ハーランド、また2発 ノルウェーが28年ぶりのW杯で決勝トーナメントへ
ノルウェー3-2セネガル。
また、この男が決めた。
アーリング・ハーランドが2試合連続の2ゴール。
初戦のイラク戦に続き、これで今大会4得点。28年ぶりにワールドカップへ帰ってきたノルウェーを、わずか2試合でノックアウトステージへ導いた。
ただし、この試合はハーランドだけを見て終わるには、もったいない。
負傷交代で急きょピッチへ入った選手が先制点を奪い、マルティン・ウーデゴールが中央から攻撃を動かし、セネガルも最後の最後までノルウェーへ迫った。
優勝候補フランスと同じ2連勝。
次はいよいよ、グループ首位を懸けた直接対決だ。
ノルウェーは、ただハーランドへボールを集めるチームではない。
ハーランドが決める形を、チーム全体でつくれる。
その強さが、少しずつ見えてきた。
第1章 28年ぶりのW杯で2連勝
ノルウェーにとって、今大会は1998年以来、28年ぶりのワールドカップだ。
久しぶりの大舞台。
しかも48チーム制となった新しい大会で、初戦から簡単な試合など一つもない。
それでもノルウェーは、イラクとの初戦に4-1で快勝した。
そして第2戦では、アフリカの強豪セネガルを3-2で撃破。
勝ち点を6へ伸ばし、フランスとともにグループステージ突破を決めた。
2試合で7得点。
数字だけを見ても、攻撃力は十分だ。
しかし、ノルウェーの本当の強みは、単純な得点数ではない。
ハーランドという明確なゴールへの出口があり、その手前でウーデゴールが攻撃の方向を決める。
さらに、両サイドの選手が幅を取り、相手の守備ラインを横へ広げる。
中央にはハーランド。
その周囲に生まれたスペースを、別の選手が使う。
「ハーランドを止めれば終わり」ではない。
むしろ、ハーランドを警戒するほど、別の場所が空いてしまう。
セネガルも、その難しさに苦しんだ。
第2章 負傷交代から生まれた先制点
試合開始直後から、ノルウェーは前へ出た。
3分にはコーナーキックからクリストフェル・アイェルが決定的なヘディング。
しかし、セネガルのGKエドゥアール・メンディが見事に防いだ。
ノルウェーが押し込む展開だったが、13分にアクシデントが起きる。
右サイドバックのユリアン・リエルソンが負傷。
試合の序盤で、交代カードを使わざるを得なくなった。
戦術を考える側にとって、早い時間の負傷交代は難しい。
試合前に用意したプランを、その場で組み直さなければならないからだ。
しかし、その交代が先制点につながった。
代わって右サイドバックへ入ったマルクス・ホルムグレン・ペデルセン。
43分、ウーデゴールがハーランドを狙って送ったボールを、セネガルのカリドゥ・クリバリが処理しきれない。
こぼれ球は右サイドへ流れた。
そこへ走り込んだのがペデルセンだった。
迷わず右足を振り抜き、ゴールネットを揺らす。
本来なら、負傷交代はチームにとって誤算だ。
だがノルウェーは、その誤算を先制点へ変えた。
交代で入った選手が試合へすぐ入り、チャンスが来た瞬間に仕留める。
代表チームでは、先発11人だけで大会を勝ち抜くことはできない。
ベンチから出た選手が流れを変えられるか。
ペデルセンの一撃は、ノルウェーの選手層を示すゴールでもあった。
第3章 ウーデゴールからハーランドへ
前半終了間際、ハーランドはすでにゴールへ近づいていた。
メンディからボールを奪い、角度のない位置から放ったシュートは右ポストを直撃。
さらに、高い打点からのヘディングもメンディに阻まれた。
ゴールこそなかったが、セネガルの最終ラインには大きな圧力がかかっていた。
ハーランドは、ただゴール前で待つ選手ではない。
相手の背後へ走り、GKへもプレッシャーをかけ、センターバックへ体をぶつける。
その動きによって、相手守備陣の集中力を削っていく。
そして後半開始直後、ついにゴールが生まれた。
48分、ノルウェーがボールを奪って速攻へ移る。
ウーデゴールが中央を持ち上がり、ハーランドの走るコースを確認する。
そして、強すぎず、弱すぎないスルーパス。
ハーランドはエリア左へ抜け出し、豪快にネットへ突き刺した。
このゴールの主役は、もちろんハーランドだ。
だが、その前にウーデゴールの判断がある。
早く出しすぎれば、ハーランドが追いつけない。
遅ければ、セネガルの守備が戻ってしまう。
味方のスピードに合わせて、最もシュートを打ちやすい場所へ届けた。
ハーランドの決定力。
ウーデゴールのパス。
ノルウェーが誇る2人の中心選手が、一本の速攻でつながった。
第4章 セネガルは倒れなかった
0-2。
追い込まれたセネガルだったが、ここから簡単には崩れなかった。
53分、パプ・ゲイェが中央へ縦パスを入れる。
受けたサディオ・マネは、ボールを長く持たない。
ワンタッチで浮かせ、ノルウェーの最終ラインの背後へ送った。
抜け出したイスマイラ・サールが、相手DFと交錯しながらもゴールへ流し込む。
1-2。
セネガルらしい、力強い攻撃だった。
まず中央へ縦パスを入れる。
マネがワンタッチで攻撃の速度を上げる。
最後はサールが体勢を崩しながら仕留める。
一人で数人を抜いたわけではない。
少ないタッチでボールを前へ進め、相手守備が整う前にゴールまで到達した。
ノルウェーにとっては、2点差にした直後の失点。
試合を落ち着かせたい時間帯だった。
ここでセネガルへ流れを渡してしまえば、試合は分からなくなる。
しかし、その5分後。
再びハーランドが立ちはだかった。
第5章 ハーランドの体がゴールを向く
58分、ノルウェーが右サイドから攻める。
ペデルセンがマイナス方向へ折り返し、そのこぼれ球を後半開始から入ったパトリック・ベリが拾った。
ベリがエリア左から再び中央へ折り返す。
待っていたのはハーランドだった。
ただし、簡単な体勢ではない。
ゴールへ正面を向いていたわけではなく、体をひねりながら右足で合わせた。
それでもシュートはゴールへ飛ぶ。
3-1。
この得点に、ストライカーとしてのハーランドの凄みが詰まっていた。
ゴール前では、毎回きれいな形でボールが来るわけではない。
少し後ろへずれる。
相手DFと体がぶつかる。
ボールの高さも、速さも一定ではない。
それでも、最後に足を合わせる。
ハーランドは、シュートを打つ前に自分の体をゴールへ向けるのではない。
難しい姿勢のままでも、シュートだけをゴールへ向けられる。
だから、味方は多少ボールがずれても中央へ送れる。
ハーランドが何とかしてくれるという信頼があるからだ。
この安心感は大きい。
良いクロスだけがチャンスになるのではない。
少し乱れたボールも、ハーランドが得点機へ変えてしまう。
第6章 ハーランドだけではない
ノルウェーの攻撃を見ていると、どうしてもハーランドに目が向く。
2試合で4得点。
それだけ決めれば、当然だ。
しかし、ハーランドだけで7得点を奪ったわけではない。
ウーデゴールが中央で前を向く。
サイドバックが高い位置を取る。
相手守備が中央へ集まれば、外からボールを運ぶ。
外へ広がれば、ハーランドのいる中央へ入れる。
ノルウェーの攻撃には、狙いがある。
特に重要なのが、ハーランドの周囲にいる選手たちだ。
ハーランドへ直接パスが通らなくても、そのボールを相手DFが処理しきれなければ、こぼれ球が生まれる。
先制点も、ウーデゴールがハーランドへ出そうとしたボールから始まった。
相手は、ハーランドを自由にさせないため、強くボールへ寄せる。
その結果、クリアが小さくなり、別の選手にチャンスが回ってくる。
ハーランドは、ゴールを決めるだけではない。
そこにいることで、相手守備の判断を急がせる。
ノルウェーは、そのこぼれ球や空いたスペースを逃さない。
エースの力を、チーム全体の攻撃力へ変えられている。
これが、今大会のノルウェーの怖さだ。
第7章 最後まで続いたセネガルの反撃
試合は3-1のまま終わるかと思われた。
しかし、セネガルは諦めなかった。
後半アディショナルタイムの93分。
ニコラス・ジャクソンのパスを受けたサールが、この日2点目を決める。
3-2。
残り時間はわずかだったが、スタジアムの空気は一気に変わった。
ノルウェーはボールを遠くへ運び、時間を使いたい。
セネガルは、とにかく前へ入れたい。
最後まで緊張感は消えなかった。
ノルウェーは逃げ切った。
ただ、2失点した事実は次戦へ向けた課題でもある。
攻撃で試合を優位に進めても、一つの縦パスや一度の対応の遅れから失点している。
次の相手はフランスだ。
エムバペ、デンベレ、オリーセ。
セネガル戦以上に、少しのスペースが失点につながる。
ハーランドが2点を決めても、3点を奪われれば勝てない。
フランス戦では、ノルウェーの攻撃力だけでなく、守備の完成度も問われる。
第8章 エムバペ対ハーランドへ
グループIは、フランスとノルウェーが2連勝。
勝ち点6で並んだ。
フランスは2試合で6得点1失点。
ノルウェーは7得点3失点。
そして最終節は、両国の直接対決だ。
世界が待っていたカードと言っていい。
エムバペ対ハーランド。
どちらが点を取るのか。
どちらがグループ首位で次のラウンドへ進むのか。
ただし、試合を見るときは、2人がボールを持った瞬間だけでは足りない。
エムバペがどこへ走り、ノルウェーの最終ラインを下げるのか。
ハーランドへボールが入る前に、ウーデゴールがどこで前を向くのか。
フランスはハーランドへのパスコースを消すのか。
ノルウェーはエムバペの背後への動きをどう管理するのか。
スター同士の得点争いでありながら、勝敗を分けるのは、その周囲の選手たちかもしれない。
ノルウェーは28年ぶりのワールドカップで、すでに決勝トーナメント進出を決めた。
だが、彼らはまだ満足していないはずだ。
ハーランドは試合後、「ワールドカップはいいね!」と語った。
その言葉通り、彼はこの舞台を楽しんでいる。
初出場の緊張より、ゴールを奪う喜びが上回っている。
2試合連続2ゴール。
次の相手は優勝候補フランス。
ハーランドが本当の意味でワールドカップの主役になるための舞台が、整った。
次の一戦は、グループステージの最終戦ではない。
大会の勢力図を動かす90分になる。
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