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焦った女、待ち構える。

雨の日、コンビニの庇の下で
マッチングアプリの男を待っていた。
30分以上遅れて現れた年下の彼は、
車から降りずに私を呼んだ。
その瞬間、帰ることを決めた。
マッチングアプリ体験談。


私は仁王立ちをしている。コンビニの庇の下で。

なぜこんなことになったのか…

彼と待ち合わせをしている。
彼のことはヘアビューロンと呼ぼう。
艶やかな髪の彼にぴったりだ。私より若く、
メッセージに生意気さをにじませていた。
私は彼を待っているのだ。
どれくらい経っているのだろう。
今日はあいにくの雨だ。
私はコンビニの中に入って買う気はないけれど、
手持ち無沙汰でお菓子を眺めている。

ヘアビューロンから連絡が来た。
大きな施設の近くを通るルートのため、
遅れるそうだ。
土地勘がないのだろう、
雨の日のその周辺は特に混む。
やっかいなルートだ。
私は「気を付けて」と返事を送った。
ずっと同じところにいるのも何なので、
隣の列に移る。

店員の視線に気づいた。それもそうだ。
広くはない店内だ、何も手に持たず目的もなく
店内をうろついているのだ。
イートインでもあれば、
飲み物を買ってやり過ごせるのだが…
店選びに失敗した。

店員だって忙しいのだ。
私を気にするというタスクを消してあげよう。
困った私は奥の手を使う。
私はATMを操作して店を出た。

出たはいいものの、雨はやみそうにない。

傘は持っているが、
ずっとさして佇んでいたら完全にホラーだ。
仕方なく私は、
コンビニの庇の中で駐車場が見渡せる位置を探す。

見つけた。
ここでソワソワしてたら完全に不審者だ。
私は腹をくくった。

だから私は仁王立ちをした。
さながら、コンビニの用心棒だ。
駐車場を一望し、入ってくる車を1台、
また1台と凝視する。
ワゴン車かまさかの軽トラか? 
車が来るたびドキドキする。
このコンビニは結構盛況だ。

いい加減そろそろつかないのか?
私はしびれを切らし始めた。
ヘアビューロンとはまだ会ったことがない。
詐欺アカウントかもしれないし、
来る気がないのかもしれない。真意がわからない。

かれこれ30分以上が過ぎた。
もうすぐ着きますとの連絡。
私はちょっと気疲れしていた。

短い間隔で3台の車がやってきた。
2台の運転手はすぐに降りてきて、
コンビニへと入っていった。
最後の1台は止まったまま出てこない。
出てくる気配がないので仮眠か?と思い、
次の車を待つ。

駐車場のこのあたりにいますと連絡が来た。
仮眠かと思っていた、あの車だ。

私は少し不愉快だった。
中と外で私は待っていたのだ。
整えた髪も湿気に負け始めていた。
遅れてきているのだ、
車から出るそぶりは会ってもいい。
私はこの時点で帰りたくなったが、
ひとまず車に近づいた。

助手席側に行く。
彼は車から出ず助手席の扉を開け、
「こんにちは」と言った。
私は面を食らった。
「遅くなっちゃってごめん」くらいは
でると思っていたのだ。
ヘアビューロンは少し微笑んでいた。
いささかアイロニーを感じる笑い方だ。
彼の髪はさらさらで綺麗に整っていた。
それが嫌に目についた。

氣志團から学んだのだ、
私は違和感に目を瞑らないことにした。

「すみません。帰ります。」と言って
私は歩き出した。
少し離れてから、彼からメッセージが届く。
「残念です」と。
きっと感性が合わないのだ。
何が問題だったのかわからなかったようだ。

このまま何も言わないと、
彼はまた同じことをしそうだ。
悩んだ末に謝罪とともに、初対面で車から出てこられずあなたのことを少し怖く感じてこのまま車に乗るのをためらったという旨を送った。

それで終わったはずだった…
彼は後日、私とのチャット欄を
感情のゴミ箱にしたようだった。
落ち込んだ文、怒りをあらわにする文、
日替わりだった。忙しい情緒だ。
やっぱり納得いかないのだ。
悲しみ、怒り、悔しさに
だんだんと耐えられなくなっていったのだろう。
その混ざりあったものを
うまく処理するのは確かに難しい。

私は考えた。
おそらく言い負かすことはできるだろう。
だがそんなことしたくない。


ヘアビューロンからすれば、
よくわからない渋滞した道を
越えてやって来たのだ。
私は自分の顔を一瞥して帰って行った無礼千万な女にしか見えないだろう。
私が言った言葉をどう受け取るのかわからない。
私もスマートな対応ができればいいのだが、
力不足を痛感した。


私が凝視した運転手たちに
気味悪がられてしまった。

私は焦った。




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▼ 焦った女、マッチングアプリを貪る。— はじめに

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焦った女 ここまで読んでくださってありがとうございます。 ここで書かせてもらえているのは、 読んでくださる方がいるからです。 チップは、地味に役立つ乾電池代として大事に使います。 シェアしてくださるのも、同じくらい嬉しいです。 誰にも読まれず、私は焦っています。