我が輩はQである
我が輩はQである
名はもちろんある
でも、言わない ( たぶん )
幼い頃から、自分の中に男の子と女の子が住みついていた
一応、外ヅラは女の子の方だ
これまでの人生で2度、「金の斧 • 銀の斧」のあの池 (泉?) からザバッと現れて「はい、どっち ⁉ 」と問う女神様の役を仰せつかった
つまりは、外ヅラはなかなか女の子だったようだ
だがその分、私の中の“ 男の子 ”は不満が募る
押し込まれているような閉塞感を感じ、時折無性に外に出たくなる
小学生の時、家から車で1時間程離れた誰も私を知らない (ハズの) ブドウ園へ家族でブドウ狩りに行った時などは
ショートパンツだったのを良いことに、男の子全開ではしゃぎまくった
すると、農園のお姉さんに「お兄ちゃん」と呼ばれ、とてつもなく嬉しかった
「うおっしゃー!」と高揚感で羽が生えたようだった ( そしてお姉さんは美人に見えた )
その後中学校では演劇部に入り、3年間で演じた役は全て男役で
日常で“ 男の子 ”を堂々と表現して良い絶好の場であり
物凄い自由を感じた
空気が美味しい ! って程にイキイキとしてしまった
昼間ほとんどを一応女の子として過ごしている分
取り返すように夜、つまり寝ている時
夢の中で私は男の子だった
何処かの女性だったり “ 私 ” だったりすることがほぼ無く、毎回違う外見で幅広い年齢層の男性なのだ

私の夢は常にフルカラーで
味も匂いもあるし、微妙に吹く風さえも感じられる
現実と同じような目線で世界を見ている事もあるが
ほぼ外側から自分を見ていて
つまりは映画のように主人公 ( = 私 )が映っ ていて行動し
でも感情や思考は私なのだ
他の人達がどのような夢を見ているかなんて知りようもないので
生まれついた性別以外で毎晩夢を見ている事が一般的ではない事は、大人になってから知った
私は母親になったことがない
もちろん父親にもなった事はない
が、夢の中で私は父親になった時がある
ファンタジー系の夢で
我が一族は人型にも成れるが本性はケモノであり、何故か舞台も日本ではなく北欧のようだった

私には将来を嘱望する自慢の息子が1人おり
彼は大きな、美しい猛禽だった
彼が大空を悠々と飛んでいる姿を見ては、私は自分の後継者を誇らしく思っていた
が、あろうことか
彼は人間に撃ち落とされてしまう
絶望
未来を託す希望の存在が
事もあろうか人間に奪われてしまった
私の、未来が
その哀しみのまま、私は夢から覚めた
本当に泣いていて、枕はビショビショだ
『凄い夢だったな』
と、あまりのリアルさに驚きつつ、あることに気が付いた
女性、つまり母親視点ならば
お腹を痛めた我が子を失った哀しみは
これも想像でしかないが我が身を削られたような痛みなのではないだろうか?
だが夢での私の痛みはそういうものでは全く無く
この世界では特殊な一族だということもあるのだろうが
己の未来を託す存在を失った、という
父親としての怒りや哀しみだったのだ

その頃は ” Q “ なんて定義は無かった
もしくは知らなかった
なので “ 生まれ変わり ” を信じている私としては、男だったことが多かったんだろーなぁ、それでよっぽどイイ目を見ていたから物心ついた時には『男に生まれたかった』って気持ちが強かったんだろうなぁ、と考えていた
何せ夢の中の私はイキイキとしている
普段押し込めていた分、これこそ自分だ ! と思えた
だけど、確実に女の子の私もいる
だから手術をしてまで男に変わりたいとかはない
でも小さい頃 何かで
「オリンピックに出場した女性選手がある時男性に変わった」
とかいう話を耳にした事があり
私は密かに
『自分もきっと、アル時が来たら男になるのかもしれない♡』
と心をトキメかせてはいた
だが、いくら待てど暮らせどそのアル時は来なかった
そして長い間外ヅラは ” 女 “ として暮らしていた私は、もし本当に “ アル時 ” が来て急に
「私これから男でーす」
ってコトになっても途轍もなくめんどくさいな、 と考えるようになった
小さい時から自分の内側の世界の当たり前と、外の世界の当たり前の違いにギモンを抱いていた私は
心理学や民俗学の本を読み漁るようになっていた
母方の祖母が仏教系の宗教家な上
私は幼稚園がキリスト教系だったので、お釈迦様もイエス様も同じこと言ってるなぁ〜と感じていたし
神様や仏様には男も女もない、もしくはどちらでもある、という宗教観が当たり前になっていた
人間だって心理学で
アニマとアニムスどちらの性もそれぞれ持っている、って事なのだ
だったら私はどちらか一方を選ぶ必要はないし
どちらも私 ! と仲良くしていけば良いんじゃない !?
と、
どちらかを選ぶよりも統合することを選択した
そしてその統合とは
どちらも混ざり合って一見ツルンと真っ平らに消えてしまうかの様なものではなく
どちらも生きていて
必要な時に必要な方が出てくるという
両方の特性を活かした
“ 私というものを私たらしめる ”
個性としての統合を目指そうと思った
そう決意して数年
予想だにしていなかった事が起こる

ある夜の夢
私の姿は十代終わりから二十代始めの青年だった
私はショッピングモールの中に居た
恋人である “ 彼 ” もまた、そこに居た
そう、私達は同性の恋人同士なのだ
都会のショッピングモールで、とても賑わっている
なのに、この時の私達は何故かどうしてもここで kiss をしたかった
壁や柱に隠れて何度も試そうとするが
その度に人が来てしまい断念する
その繰り返しに若い二人は益々燃え上がり、どうしても思いを遂げたいとやっきになってゆく
そうして暫くトライしていた時、ふと、二人きりになった
やっと、チャンスが訪れた
そして彼が私の髪に優しく指を差し入れたその時・・・

とてつもないエクスタシー
頭頂から私の全感覚が飛び抜ける
世界が消えて感覚のみになる
─── そうして
夢から覚めた
その頃の私は派遣会社に登録していて、箔押しを生業としている会社に出向いていた
そこで足踏み式の機械に手帖のカバーとなる合皮に
箔押しをするという作業を担当していた
決められた位置に合皮をセットして足踏みをすると
合皮の上に分厚い熱された金属板が降りてくることで箔押しをする
つまりはプレス機の操作だ
最初のうちはこわごわと作業していたものの、この頃には随分と慣れてきて
人と会話したり考え事をしながらでもテンポ良く押せるようになっていた
が、一歩間違えばとても危険な作業であることは間違いない
その作業中に、私は今朝方見たあの夢を思い返していた
『スゴかったな~✨』
とあの頭頂から突き抜ける感覚を思い返した時 ─────
スポンッ
私は
頭から抜け出していた

抜け出した “ 私 ” は上昇し
あっという間に見知らぬ空間というか「場」にいた
そして
前方に
───── 圧倒的な存在 ─────
カタチはない
ただ “ ソコ ” にいる
在る
その存在から
今まで経験したことのない
まったく知らなかった
── 愛そのもの ──
が
私に向かって
強烈な波
というか光そのものとしてほとばしり
私を隅々まで ──
身体はなかったけれど例えるなら
細胞一つ一つ
素粒子一つ一つ
私を構成する全てを貫き
通りすぎ
そうして
世界 (というより全て) へと
その光が行き渡った
一瞬にしてそれは行われ
私は圧倒されたにも関わらずとても冷静に全てをミテいた
そして知った
何処にも「影」が存在していないこと
光あれば影が現れる
だが
この存在からほとばしった “ 愛 ” という光からは何処にも影が現れない
存在できない
全て光に照らされている
そしてその圧倒的存在から
波のように次々と
強烈に
「 愛している 」
という
感情?
感覚?
きっとどれにも当てはまらない
ただただ純粋な愛そのものが
私に向けて放たれ
私はその波の中で
コレを知れば
争いなど全て無くなるな
こんなにも愛されているコトを知れば
満たされ
何も奪い合うことなど無くなり
世界は平和になるな
そう感じていた

気が付くと、私は元の場所で作業を続けていた
全く時間は経っていないのか、時計を確認してはいないので判らないが
意識がなかったハズなのに無事に作業は行われていた
私は自分に起こったこの出来事を
“ 小悟り ”と呼んだ
この時点では “ これ ” が何だったのかを知る知識はなく
けれど決定的に私の人生における重大な経験であることは間違いなく
私という存在に埋め込まれた大切な種なのだということは感じていた
決して「悟った」訳ではなく
日々の暮らしが続くわけで
その中で
相変わらず怒ったり
欠乏感を感じたり
自分は愛されるに値しないと思ったり
まったくもって悟りなどとは程遠く
けれども折に触れ思い出すことによって感謝を感じ
この暮らしの中で私は引き続き学んでいかなければならない
学び続けよう
そう改める
なので、“ 小悟り ”
真理 (と今は感じている) を一瞬経験した事により
それまでも私の「内」と「外」に感じていたギャップ以上に
この「世界」と「真理」とのギャップに
今
痛切に感じている
見ているもの全ては
不確定 • 不確実なものであり
それならば
決めつけない
何でもありでいたい
だから
私は私
何者でもない
カタにはまらない
性別も年齢も飛び越えたい
地球人である事すら飛び越えたい
だから私はQ (Question )
不特定のQ
他と同じでなくてよい
それは
誰だってそう
オリジナルな私を愉しみ
慈しんでいこう
