「スパダリちゃんと恋する4人の乙女たち」 第1話 -prologue-
あらすじ
「僕、白木院碧はここにいる4人全員を堕とします!」金沢あすか(16)を含む、その場に集まった凛、陽菜、譲羽4人に白木院碧(16)はそう宣言した。
そもそも、ゲーム配信者で引きこもり気味のあすかは自分を救ってくれた碧に6年ぶりに会えると胸を高鳴らせながら待ち合わせ場所に来ただけだった。しかし、そこには同じく碧に集められた凛3人がいて、やってきた碧にそう言われたのだ。困惑せざるを得ない上に、カッコいい男の子だと思っていた碧が実は女の子だったと判明し余計混乱する4人。
巧みな手腕で4人を手玉に取っていく碧だったが、その裏には1年以内に4人を堕とさないと許嫁と結婚させられるという理由があった。
本編
○河原沿いの道・外
笑顔で砂利道を走る白木院碧(11)と金沢あすか(11)碧があすかの先を走り、繋いだ手を引っ張っている。
あすかN「その男の子は私のヒーローだった」
○小学校・教室内
自分の机でPCを使う碧。画面にはプログラミング言語が羅列されていて、碧がエンターキーを押すとブロックゲームが起動する。
その様子を見て拍手するクラスメイト達。
あすかN「頭が良くて」
○同・体育館・中
跳び箱をバク転して軽々と飛ぶ碧。体育教師が口をあんぐりと開けて見ていて、クラスメイト達は歓声を上げている。
あすかN「運動も出来て」
○同・教室内(夕)
鞄を背負ってあすかの座る椅子に近づいてくる碧。
あすかN「そしてなにより」
笑顔をあすかに向ける碧。
碧「帰ろう! あすか」
あすかN「私と仲良くしてくれた」
あすか「うん!」
笑顔で頷くあすか。
あすかN「まさに私のスパダリだった」
○あすかの家外観(夜)
T・7年後
2階建ての一軒家。一階からは明りが見え、二階からは薄っすらと光が見える。
○同・あすかの部屋・中(夜)
真っ暗な部屋の中、唯一の光源であるPCモニターの前にゲーミングチェアに座るあすかの目は充血し、深いくまが出来ている。
ヘッドセットを付けたあすかは瞬きもせずジッとモニターを見ながら手元のキーボードとマウスを素早く動かす。机の上には空になったエナジードリンクが何本も置かれている。
あすかN「そしてこれが今の私」
あすか「よーし、こいつで最後、今回も完勝しちゃうぜー」
モニター内ではスコープ越しにかろうじて人だと分かる大きさのポリゴンが狙われているのが見える。画面右下にはあすかのアバターであるロリな見た目のVTuberが見え、その上には「この声の可愛さでFPSも無双できるのエグい」「当てたらスパチャするわ」などコメントが流れている。
あすかN「小学5年生の頃に碧が引っ越した。そして一人ぼっちに戻った私はこうして立派な社会不適合者に成長した」
バンと銃声がして、スコープ内の人が頭から血を出して倒れるのが見える。
あすか「っしゃ! これで10連勝! やっぱりあーししか勝たん!」
チャリンという音がしてコメント欄に1万円課金された表示が出てくる。
あすか「おっとこれでー……目標額達成! 目標額までぶっ続け企画コンプリート!」
コメントに「すげー」「何徹だよ」などとコメントが表示される。
あすか「皆ありがとねー。それじゃ、もう、マジで限界だから、切るわ。アデュー」
配信を切って机に置かれた幼い日の自分と碧が笑顔で写る写真を見るあすか。
あすか「どーだ見たか。今の時代コミュ障でもこうやってやっていけるんじゃぁ……ネットなら、いくらでも、喋れ……」
そのまま椅子の上で寝てしまうあすか。
机の上に置かれたスマホが光り、画面には「送信者碧:久しぶり。今度の日曜日会える?」とメッセージが見える。
○白木院邸・藤十郎書斎・中
暗い部屋の中、白木院碧(16)のスマホ画面にあすかに送ったメッセージが見える。碧の姿はシルエットだけでボカされている。
碧が視線を横に移すと、やはりこちらもシルエットだけで白木院藤十郎(45)が立っている。
碧「本当に堕とせれば、結婚を諦めてくださるんですね?」
藤十郎「二言はない」
碧「ありがとうございます。白木院の人間に相応しい人間力があると絶対認めさせて見せますから」
藤十郎「ふん、言うではないか」
碧「あすか……」
再びスマホ画面をジッと見つめる碧。
○舗道・外
レストランやショップが立ち並ぶ舗道。
マスクを着けたあすかは猫背で姿勢の悪い歩き方をしながら、周りをキョロキョロと見回している。
姿勢が悪いながらも明らかに周りを歩く女性より身長が高いことが見て取れる。
あすか(やっぱ外キッツ。ヤバい、もう気分悪くなってきたかも)
顔色が悪くなってくるあすか。
あすか「ん?」
あすかの視線の先にサングラスを掛けた橘譲羽(14)と、向かい合って小太りの男が立っている。
小太りの男「あ、あの、ダルダイの譲羽ちゃん。ですよね?」
少しサングラスを下げて目を見せる譲羽。
譲羽「はい、そうですけど……」
小太りの男「あぁ、やっぱり……! あ、あの! 僕、譲羽ちゃん推しで。その、その……」
譲羽「ハァ……」
譲羽はサングラスを取ると営業スマイルになり。
譲羽「その気持ちは譲羽だけに譲ってね❤ どうも、ゆずゆずこと譲羽だよ、ヨロシクね!」
目を見開くあすか。
あすか(うぉ! ゆずゆず、モノホン!? たまには外出てみるもんだな)
小太りの男「あぁぁぁぁぁぁぁ! 本物だぁ!」
譲羽「満足した? じゃあ、気を付けて帰ってね」
感心した表情になるあすか。
あすか「うわー流石プロ。プライベートで絡まれてもあの対応」
小太りの男「はい、神対応ありがとうございます。あ、あと、それと……」
両腕を広げる小太りの男。
小太りの男「この前のお渡し会、行けなかったので、あの、ここでハグ、してもらえますか?」
困惑の表情になる譲羽。
譲羽「えーっと、プライベートなのでそれはちょっと……」
小太りの男はバッグから紙を取り出す。そこには「ダルクダイヤモンドお渡し会」と書かれている。
小太りの男「ほ、ほらっ。証拠っ、お渡し会の。これでいいでしょ?ねっ?」
譲羽「いやー、今日はイベントじゃないんでー」
目を逸らせる譲羽。
小太りの男「はっ? なんだよそれ! 券持ってるんだから対応してもらう権利はあるだろ!」
凛の声「やめないか」
譲羽と小太りの男の横にやってきた漆原凛(17)が小太りの男が券を持っている腕を掴む。
凛「彼女が困っているだろ。紳士として恥ずかしくないのか?」
小太りの男「な。誰だお前!? 突然エンカウントしてきて」
小太りの男は凛に掴まれていた腕を振って凜の手が放れる。
凛「ただの通りすがりのものだよ。こちらのお嬢さんが困っていたから助けたまでさ」
小太りの男「なっ? 何も知らない部外者の癖にっ。ゆずゆずは困ってなんかいないよね? ね?」
譲羽「えーっと。あー。あはは」
回答に詰まって笑う譲羽。
凛「大丈夫、無理をしなくてもいいよ。世間は彼がおかしいと見抜いているようだ」
凛が周りを見渡すと小太りの男の方を訝し気な目線で見ている野次馬が複数人見える。
見られていることに気づいた小太りの男は凛の前に出る
小太りの男「なっ、何見てる! 見世物じゃないぞ!」
凛「自ら見世物になったのだろう? 何を激昂しているんだい」
怒った表情で凛を睨む小太りの男。
小太りの男「うっ、うるさい!」
小太りの男の表情は怒りから徐々に凛を小馬鹿にしたような笑みに変わる。
小太りの男「ははぁん。そっかぁ、お前、ゆずゆずにカッコいいところ見せて気に入られようとしてるんだな? ガチ恋勢か? キモいファンめ!」
凛「ガチ恋?」
譲羽が凛に耳打ちする。
譲羽「アイドルファンとかがメンバーに本気で恋しちゃうことです」
凛「へぇ、そうなんだね。わざわざ教えてくれてありがとうお嬢さん」
小太りの男「あぁ! ゆずゆずに耳元で囁いてもらってる! ズルいぞ!」
小太りの男を無視して譲羽の方を見る凛。
凛「お嬢さん、アイドルなのかい?」
譲羽「は、はい。一応」
凛「へぇ、その可憐さは只者じゃないと思ったけどなるほど」
凛が譲羽に微笑み、譲羽は照れて少し赤くなる。
小太りの男「僕のゆずゆずを取るなー!」
譲羽と凛の方に突進してくる小太りの男。
凛「危ない、下がってて」
凛はさりげなく譲羽を遠ざける。そして、突進してきた小太りの男の頭を素早い上段蹴りで打ち抜く凛。
小太りの男は自分が何をされたのか分からないまま、蹴りの衝撃で吹っ飛ばされる。
凛「なんと醜い」
痛そうに頭を手で押さえ立ち上がる小太りの男。
凛は組手の構えをとる。
凛「まだやるかい? 一応僕は空手の有段者だよ」
小太りの男「く、くそっ! 偽善者気取りが!」
小走りで逃げていく小太りの男。
振り返って譲羽に笑みを送る凛。
凛「大丈夫かい? お嬢さん」
譲羽「は、はい」
少し赤くなる譲羽。
あすか「あの感じ……まさか」
マスクを顎まで降ろすあすか。
あすかは凛と譲羽に近づこうとするも、先に2人の横にルーズソックスにカジュアルな服装の明らかにギャルな見た目の二宮陽菜(15)がやってきて陽菜は凛に話しかける。
陽菜「もしかしてあんた、碧?」
驚愕の表情になるあすか。
あすか「なっ!?」
譲羽がずいっと陽菜の前に出る。
譲羽「碧って……あなたももしかして碧と待ち合わせしてるの?」
陽菜「あなたもって、あんたも碧と?」
譲羽と陽菜の間に割って入る凛。
凛「ちょっと待ってもらえるかなお嬢さん方」
陽菜「碧、あんたこの子も誘ってたの?」
凛「まず僕は碧じゃない」
陽菜・譲羽「え」
表情が固まる陽菜と譲羽。
凛「そして僕も呼ばれたんだ。碧に」
凛は自身のスマホの画面を陽菜と譲羽に見せる。そこには碧から今日会えないかとメッセージがきているのが見える。
陽菜・譲羽「えぇ~!!」
凛、陽菜、譲羽のやり取りを遠巻きに見ているあすか。
あすか(え? じゃあ私を入れて碧は4人を同じところに呼んだってこと?)
あすか「くっ」
あすかは少し凛、陽菜、譲羽のいるところに近づこうとするも、すぐに足が止まる。
あすか(外で知らない人に私の声聞かれるとか……しかもあのギャルって小学校のとき同じクラスだった……ムリムリムリムリムリ)
女の子の声「君はあの中に入らなくていいの?」
あすか「え?」
あすかが振り向くと、あすかより少し小さなツインテールの女の子が立っている。
驚いて女の子から遠ざかるあすか。
あすか「(小声で)え、あ……あの、どなた。ですか?」
女の子はイジワルそうな笑みを浮かべる。
女の子「ん~? 誰だろうね。もしかしたら私も碧に呼ばれた子かもよ?」
自分を指差す女の子。
あすか「嘘でしょ!?」
慌てて自分の口を押さえるあすか。
女の子の表情が少し嬉しそうな笑顔に変化する。
女の子「あ、全然声変わってない。やっぱりカワイイね、あすかの声」
あすか「な、何で私のこと知って――」
声を出していることに気づき、再び口を塞ぐあすか。
女の子「そっか、また嫌になっちゃったんだね。僕は好きだよ。その声」
あすか(僕……?)
口を塞いだまま訝し気な目で女の子を見るあすか。
女の子「まだ僕が誰か分からないの? 久しぶりとはいえちょっと悲しいなぁ」
あすか「えーっと、あの……」
あすかに手を差し出す女の子。
女の子「帰ろう! あすか」
目を見開くあすか。あすかの目には女の子と幼い日の碧が重なって見える。
あすか「碧!……君?」
信じられないといった表情で女の子、もとい碧の全身を見るあすか。髪形はツインテール。体は華奢であすかより一回り小さく、一目で女の子だと分かる見た目。
陽菜の声「碧!? どこどこ?」
陽菜の声に驚いてあすかが横を見ると陽菜、凛、譲羽があすかの横にやってきている。
碧「皆も僕のこと分からないのー? えーん」
両手を軽く顔に当てて泣きまねをする碧。
譲羽が碧に近づき、手で自分の背と比べる。碧は少し譲羽より小さいくらいの身長だ。
譲羽「えーっと、碧君の妹ちゃんかな? ちょっとお兄ちゃんとは違うけど」
笑顔が歪んだ凛も碧に近づく。
凛「ははは、驚いたな。碧にこんなカワイイ妹さんがいただなんて」
碧はおもむろに凛の腕を握る。
凛「ひゃ!?」
目を細め、凛々しく見えるようになった碧は声を低くして凛に囁く。
碧「鍛えてるね。僕がいなくなってからも、ずっとトレーニングしてくれてたんだね。髪形もあの頃の僕みたい」
凛「嘘?……碧?」
碧「うん、僕だよ」
凛、明るい表情になったものの、すぐ一転して怒りの表情になる。
凛「嘘だ! 僕が尊敬していた碧は誰よりも紳士な……男の子だった!」
碧から遠ざかった凛は組手の構えをとる。
碧「おっ、久しぶりに一手組手する? いいよ」
凛「はぁぁぁ!」
碧に正拳突きを思い切り出す凛。しかし碧は片手で軽く凛の正拳突きを自分の体横に流す。その無駄のない動きに驚きの表情になる凛。
碧「本気できなよ。大丈夫、僕も腕はなまってないつもりだから」
再び真剣な表情に戻る凛。今度は上段回し蹴りを碧の頭に向かって繰り出す。
凛「はぁ!」
碧は飛んできた足にすぐに反応して肘で頭を守る。凛の上段蹴りは碧の肘に当たって防がれる。
碧は防いだ肘の合間から見える顔に不敵な笑みを覗かせる。
碧「やるね」
凛の上段蹴りの勢いをそのまま肘で受けた流れで体を一回転させた碧は、目にもとまらぬ速さの後ろ回し蹴りを凛の頭目掛けて放つ。
凜は驚きつつも反応して肘で防ごうとするも碧の後ろ回し蹴りの方が速度が速い。
足が当たると身構えた凛は目を思い切り閉じるも衝撃はやってこない。
凜が目を開けると、碧の足は凛の顔ギリギリで止まっている。
凛「くっ」
膝から崩れ落ちる凛。
碧「でもまだ僕には届かないみたい」
碧は譲羽にゆっくり近づく。
碧「譲羽も目指してたアイドルになれたみたいでよかった。やっぱり僕の目に狂いはなかったみたい」
譲羽「ホントのホントに……碧?」
碧「えー? 僕はかわちいな譲羽のファン1号だって言ったじゃない。今の譲羽も本当に好(ハオ)~」
両手を頬にあてて堪らんという表情の碧。しかし、困惑の表情の譲羽を見て手を放して真剣な表情になる。
碧「ちょっと引かせちゃった? じゃあ……」
碧はその場でブレイクダンスを始める。そのパフォーマンス力の高さに周りの通行人たちも思わず足を止め見入る。
凛、陽菜、あすかはポカーンとして碧のダンスを見つめ、譲羽は目を輝かせて碧を見つめる。
やがて碧はダンスを止める。
碧「これでどう?」
いつの間にか集まっていた聴衆から拍手が起きる。
譲羽「本物だ。あの頃のままの、碧だ」
碧「2人もどうかな? って、言っても僕がダンスや武道ができるなんて知らなかったよね」
陽菜とあすかの方を見て少し恥ずかしそうに笑う碧。
陽菜「うん」
あすか「だけど」
陽菜「この完璧になんでもできるのは碧だわ」
腕を組んで首を縦に振る陽菜。
陽菜「ん?」
横を見てあすかを見る陽菜。
陽菜「んんん?」
あすか「(小声で)な、なんでしょう?」
顔を逸らしできるだけ見られないようにするあすか。しかし、陽菜はよく顔を見ようとあすかに近づく。
陽菜「あー!」
合点がいったという表情になる陽菜。
陽菜「あすかじゃん! 覚えてるあたし? 小学校一緒だった陽菜」
あすか「あ、あぁ……うん」
陽菜「え、何? あすかも碧すきぴだった系? 確かに碧と仲良かったもんね」
あすか「はぁ、まぁ……」
あすか(何で距離感ゼロなんだよこの陽キャ! あぁぁぁぁ無理ィ)
凜が手で周りを制す。
凛「久々の再開に水を差すようで申し訳ないんだが、皆の気になっている主題から離れているようだからちょっといいかい」
陽菜「ん、何だっけ?」
譲羽「いやいや、貴方も碧に呼ばれたんでしょ?」
陽菜「あ、それかー。そうだったそうだった」
「たははー」と笑顔で手を頭の裏に当てる陽菜。
凜は碧に向き直す。
凛「それで? 何故碧は僕ら4人をここに呼び出したんだい?」
碧「お、やっぱり切り出すのは凛か。うん、もちろん理由があって皆にここにきてもらったの」
碧は深く息を吸う。
碧「僕、白木院碧はここにいる4人全員を堕とします!」
4人を指差しドヤ顔で決める碧。
間の抜けた表情になる碧以外の4人。
凛「おと……す?」
碧「うん、み~んな僕の虜にしちゃうから、覚悟しといてね❤」
間の抜けた表情から最初に戻ったのは凛。凜は目を切れ長にして怒りの表情をにじませる。
凛「ふざけるな! ずっと僕の目標だと思っていたのに、こんなバカにしたような真似をして、その上堕とすだと?」
凜は碧に背を向けると、肩を怒らせながら帰って行ってしまう。
碧「あちゃ~怒らせちゃったか」
譲羽「まぁあの人が怒るのも無理ないと思うけど。5年も会ってなかったのに何で急にそんなことを? っていうか全員に一気に言うからこうなったんじゃ……」
碧「ん~? まぁちょっと色々と訳アリでね。でも皆に会いたかったのは本当だよ? 全員を呼んだのは……そうじゃないと正々堂々としてないでしょ」
譲羽「へ?」
陽菜「あ~、碧らしいわ」
あすか「うん、見た目は解釈違いだけど、中身はちゃんと碧だ」
碧「え~? カワイイ僕もアリでしょー?」
陽菜「私は嫌いじゃないかも」
あすか「え、マジか……」
碧「わ~陽菜好(ハオ)~❤」
陽菜に笑顔でハグする碧。
陽菜「よしよ~し」
自分より少し背の低い碧の頭をよしよしする陽菜。
譲羽「お二人は、碧とどうゆう関係なんですか?」
あすか「え? その、えと……」
陽菜「小学校の頃同じクラスだったの。そこのあすかも同じクラス。でも5年生の時に碧が引っ越しちゃったってからは会ってなかったんだ。あすかもそだよね?」
あすか「う、ん」
首を縦に振るあすか。
あすか「ゆずゆ……譲羽さんは?」
少し興奮気味に口を開くあすか。
譲羽「あぁ、私は同じダンス教室に通ってたんです。勿論碧は教室で一番うまくて、皆の憧れでした」
陽菜「はは、簡単に想像できるわ。っていうかさっきのダンスもエグかったし」
譲羽「そうなんですよね、私ももうプロになったのにまた驚かされるなんて」
あすか「プ、プロから見ても凄いんだ。譲羽さんも、かなりダンス上手いと、思うけど……」
譲羽「あ、もしかしてあすかさん……?もダルダイご存じなんですか?」
目を輝かせるあすか。
あすか「はい! 2ndから入ったニワカですけど配信でずっと観てます。特に譲羽さんは3rdliveのダブルアンコールの『スキャンダラス』の鬼気迫るダンスが最の高で――」
急に饒舌になった自分に気づき、赤面して口を塞ぐあすか。
あすか「す、すみません。キモイオタク語りしちゃって」
譲羽「ううん、嬉しいです。リアルのライブも是非来てくださいね」
譲羽はあすかの手を握る。
あすか「ひえっ!?」
あすかは驚いて思い切り譲羽の手を振り切る。
あすか「あ、す、すみません。その……私なんかがファンサされるなんて、おこがましいので。あ、いや、いやとかではなくて……すみません、こんなキモイ声で喋っちゃって」
縮こまるあすか。
譲羽「い、いえ、私も急に触ってしまってすみません」
陽菜「そんなにネガティブにならなくても。そんなに好いてくれてるなら本当に嬉しいと思うし、あすかの声カワイイじゃん」
あすか「二宮さんはこんな声じゃないから分からないでしょ!?」
陽菜「あ、うん。そうだね……ゴメン」
シュンとする陽菜。
陽菜から放れ、あすかに近づいていく碧。
碧「きーめた」
上目遣いであすかを見る碧。
あすか「な、何?」
恥ずかしくて碧と目を合わせられないあすか。
碧「最初に堕とすのはあすかにするよ。覚悟しといてね」
あすか「か、覚悟?」
碧「じゃあ、早速一緒に帰ろうか」
あすかの手を引き歩き始める碧。
その姿を眺めている陽菜と譲羽。
陽菜「あはは~。やっぱ凄いな碧は」
譲羽「いいんですか? 二宮さん、でしたっけ?」
陽菜「陽菜でいいよ」
譲羽「陽菜さんは。あんなこと言われて。私も正直凛さんの意見に同意です。四股しますって宣言されたみたいなものですよ?」
陽菜「ん~? あたしはそんな気にしないかな。相変わらずぶっ飛んでんなーって思ったくらい」
少し自傷的な表情になる陽菜。
陽菜「だってさ、こんな意味わかんないことするってことは、それなりの理由があるってことでしょ? あたしは逆に付き合ってあげたいかなーって」
驚きつつも、真剣な表情になる譲羽。
譲羽「陽菜さんは、大人ですね。見た目で少しバカにしていたかもしれません。すみません」
陽菜「いいよいいよー実際バカだしねーあはは」
譲羽「じゃあ今日のところは」
陽菜「うん、帰りますかー。まずはあすかのことを見守るって感じで」
2人で返っていく陽菜と譲羽。スマホを見せ合って「連絡先教えてください」「いーよ、じゃあLINEID教えてー」とやり取りしているのが見える。
第1話 prologue:fin
第2話
第3話
