見出し画像

看護師はどこまでできる?――「包括指示でできること/できないこと」

はじめに

配属初日からずっと迷っていました。
「採血は?12誘導は?酸素の増減は?“先生の指示”が無いと全部ダメ?」
そんな中、最近「気管挿管は看護師でも(医師の指示と体制のもとで)実施しうるケースがある」と知って、正直「へえ!」となりました。同時に、看護師免許の“できる範囲の広さ”と“判断に伴う責任の大きさ”をあらためて実感。
結論はシンプルです。看護師の行為は“医師の指示”が前提。ただし、その指示には2種類があります。

  • 具体指示:個別の患者にそのつど出る指示(例:「山田さんに今すぐ採血」)

  • 包括指示(プロトコル):あらかじめ条件と範囲が決めてある指示(例:「胸痛が出たら12誘導を直ちに実施して医師へ提示」)

包括指示があると、該当した瞬間に看護師の判断で動けます。
この記事は、「包括指示があればできること」「包括指示があってもできないこと」、そして「院内の認定や教育体制が前提の“上級だけど看護師で担う領域”」を新人目線でわかりやすく整理します。


まず結論

  1. できるかどうかは“法律 × 院内ルール(手順書)”で決まる

  2. 包括指示の範囲なら、看護師の判断でその場で実施できる

  3. ただし患者の状態を大きく変えうる高リスクの処置は不可(別研修=特定行為が必要)


包括指示があれば「看護師の判断で実施できる」代表例

※病院の手順書・教育体制の有無が前提。まず自施設のルールを確認しましょう。

  • 静脈からの採血
    プロトコルに「胸痛時は心筋マーカー等の採血を実施」などと明記されていれば、症状が出た時点で実施 → すぐ報告が可能。

  • 12誘導心電図
    胸痛・失神・動悸などのトリガーが決められていれば、看護師トリガーで“すぐ取る”運用ができる。
    (院内の「発症から○分以内」基準があるとズレなく動けます)

  • 末梢静脈ルートの確保(手背・前腕・上腕が基本)
    「点滴が必要な所見が出たら」など、条件が決まっていれば実施可。
    下肢(足背・下腿)は成人では感染リスクが高く後回しが一般的。
    首の静脈(外頸)は“末梢”扱いだが上級オプション。施設によっては医師のみ。

  • 頓用薬(症状時の内服・吸入・座薬など)
    「不眠時」「発作時」など条件・用量・上限回数が処方や指示簿に書いてある=包括指示。条件に合えば看護師の判断で投与→記録→報告。

  • 酸素療法の開始・増減・中止
    「経皮的酸素飽和度(SpO₂)が○%未満で開始/○%以上を保てる範囲で1Lずつ調整」などの数値目標が決まっていれば、その範囲で看護師が微調整できます。
    ※数値目標が曖昧な場合は“勝手に増減しない”。必ず確認。

*補足:気管挿管は施設・診療科・体制次第で運用が異なります。実施可否は医師の指示・監督、十分な訓練、院内ルールが前提。まず自施設の方針を必ず確認してください。


包括指示があっても「看護師だけでは実施できない」代表例

患者の状態を大きく変えうる“高リスク処置”。別途の研修(特定行為)や医師の実施が必要です。

  • 動脈からの採血(動脈血液ガス)

  • 中心静脈カテーテルの挿入・抜去、末梢から中心へ進む長いカテーテルの挿入

  • 人工呼吸器の“設定変更”や、気管チューブ関連の調整

  • 鎮静薬や昇圧薬などの“用量調整”

  • 各種ドレーンの抜去・侵襲的な処置の一部

迷ったら「この行為は患者の状態を大きく動かしうるか?」で線引きすると整理しやすいです。


院内“認定”や教育体制が前提の〈上級だけど看護師で担う〉領域

法律的には“看護師で可能”でも、**院内の到達基準・スキルチェック・資格(院内認定)**が必須なことが多い、技術負荷の高い分野です。

  • 男性の尿道カテーテル(バルーン)交換
    男性は尿道が長く、前立腺部を通るため難易度が高い。解剖の理解・無菌操作・抵抗時の中止判断が必須。多くの施設で実技評価(チェックリスト)や同席回数の基準を設けています。

  • がん薬物療法に使う末梢静脈ルートの確保
    漏出で組織障害を起こす薬剤があるため、血管選び・固定・観察がシビア。外来化学療法室や病棟の独自認定(講義+実技+年次更新)を設ける施設が多い。
    *関連:皮下に植え込んだ点滴ポート(いわゆるポート)への穿刺も、院内研修修了が条件の運用が一般的。

  • 透析シャントの穿刺(血液透析の出入口に針を入れる)
    針の選択、止血、合併症対応などの熟練が必要。透析部の教育プログラム実施者認定が整っている施設で担当します(看護師や臨床工学技士が担うことが多い)。

  • 血液培養の採取
    皮膚消毒・順序・採取量など無菌手技の正確性が求められるため、教育→監督下での実施→合格判定の流れを採る病院が多い。

  • 輸血の開始・監視・副作用の初期対応
    ダブルチェック・観察項目・副反応時の初動までがセット。院内の輸血療法委員会の研修や、年次のeラーニング+テストを求められるケースが一般的。

  • 超音波(エコー)を使った末梢静脈の確保
    いわゆる「静脈が取りにくい人」への対応。エコー機器の取り扱い・穿刺角度・合併症回避の研修が必要で、到達目標の件数を決めている施設もあります。

どれも「できる/できない」だけでは語れず、教育体制や監督体制が整っていることが安全の条件


ケースで理解:現場でどう動く?

ケース1:突然の胸痛を訴えた

  1. 12誘導心電図を直ちに実施(包括指示がある前提)

  2. 同時に採血を準備(プロトコルに項目がある場合)

  3. 医師へ速報(取得時刻・所見・痛みの様子)

  4. 酸素が必要な数値なら開始(基準がある場合のみ)

ケース2:経皮的酸素飽和度が下がってきた

  1. 体位・気道を先に整える

  2. 基準に沿って酸素を開始/微調整

  3. 改善しなければ即報告(基準外の増量はしない)

ケース3:点滴が漏れている、すぐ再確保が必要

  1. 上肢の別ルートを最優先で再確保

  2. 難しければ、先輩に相談+エコー導入の有無を確認

  3. 首の静脈は“上級オプション”(施設ルールを厳守/医師同席が求められる場合あり)


すぐ使える:プロトコルの“最小セット”例(院内向け)

  • 胸痛・失神・動悸プロトコル
    対象:①胸痛/胸部圧迫感 ②失神/前失神 ③新規の強い動悸
    看護師の実施:12誘導心電図を直ちに取得 → 記録と同時に医師へ提示
    逸脱:取得不可・重度不穏・意識低下 → 直ちにコール

  • 酸素療法プロトコル
    目標:経皮的酸素飽和度 92~94%以上(慢性呼吸不全など個別目標は別紙)
    流量:2L/分から開始、1L単位で調整可/90%未満は医師へ連絡
    中止:目標を安定して保てたら1Lずつ減量→中止判定

  • 頓用薬プロトコル
    条件・薬剤・用量・上限回数を明記(例:不眠時○mg 1錠、1夜2回まで)
    実施後:効果・副作用の観察、実施時刻と症状の記録、必要時は報告


よくある誤解Q&A

Q. 包括指示があれば、どんな採血でも勝手に追加していい?
A. いいえ。項目も含めて指示の枠内で行います。追加が必要なら確認。

Q. 12誘導は緊急なので独断でOK?
A. いいえ。“緊急だからこそ”事前の約束(包括指示)を作るのが正解。手順書が無ければ確認してから。

Q. 首からのルートはいつでもOK?
A. いいえ。上級オプション。施設により禁止・医師のみの運用あり。まずは上肢、ダメなら上級者にエスカレーション。


まとめ

  • 看護師の行為は指示が前提。そのうえで、包括指示があると“該当時に看護師の判断で実施”できる

  • できる代表例:静脈採血/12誘導心電図/末梢ルート確保(上肢中心)/頓用薬/酸素の開始・増減

  • できない代表例:動脈からの採血/中心静脈関連/人工呼吸器の設定変更/鎮静・昇圧薬の用量調整 など

  • 院内認定や教育体制が前提の“上級だけど看護師で担う”領域が多数ある(男性の尿道カテーテル交換、化学療法ルート、透析シャント穿刺、血液培養、輸血など)。=それだけ高度な技術ということ。


包括指示で“できる”ということは、
その瞬間に看護師の判断で“やる・やらない・どこまで”を決めるということ。
だからこそ、日々の勉強と訓練があなたの“根拠”になり、患者さんの安全につながります。

あなたの病棟では、どの行為まで看護師が担っていますか?
コメントで教えてください。この記事が役に立ったらスキをいただけると、次の執筆の励みになります。


関連記事

いいなと思ったら応援しよう!

精神科ナースFUMIのどん底日和 いただいたチップは、教材購入や発信活動の継続に活用させていただきます。 応援してもらえると、本当に励みになります!