慄きました。意識がはっきりしている中で、すべての自由と視覚を奪われる。こんな恐怖があっていいでしょうか。そう、私は、医師と看護師さんの 言葉の優しさと、目の前の「暴れ出さないための拘束」というハードな状況のギャップに、私の防衛本能はこの時点でマックスに跳ね上がっていたのです。
心臓はドクドクと信じられない速さで大きく脈打ち始め、冷や汗が背中を伝っていきます。私は、何も見えない暗闇の中で、猛烈な緊張と不安の波に飲みこまれていたのです。

モニターの警告音を察知した医師が、私に向かって言いました。 「竹内さん、脈拍が早すぎです。もっとリラックスして、深呼吸してください」

「プロのカウンセラーとして、自律神経のコントロールくらいできなくてどうする!」と、私は必死で深呼吸を試みました。細く長く息を吐き、吸い込む。しかし、暴走する私の心臓は、ちっとも言うことを聞いてくれません。脳が「いま命の危機だ!」と激しいアラートを鳴らしているときには、いくら頭(理性)で「大丈夫だ、落ち着け」と言い聞かせても、言葉の説得など完全に無力なんですね。

医師の一言と、笑っちゃうほどの奇跡

万事休す。呼吸は浅くなり、いよいよパニックになりかけたその時でした。 ベテラン医師がそばにいた看護師さんに向かって、ぶっきらぼうにこう命じたのです。
「おい、〇〇。竹内さんの手を握ってやれ」
直後、私の右手に、そっと温かい看護師さんの手が重ねられ、ギュッと握りしめられました。

その瞬間。 本当に、自分でも「笑っちゃうくらい」、すーっと全身の緊張が融けていったのです。あれほど激しく波打っていた心臓の鼓動が、まるで手品でも見ているかのようにみるみるうちに静まり、脈拍が正常値へと戻っていきました。

そう、言葉による指示にはビクともしなかった頑固な私の身体が、たった一つの「肌の触れ合い」によって、一瞬にして平穏を取り戻したのです。これぞまさに、幸福ホルモン「オキシトシン」の凄まじい威力です。

身体は、頭よりも圧倒的に正直である

後になって振り返ると、心理臨床家としても非常に興味深いことに気づきます。 冷静に考えれば、大人の男性が女性の看護師さんから突然手を握られたわけですから、もしそれが普段のシチュエーションなら、余計にドキドキして心拍数が上がってしまいそうなものです。

しかし、あの極限の手術室では、私の身体はあの触れ合いを「異性としての刺激」ではなく、「私を危機から救ってくれる、絶対的な安全基地」として100%受け取ったようです。

まさに、「身体は頭(理性や思考)よりも、圧倒的に正直」なのです。

頭があれこれと解釈を巡らせたり、恥ずかしがったりするよりも遥か手前で、生存を司る古い脳と身体が、差し出された手の温もりを「生き延びるための癒やし」としてダイレクトに感知し、自律神経のスイッチを切り替えました。言葉(認知)の限界を、身体(触覚)が一瞬で超えた瞬間でした。

現代人にこそ必要な「触れるアプローチ」

私たちは普段、どうしても頭で考え、言葉や理屈で物事を解決しようとしがちです。しかし、心が疲れ果てたときや、強い不安に襲われたとき、本当に必要なのは言葉による説得ではなく、身体へのダイレクトなアプローチなのではないでしょうか。

強いストレスや不安で心が激しく波立っているときは、ぜひこの「オキシトシンの力」を思い出してください。 身近な大切な人やペットとの触れ合いはもちろん、自分で自分の腕を優しくさすってあげるセルフタッチや、お気に入りの柔らかいクッションを抱きしめるだけでも、脳はしっかりとオキシトシンを分泌してくれます。

言葉が敗北するほどの不安を、一瞬で溶かす「触れる」パワー。皆さんもぜひ、ご自身の身体が持つ正直なセンサーを信じて、日々の生活をたくさんの安心感で満たしてあげてくださいね。


今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。
            カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋

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