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nanadays
猫が書きました(事実)
どうして
「どうしてお兄ちゃんのはこんなに美味しいの?」妹がぽつりと呟いたその瞬間、僕は答えに詰まった。
春の柔らかな風が吹く中、僕たちはホームセンターでトマトの苗を選んだ。母が「好きなのを選んで」と言うので、僕と妹、それぞれ一本ずつ手に取った。緑色の葉がつやつやとした小さな苗木。僕たちはその苗を庭に植え、任された。「ちゃんと自分で育てるんだよ」と。
二ヶ月後、二本の苗木にはどちらもきれいな実がなった。赤く熟したトマトを収穫し、家族みんなで食卓を囲んで食べた。「美味しくできたね」と両親は笑顔を見せたが、妹はほとんど口を開かなかった。
翌年も、また僕たちはトマトを植えた。同じように実をつけたトマトを食べると、やっぱり妹は静かになった。気付いた母が声をかけると、小さな声で「どうしてお兄ちゃんのはこんなに美味しいの」と答えた。
僕は答えを知っていた。
僕はズボラだったから、しょっちゅう水やりをサボっていた。一方で妹は毎日欠かさず水をやっていた。でも、トマトにはそんなに水は必要ないらしい。妹が一生懸命育てた分、皮肉にも甘さが薄れてしまったのだ。
その年の終わり、妹がしょんぼりした顔でトマトを見つめる姿が忘れられなかった。
来年は、ちゃんとやろうと思う。いや、むしろ妹よりもたくさん水をやろう。たくさん水をやれば、僕のトマトの甘さもきっと薄れる。そうすれば、今度は妹のトマトが美味しいと言われるはずだ。
自分のトマトを誇れるようになった妹の顔を思い浮かべると、不思議と胸が温かくなる。
来年こそ、あの「どうして」が笑顔に変わる気がするから。
