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せびれのないクジラ ハナハナ 第四話 ちえって なあに?

青く広い海の中に、ハナハナという子どものセミクジラがいました。

ハナハナは今日も気持ちよさそうに歌っています。

るるるー。

らららー。

歌声は青い海へやさしく広がっていきました。

そのときです。

ごとん。

ごろん。

岩場の向こうから小さな音が聞こえてきました。

「なんだろう?」

ハナハナはそっと近づいてみました。

すると、一匹のタコが貝殻を器用に積み重ねています。

「こんにちは。」

ハナハナが声をかけると、タコはゆっくり振り向きました。

「おじょうちゃん。」

「こんにちは。」

タコさんはにっこり笑いました。

「わしはタコじいじじゃ。」

「この海で長いこと暮らしとる。」

「タコじいじ?」

「そうじゃ。」

「みんな、そう呼んどるよ。」

ハナハナは思わず笑いました。

「何をしているの?」

「おうちを作っとるんじゃ。」

タコじいじは貝殻を見つめながら言いました。

「岩だけでは安心できん日もあるからのう。」

「だから工夫して暮らしとるんじゃ。」

ハナハナは首をかしげました。

「海では、大きい方が強いんじゃないの?」

タコじいじは、くすっと笑いました。

「力は大事じゃ。」

「じゃが、考えることも大切な力なんじゃよ。」

そのときでした。

「たすけてー!」

そのときでした。

「たすけてー!」

見ると、小さなカニが海藻に絡まって動けなくなっています。

カニは何度もハサミで切ろうとしていました。

でも海藻は岩にしっかり巻き付き、

どこを切ればいいのか分かりません。

「今助けるね!」

ハナハナは海藻を引っぱりました。

でも、びくともしません。

「どうしよう……。」

タコじいじが静かに言いました。

「おじょうちゃん。」

「まず、よく見てごらん。」

ハナハナは落ち着いて海藻を見つめました。

すると、

一本だけ細いつるが岩に巻き付いています。

タコじいじは一本の足で、その場所を指しました。

「そこじゃ。」

「そこをほどけばええ。」

ハナハナがそっと海藻を持ち上げると、

するする……

海藻はほどけていきました。

「出られた!」

カニは大喜びです。

「ありがとう!」

ハナハナもうれしそうに笑いました。

タコじいじは静かに言いました。

「困ったときほど、急いではいかん。」

「知恵とは、大切なところを見つける力なんじゃ。」

しばらくすると、

強い潮が海底を流れ始めました。

岩の横では白い泡が渦を巻き、

海藻は流れに押されて大きく揺れています。

小魚たちは流されそうになっていました。

「たすけて!」

ハナハナは助けようとしましたが、

流れが速くて近づけません。

そのとき、

タコじいじの言葉を思い出しました。

「まず、よく見てごらん。」

ハナハナは海を見つめます。

すると、

大きな岩の後ろだけ、

海藻がゆっくり揺れていました。

「そうだ!」

「みんな!」

「岩の後ろへ!」

魚たちは急いで泳ぎました。

すると、

さっきまでの激しい流れが、

うそのように静かになりました。

「助かった!」

魚たちは笑顔になりました。

タコじいじはにっこり笑います。

「海は教えてくれる。」

「流れの強い所ばかり見とると、

本当の答えは見えん。」

「静かな場所を見つけるのも知恵なんじゃ。」

ハナハナは岩の後ろを見つめました。

「海も教えてくれていたんだね。」

タコじいじは静かにうなずきます。

「知恵は、人のために使ってこそ、本当の知恵になる。」

ハナハナは元気よく答えました。

「うん!」

「ハナも、そんなクジラになりたい!」

夕暮れの光が海をやさしく照らしています。

タコじいじは手を振りました。

「またおいで。」

「知恵は毎日少しずつ育っていく宝物じゃよ。」

ハナハナは大きくうなずきました。

「ありがとう!」

るるるー。

らららー。

その歌は昨日より少しだけやさしく、

少しだけ頼もしく聞こえました。

知恵という宝物を胸にしまったハナハナは、

今日も青い海を元気に泳いでいきました。

おしまい

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