焦った女、駆け抜ける。
集合から解散まで、驚くほど短い時間だった。けれど、その短さの中に、前戯も、気遣いも、可愛げも、身体の相性も詰まっていた。焦った女が、焦った男を少し可愛いと思った日のマッチングアプリ体験談。
物事の密度は何で測るのだろうか。
彼のことはウィンブルドンと呼ぼう。
アプリでの受け答えがさっぱりとしていて、
紳士さを漂わせていた。
待ち合わせ場所に彼が車でやってくる。
私はそれに乗り込み、ホテルへと向かう。
はじめの頃は助手席に乗っていいのかと
まごついていたが、
後部座席に乗ろうとすると
不審に思われるらしいことを学んだ。
タクシーではないのだ。
今は迷わず助手席に乗り込むようにしている。
ウィンブルドンはチャットで思った通り、
腰が低く柔和だ。会話も穏やかだが弾む。
ホテルに着いて、変わったシステムに
盛り上がりながら部屋へと入る。
まずソファーでキスの感触を堪能する。
そして服の上からお互いの身体を確かめ合う。
鍛えているのであろうが、鍛えすぎていない。
さわやかな顔の印象通り、
引き締まっていて清潔感のある身体だ。
事前にチャットですり合わせをしていた。
私たちは、前戯が好きなタイプで一致していた。
私の上半身をウィンブルドンが丁寧に舐めていく。生温かさとくすぐったさと高揚感の三つ巴だ。
焦らすようになかなか下半身に行きつかない。
やっと手が下半身に伸びてきたが
太ももの内側や鼠径部を撫でるばかりだ。
私の反応を楽しんでいる。ムードは大切だ。
私は「触ってほしい」とねだった。
ウィンブルドンは嬉しそうに、顔をうずめ始めた。入念な舌遣いだ。
彼は上手い方だと思う。
単調に舐めるだけではないのだ。
技術は財閥がすさまじかったが、
彼は外れ値に近い上手さだ。
ここで選手交代だ。
反りの角度が深い。
角度の個人差は何で違いが出るのだろうか。
聞いていた要望をこなす。
蟻の戸渡りの部分を押して刺激しながら、
口で奉仕する。
袋の部分もだ。この部分は油断しているのか、
体臭を感じやすい部分なので
合わない人にはあまりしたくない。
しかしすると相手の満足度が高まる。
行為自体は私も嫌いではないのだ。
希望しているだけあって、彼は大丈夫だった。
そこを口に含むと反応が大きい。
彼はリアクションが大きいので
こちらも楽しくなってくる。
ウィンブルドンの息の荒さが
私のモチベーションだ。
私はいつもより入念にしっかりと追い込んだ。
彼は慌てて制止し、私を寝転がせた。
私の形状が理由で、大抵は挿入が困難である。
だったのだが、彼の形と相性がいいのか
難なく入ってきた。
今までこんなことはなかった。
無理に入ってこないため、
全く痛みを感じなかった。
私は驚いた。だがもっと驚かされた。
挿入時間は体感一分で終わった。
速さにあっけを取られた…
ウィンブルドンは落ち込んでいた。
すこし距離を取り体育座りに近い体勢だ。
「もう会う気ないでしょ…」と
力なくつぶやいている。
面倒臭いという取り方もあるとは思うが、
私はそれを可愛いと取った。
繊細で面倒だが、
下手なプライドがなく素直に表現できるのは
彼の良さだと思う。
むしろ私の前戯の結果である。
私は誇らしさすらある。
私は挿入時間の長さでその行為の満足度が
上がるタイプではない。
だがそんなことを今言っても
彼を傷つけるだけなので、行動で示そうと思った。
私はまた会うと静かに決意した。
彼の気持ちが落ち着いてから、私たちは談笑した。このまま帰るのは忍びないと思った。
互いに今まであった人たちとの
不思議なエピソードを披露しあった。
ウィンブルドンは合いの手が上手い。
アプリを使用している女性たちも
なかなかキャラが濃いようだ。
待ち合わせ場所まで送ってもらい私たちは別れた。ウィンブルドンは一貫して紳士だった。
その姿勢に私は満足だった。
密度は時間だけでは測れないと私は思いながら、
帰宅した。
この日は集合から解散まで
圧倒的なスピード感で終わった。
彼は焦っていた。
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▼ 焦った女、マッチングアプリを貪る。— はじめに
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