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逃げたい現実を、住みたい現実に変える方法


「ワークライク」バランスという生き方


イギリス、ロンドン郊外の小さな町に、定期的に人が集まる場所がある。
街角の教会なのだけれど、定番の長椅子ではなくテーブルと椅子が点在する、どこかカフェのような雰囲気。天井は吹き抜けで高く、声を張らなければ届かないくらい広い空間に、様々な人種、20代から80代までの人々が集まる。それぞれ異なる仕事や家族背景を持ちながら、自分の考えや問いを持ち寄る、そんな場所だ。
ある日、こんなお題が突然出された。

「あなたがいつも持ち続けているモットーは何ですか?今すぐ、30秒以内でどうぞ。」

30人ほどが集まっていたその場で、ほとんどの人が少し固まった。準備なんてない。でも次々と立ち上がり、言葉が紡がれていく。祖父母がよく口にしていた言葉、尊敬する人物の名言、ふとした瞬間に心に刻まれた一文。モットーなんて考えたこともない、と言い始める人もいた。それでも言葉を探しながら、口を開く。
意識したことはなくても、自分の中のどこかにずっと存在していた、目標や志というものがある。この場はそれを、静かに浮かび上がらせる時間だった。
私の番が来たとき、口をついて出たのはこの言葉だった。

「Build a life you don't need a vacation from.」

休暇を取らなくてもいいような人生を、創る。

この言葉に出会ったのは、仕事と人間関係の過度なストレスで、精神的に崩壊しかけていた頃のことだ。
当時の私は、「やるべきこと」だけで毎日が埋まっていた。会社員として積み上げた責任、期待に応え続けることへのプレッシャー、人間関係の摩擦。働くことと私生活のバランスは完全に崩れていて、限られた有給休暇を申し訳なさそうに取り、旅先でやっと息をついていた。
でも旅行から帰る日には、決まってこのため息が出た。

「ああ、また現実に戻らなきゃ……」

そのとき気づいたのだ。
現実って、そんなに脱出したいものなのか。
現実から逃げたいと思いながら生きることは、なんてもったいないことだろう。人生の大半を占める「日常」が、脱出したい場所であるなら——それは生きることそのものを、消耗として扱っていることになる。

「ワークライフ」ではなく、「ワークライク」
ここで私が使いたい言葉は、「ワークライフバランス」ではない。
「ワークライク(Work-Like)バランス」だ。
「ライフ(Life)」——人生と仕事を天秤にかけてバランスを取るのではなく、「ライク(Like)」——好きなことと、働くことが同じ方向を向いている状態。仕事が義務ではなく、自分が好きなことの延長線上にある感覚。それが私の言う「ワークライクバランス」だ。

でも誤解しないでほしいのだけれど、これは「好きなことだけをやって生きる」という夢物語ではない。

やるべきことと、やりたいことは、矛盾しない


ワークライクバランスを本当に手に入れている人たちを、私はたくさん見てきた。
彼らは、働かなくていいほど裕福なわけじゃない。働かないで、ただレイジーに毎日を過ごしたいと思っているわけでもない。でも、働くことが好きなことで、好きなことが働くことでもある。そして…ここが大切なのだけれど…やるべきことも、きちんとやっている。
クライアント対応、細かい事務作業、気が進まない交渉、思い通りにいかないプロジェクト。そういうものからは、誰も完全には逃れられない。
でも彼らが違うのは、その根っこに「好きなこと」があるということだ。

やりたいことを基盤に置いているから、やるべきことに追われても、消耗しきらない。好きなことをやり続けられる仕組みを、意識的に作っているから、日常が「逃げ出したい場所」にならない。
やるべきことと、やりたいこと…この二つは対立しているように見えて、実は同じ方向に向けることができる。それに気づいたとき、私の中で何かが変わった。

私が気づいた、ワークライクバランスの育て方


ワークライクバランスは、ある日突然手に入るものではなかった。
最初にしたのは、自分に問いかけることだった。やるべきことの中に、やりたいことの欠片はないか。 完全に好きではなくても、その仕事のどこかに、自分が大切にしているものと繋がっている部分はないか。

その欠片を見つけて、少しずつ育てていく。好きなことをやり続けられる時間と仕組みを、意識的に作っていく。「やるべきこと」はある。規制対応、事務、家事、総務。

これらすべての根っこにあるのは「人の人生や営みに関わることが好き」という感覚だ。だから、やるべきことがやりたいことの邪魔をするのではなく、やりたいことの一部として存在している。それを積み重ねていくうちに、やるべきことと、やりたいことの境界線が、少しずつ溶けていった。
毎日好きな場所で、好きな仕事をして、心にゆとりがある。だから「ここから逃げ出したい」とは思わない。

旅行に出るとしたら、逃避ではなく、新しい文化や人々をゆっくり味わうために。そしてその体験も、また自分の現実の一部にしていく。

現実を、住みたい場所に変えるために


ワークライクバランスを手に入れるために、最初にしたことは一つだった。
思想を変えること。

「自分にも可能だ」と信じること。

そして、その仕組みを具体的に作っていくステップを、一つずつ踏んでいくこと。夢想するだけでは何も変わらない。

でも今の世の中には、その方法がたくさんある。

最初の一歩は、ただ一つの決断だ。

逃げたい現実を、住みたい現実に変える…そう決める、そのことから始まる。

現実は、変えられる。あなたが創るものだから。

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